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年金減額は違憲! ~若い人も高齢者も安心できる年金制度を~

事件報告 年金減額は違憲! ~若い人も高齢者も安心できる年金制度を~

弁護士 高木 野衣

どんどん減らされていく年金

皆さんは、ご自身が受け取る国民年金の基礎年金額をご存じですか?現在の基礎年金は満額でも月額約6万5,000円で、実際の平均受給額は約5万円です。老齢厚生年金を加えても、生活保護基準に満たない年金受給者が多数存在します。

日本では、前年度の物価変動にあわせて年金が支給されることから、長引く不況により年金額は年々減らされてきました。見かねた国は、年金受給者の生活への影響を緩和するとして、2000年度から3年間、年金額を前年の額に据え置く法律を作りました。この3年間の据置分は、物価が上昇する中で解消するとされました。ところが2012年、国は過去3年間の据置分を、物価が下落したなかで、2013年から3年かけて減額すると決定しました。

更に国は「マクロ経済スライド」という、物価上昇の水準より低い水準でしか年金額を増やさない仕組みを作り、2015年4月から運用しています。消費税増税や各種保険料の負担増の中、高齢者の可処分所得は減っているにもかかわらず、マクロ経済スライドで年金の実質的価値は更に目減りします。

全国いっせい提訴

そこで、日本年金者組合が中心となって、全国で12万6,000人以上が年金減額決定につき審査請求を行いました。しかし、審査請求は全て却下され、うち約2万5,000人が再審査請求をしましたが、却下通知が順次届いています。そこで2015年5月29日、全国各地で年金減額違憲訴訟が提起されました。京都の原告数は115人です。

国民年金制度は、健康で文化的な人間らしい最低限度の生活を保障する制度の構築を国に求める憲法25条に基づく制度です。生活保護制度を使わずとも、高齢者が年金によって自分らしい生活を送る権利は、保障されなければなりません。しかし、年金額の減額とマクロ経済スライドの導入は、この憲法25条の趣旨に反するものです。

また、国民年金の受給権は、成人後40年間、コツコツと国民年金保険料を支払い続けていた者に与えられる財産権(法29条)です。年金受給者は、どんなに生活が苦しくとも、必死で働いて保険料を納め続けてきたはずです。にもかかわらず、高齢者の生活に配慮するといって確保された必要最低限の年金額であるはずなのに、デフレで物価が下落しているこのタイミングで、年金減額という形で据置分を強制的に回収するというのです。法律でいったん定められた財産権の内容が、事後の法律によって合理的な理由なく変更された場合、その法律は憲法29条違反です。また、これ以上年金額が減らされることはないと信じて老後の生活設計をしてきた年金受給者らの幸福追求権(法13条)をも踏みにじる暴挙です。

訴訟の意義

この裁判には、年金受給者の生活と権利を守るという意義と、最低保障年金の創設を求めるという意義があります。政府は、年金の問題を世代間の争いにすり替えようとしていますが、今回の闘いがきっかけとなって最低保障年金が創設されれば、次世代の国民の生活も守られます。

日本の経済力は、全ての高齢者に健康で文化的な生活を保障することができないような水準なのでしょうか。憲法25条は、基礎年金を一律に削減するような立法に対して無力なのでしょうか。最低保障年金制度の確立をはじめ、現在の年金受給者だけでなく、現役世代の国民、とりわけ若年層が安心して老後までの生活設計ができるよう、あるべき公的年金制度の確立を求めて本訴訟を提起しました。全国的に取り組む政策形成訴訟、皆さま是非ともご注目ください。

事務所で参加している弁護士は、森川(団長)、藤井、谷、尾﨑、高木です。

「まきえや」2015年秋号