あなたのために全力で 暮らしと人権を守って48年 京都最大の法律事務所(弁護士19人、事務スタッフ25人) 法律でお悩みの方はお気軽にご相談ください。0120-454-489

JMIU日本電産事件解決のご報告

事件報告 定年後も安心して働き続けたい ~JMIU日本電産事件解決のご報告~

弁護士 谷 文彰

「システム監査人」Tさんへの突然の雇止め

事件の原告であるTさんは、「コンピューターシステムの監査」を専門とする技術者で、「システム監査人」の資格を持つ国内でも極めて数の少ないスペシャリストです。その技術と経験から2005年に中途採用で日本電産株式会社に入社し、同社のため、システムのIT内部統制の構築作業を中心的に担っていました。業務は激務で残業続きでしたが、Tさんは理想のコンピューターシステムを構築し、やがて後輩たちに引き継いでいくという夢を持って業務に邁進していました。

Tさんは2010年9月で日本電産を定年退職となり、引き続き、同社の継続雇用制度に基づき1年契約で再雇用され、2011年にも契約を更新されました。しかし、そのころから、できるはずのない業務を指示されたり、社内メール上で意味なくなじられるなど上司によるパワーハラスメントが始まったのです。恒常的な長時間労働に加えてこうしたパワーハラスメントに晒されたTさんの体調は2011年10月末ころから悪化し、11月末からは「うつ病」で精神神経科を受診するようになりました。

さらに追い打ちをかけるように、日本電産は、2012年10月末をもってTさんとの雇用契約を打ち切り、雇止めとしてしまったのです。その根拠は、Tさんの能力が更新の要件を充たさないほど低いというものでした。Tさんの力で会社のIT内部統制システムを構築することができたにもかかわらず、 まるでそのことなどなかったかのような態度です。

組合への加入と労災申請、そして裁判闘争へ

Tさんは上司からパワハラを受け始めていたこともあり、職場の改善を求めて、JMIU(全日本金属情報機器労働組合)京滋地方本部に相談し、労働組合に加入して団体交渉をしていました。また、京都職対連の支援を受けて、うつ病について労災申請もしました。しかし、会社は団体交渉でも態度を変えず、パワハラについても認めず、雇止めを強行しました。

そこでやむなくTさんは、雇止めが違法・無効であるとして訴訟を提起し、併せて生活費の支払い等の差し迫った問題もあったため、賃金仮払仮処分も申し立て、裁判闘争へと足を踏み入れたのです。もちろん、組合や職対連の全面的なバックアップを受けてのことです。これが奏功し、2013年2月にはTさんのうつ病について業務上のものであるとの労災認定が下されました。Tさんのうつ病の原因が、上司によるパワハラと恒常的な長時間の残業によってもたらされたことが明らかになったのであり、会社が金科玉条にしている「勤務成績が悪い」という事実がもしあったとしても、それは会社の責任に他ならないことが明らかになったのです。

日本電産の本社は京都ですが、会社側はわざわざ東京の超大手法律事務所を代理人に立てて全面的に争ってきました。それに対してこちらは、Tさんの極めて専門的な業務内容をまず弁護士が十分に理解することから始め、それを分かりやすく裁判所に伝えることに重点を置きました。もちろん、法的主張についても徹底的に論証し、団体交渉の内容や労災申請に関する事情も組合や職対連の協力のもとで裁判所に説得的に明らかにしていきました。そうして尋問を行い、会社側証人の反対尋問では会社側もTさんを相応に評価していたことなどを認めさせた結果、裁判所から和解案が示されることになったのです。

その内容は「勝利」と呼ぶに値するものであり、2014年3月、和解が成立しました。

組合・職対連・弁護士が連携して

労働者の権利を護る

日本電産といえば京都に本社を置く、日本でも有数の企業の1つです。主力製品はモーターとその関連機器で、例えば皆さんが持っている携帯電話やスマートフォンに内蔵されているバイブレーション機能にも、おそらく同社の作ったモーターが使われていると思います。こうした大企業に決然と裁判闘争を提起し、会社にきちんと責任を取らせて勝利和解を勝ち取ったことは、極めて大きな意義があるといえます。

また、定年後再雇用と雇止めの問題に関して、会社側の安全配慮義務違反を問題とするという視点は全く新しいもので、組合(今回はJMIU)と職対連、弁護士が連携して労働者の権利を護る闘いを取り組むことの意義を改めて認識する機会ともなりました。労働者の権利を護るためには、これからも幅広く連携していかなくてはなりません。

最後に、組合等の立場で中心的に取り組まれた方々や支援頂いた方々に、改めて御礼を申し上げたいと思います。


弁護団弁護士:森川明、渡辺輝人、筆者

「まきえや」2015年春号