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事件報告 離婚と退職金~ある離婚相談より

事件報告 離婚と退職金~ある離婚相談より

岩橋 多恵弁護士 岩橋 多恵

京子さん(仮称)は、大手企業に勤務(22歳に就職)していた夫とは、京子さん30歳、夫30歳の時に結婚しました。京子さんは、夫の精神的虐待に堪えられず、結婚生活20年目にして、別居を開始し、京子さんが相談に来られたときは、10年経っていました。

京子さんは、夫に離婚を求めて手紙を送っていましたが、夫は、なかなか離婚してくれませんでした。子どもも自立したため、いよいよ離婚をしたいと相談に来られました。京子さんの相談は、離婚に際して、財産分与として、夫が、既に、定年退職し、その後、同一会社で嘱託社員として働いているが、夫の定年退職時(勤続年数38年)の退職金(1500万円)の半分を請求できるのだろうかというものでした。

退職金も財産分与の対象です!

退職金は、財産分与の対象になります。「給料・賃金の後払い的性格を有する」ことからすれば、当然のことです。すなわち、夫の給料が、日々の生活に使用された後に残っていたものを預貯金すれば、それが財産分与の対象となるのと同様に、退職金も二人の結婚生活において作り上げられた財産といえるからです。

但し、財産分与とは、結婚生活の中で形成された財産が対象になるということ、及び裁判所では、財産分与の精算時期を、妻の貢献は同居期間しか認められないとの考えが一般的であるため、別居時の時点で計算するのが原則です。そして、ご承知のように、そのような期間に形成された財産について、妻は原則2分の1(0.5)の貢献があると推定されるのが一般的な裁判の考え方ですので、退職金について財産分与請求する場合は、以下のような計算式となります。

<退職金財産分与の一般的な計算式>
退職金支給額×(夫の勤続年数に占める結婚生活期間~厳密には同居期間の割合)×0.5

従って、京子さんの場合は、具体的な退職金からの分与額は以下のような計算式となり、京子さんが請求できる退職金からの分与額は、金394万7368円となります。
<京子さんの場合の計算式>
1500万円×同居期間20年/勤続期間38年×0.5=394万7368円

退職時期前の離婚と退職金の分与~退職金の財産分与性

本件と異なり、離婚時、未だ退職金支給時期が到来していないような場合に退職金の一部を財産分与として請求できるのでしょうか。

裁判所は、退職金は退職時に実際、支払われるかは、不確実であるとして、退職時に初めて具体的な権利(退職金請求権の抽象性)となると考えています。

従って、退職前の離婚の場合に、退職金をどこまで分与させることができるかは、事案によります。一般的には、離婚時期が退職年齢より10年以上くらい前であると財産分与の対象としての請求が認められないことが多いのですが、退職金も財産分与の対象として主張することが全く無理ということではありません。実際、私も裁判で、退職前の退職金の分与を一定額認めさせたことがあります。従って、あきらめずに請求してみることが重要です。 但し、退職時期前の離婚の場合は、離婚時に受領しようと考えると不確実性を一定考慮し、たとえば、離婚時に退職したと仮定した計算をしたりすることになり(通常それは、自己都合退職、定年前ということになりますので、退職金の金額そのものが定年退職までの金額として計算されないのが普通です)、総体として、定年退職後に離婚する場合に比べて低い金額になってしまうことが多いといえるでしょう。

確定拠出年金制度と退職金~退職金は、定年退職時に払われるとは限らない。

ところで、気をつけなければならないのは、定年時以前に、確定拠出年金に移行させた際、退職金の一部の前払いがなされる事例もあります。そのような場合は、その金額も退職金として精算の対象に含めることが可能と思われますので、対象からはずすことのないよう注意しましょう。

「まきえや」2013年春号