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奪われた親子関係を取り戻す ~離縁無効確認請求事件~

事件報告 奪われた親子関係を取り戻す ~離縁無効確認請求事件~

弁護士 秋山 健司

奪われた養親子関係

Aさんは、約30年前、亡き妻と結婚する際に、妻の両親と養子縁組をし、妻の姓を名乗ることになりました。妻の実家は資産家で様々な事業を営んでいたため、Aさんはこれらの事業を一生懸命手伝いました。養父はそんなAさんを見込んで、何かにつけ頼りにしていました。

しかし、病弱な妻が看病の甲斐なく亡くなり、その後養父も死亡すると、養母や妻の妹夫婦はAさんに辛く当たるようになりました。Aさんは、養父の相続からも排除されてしまい、養父の立ち上げた喫茶店の経営権は妻の妹夫婦に移り、そこで働いていたAさんは、パワハラ的な扱いを受け、職場を追われてしまいました。そこで、Aさんは、当事務所に相談に来られました。

当初、Aさんも養子として養父の遺産を受け取る権利があるため、養母や妻の妹に対して遺産分割のやり直しを求めれば良いと考えましたが、この養子縁組は縁組み後約1年で何者かによって離縁手続きを取られていたことが明らかになり、このままではAさんは養父の遺産を受け取ることができない状態であることが分かりました。そこで、まずこの離縁が無効であることを証明するために、離縁届の用紙の写しを筆跡鑑定にかけたところ、離縁届には明らかに他人の筆跡で、Aさんの署名がされているという結論が出ました。

思わぬ反論

まずは内容証明郵便を出し、養母と妻の妹に遺産分割協議のやり直しを求めましたが、相手方からは、「もともと養子縁組届けがAの偽造によるものだ。」という予想外の返答がありました。

相手方の反論の根拠となったのは、養父が養子縁組の手続きを娘(Aさんの妻)に代行させたため、縁組届けにある養父の署名はAさんの妻の手によるものであったという事情でした。これを奇貨として、養母や妻の妹は養子縁組自体が養父の意思を反映しない無効のものであったと主張してきたのです。そこで、遺産分割を求める家事調停を申し立て、縁組みを伴う形式で妻と結婚した経緯を可能な限り詳細に説明しました。しかし、相手方が「養子縁組自体の有効性を証明せよ。」と繰り返して遺産分割のやり直しを激しく拒絶してきたため、不成立に終わりました。

そのため、やむなく養子縁組の離縁無効確認請求訴訟を家庭裁判所に提訴しました。相手方は、ここでも当初の養子縁組自体が無効であったとして、縁組無効確認請求の反訴を提起してきました。相手方は、養子縁組届という重要な届出を代書で済ませるはずはない、Aさんと妻は妻の姓を名乗る婚姻届を出したにすぎないと主張を重ねました。

当方としては、約30年前に婚姻届や養子縁組届を作成した際の状況を掘り返して主張しなければならない点は非常に困難でしたが、Aさんと妻が婚姻した当時は婚姻により夫の姓が変わるのは妻の親と養子縁組をする場合が一般的であったことや、本件でも養子縁組が必要であった諸事情を述べて、Aさんと養父に養子縁組の意思があったこと、養子縁組届けが偽造などではなく代書に過ぎないことにつき証明を重ねました。

相手方の主張は、一見筋が通っているようにも思われましたが、当方としては、真実を述べているという自信を持って弁論・証人尋問を行うことで、戸籍書類から窺われる動かない事情が相手方の説明をことごとく裏切っている点を強調しました。

結果

その結果、裁判所も当方の主張に相当程度の理解を示してくれ、相手方が解決金を支払うことを内容とする和解を提案しました。当方としては、古い過去の事件であって証拠が十分にあるとはいえない状況であること、縁組届け自体に養父の署名がないことにより敗訴のリスクもあることを考えた結果、遺産分割のやり直しを求める方針を修正し、和解に応じ、全ての紛争を解決とする道を選ぶこととなりました。

この和解では、相手方は当初の養子縁組届けの効力を争わない(代わりにAさんも離縁届けの効力を争わない)という結論になりましたが、Aさんとしては、かつて養父母らと養親子関係にあり、家族の一員として過ごした過去が否定されるものではないことに納得されたようでした。

振り返って

「絶対、こんな理不尽なことを許しておけない!」というAさんの強い気持ちが、足かけ4年にもなる係争について、一定の結果を伴う解決を実現したのだと思います。証拠の関係等で主張がとおりづらい事件は少なくありませんが、諦めずに頑張り続けることによって報われることがあるのだと、私の心に残る事件となりました。

「まきえや」2015年秋号