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事件報告 京都会館建替え問題の現局面~住民訴訟京都地裁判決をふまえて

事件報告 京都会館建替え問題の現局面~住民訴訟京都地裁判決をふまえて~

飯田 昭弁護士 飯田 昭

京都会館建替え問題の本質と解体差止め住民訴訟の提起

京都会館建て替え問題は、京都会館の文化財としての価値や岡崎公園と疏水沿いと調和した景観を破壊するものであり、かつ、2007年9月に施行された新景観政策を「骨抜き」にしようとするものです。また、手続的には、従来は京都市自身が保全的改修を中心に検討してきたにもかかわらず、ロームとの命名権契約(52億5000万円)を結んだ頃から密室の中で方針を「第一ホール解体、高層化」に転換し、実際には大規模なオペラはできないにもかかわらず、世界水準のオペラを売り物にし、情報公開や市民・建築専門家の意見聴取も不十分なまま「結論先にありき」で強引に進められたものです。

これに対し、地域住民(岡崎公園と疏水を考える会)、建築家グループ(大切にする会)、音楽愛好家グループ(じっくり考える会)をはじめとする市民112名が、解体工事差し止めを求めた住民訴訟を京都地裁に提訴(昨年8月)し、23名の弁護団(当事務所からは、藤井、谷、寺本と飯田)がこれを支援してきました。

一人地区計画を利用した規制緩和は新景観政策に反する

新景観政策の最大の骨は、高さ規制です。ところが、都市計画法の「地区計画」の制度を利用して高さ規制を骨抜きに(15mの高度規制を31mにまで緩和)する事態が、京都会館建替え問題の一つの側面です。本来、新景観政策をつくるときに、京都市は高さ規制の例外規定として、特例許可条例をつくって、景観審議会の審査や住民説明などを行うことを定めました。この特例許可をしたケースに京大病院の建替えがありますが、七条警察署の建替えのケースでは特例が使われませんでした。

元々地区計画は、都市計画法等現行法の不十分な規制のもとで、その規制では甘いということから住民が協議の上、その地区にふさわしいきめ細かいものにしていくための民主的な住民参加制度として活用されてきました(市内中心部では、笹屋町、明倫学区などで活用されています)。ところが、京都市や特定の企業が単独で所有する土地で、規制緩和の道具として特例許可制度を免れるために使おうとしています。島津製作所・三条工場、山ノ内浄水場跡地に進出予定の京都学園大学等のケースです。

文化財と景観の破壊とイコモス委員会の警告

京都会館の建替え問題のもう一つの重要な側面は京都会館とその周辺の景観価値の破壊です。これは、京都会館自体が持つ建築物としての価値と岡崎周辺、疏水も含めた全体の景観のなかでの価値の両方の側面があります。

建築物としての価値については、前川圀男の設計にかかる、高さを抑え、水平線を強調して、周辺の自然や建築物と調和した、寺院を思わせる傾斜屋根、水平の庇、などであり、文化財保護法に基づく歴史的景観性、造形規範性を満たし文化財としての価値が認められます。

2012年8月になって、イコモス(ユネスコの文化遺産に関する専門家会議)の20世紀遺産に関する国際学術委員会は、京都会館の保全を求めて京都市長に警告意見を発するに至り、これに呼応して、日本イコモス国内委員会も、9月10日、「見解書」を発して、再調査・見直しを求めました。

この警告意見はイコモスにとって、世界でも3回目の事例で(他にはストックホルムの図書館、香港政庁のケースのみです)、世界の文化財保護の観点からみても非常に重要な意味を持つものでした。しかも京都では11月に世界遺産の40周年記念会議が開催されるという状況でした。ところが、京都市はこの警告も無視して解体工事を強行したのです。

さらなる問題点としては、新景観政策で定めた眺望景観創生条例や風致地区条例にも反するという点があります。

住民訴訟判決

2012年12月19日の松隈洋京都工芸繊維大学教授の証言、本年1月31日の最終弁論を経て、3月21日に判決が言い渡されました。

残念ながら、地裁判決の結論は「棄却」でした。これは、行政に広範な裁量権を認め、文化財保護法等に「著しく」違反しない限り裁量の範囲内としたうえ、「景観・調和などは個々人の感性や価値観に左右される幅の広いものであって、本件基本設計の段階において、その後の実施設計が違法とならざるを得ないという判断をすることができない」などと、消極的な認定をしたものです。

今後の取組み

京都会館の解体は防げませんでしたが、計画されている高度規制の緩和を撤回させ、疏水と岡崎の自然と周辺建築物に調和させる設計に変更させるための取組みは続きますので、引き続きご協力をお願いいたします。

「まきえや」2013年春号