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「類塾」に対して多額の残業代の支払いが命じられた件

事件報告 「類塾」に対して多額の残業代の支払いが命じられた件

弁護士 渡辺 輝人

「全員取締役制」を採る会社

大阪を中心に大手の学習塾「類塾」を展開する類設計室という会社があります。学習塾の業界は、全体的に、長時間残業が蔓延しています。類塾は、これへの“対策”のためか、「全員取締役制」という制度を採用しています。つまり、社員全員が経営者であり、自らが自立した仕事の仕方をするから、労働者ではない、というわけです。

論点は「労働者性」

しかし、労働基準法の適用(つまり労働時間規制)が及ぶ労働者か否かは、肩書ではなく、使用者との間の使用従属関係の有無、という客観的な事情により決まります。肩書や役職が取締役でも、実際にやっていることが、使用者の指揮命令に基づく講師や事務の業務であれば、労働者性が認められます。

勤務実態

類塾を訴えたAさんは、主に類塾の教室運営に関する事務を行う職員として採用されましたが、能力を認められ、途中からは講義も担当するようになりました。すでに述べたように、同社は従業員が「全員取締役」であるなどという主張の下、従業員に対して残業代を一切支払わない一方、連日、交代なく深夜まで勤務させた上、その後に全従業員を招集して「劇場会議」と称して経営方針を末端の従業員に浸透させる会議を開催することもあるなど、毎月、100時間を超える法定時間外労働をさせることが横行していました。そして、経営者(取締役)であるはずの従業員について、商業登記簿にその旨の記載はなく、毎日「活動記録」と称して労働時間の詳細を報告するように求めていました(この事件の判決後、再び、多数の従業員を取締役として登記するようになり、同社の商業登記簿は尋常ではない分厚さになっています)。

裁判所で断罪された類塾の手法

このような実態がある以上、裁判所が類塾の主張を相手にするはずもなく、Aさんの労働者性が認められました。労働基準法は週40時間、一日8時間の労働時間規制をしているので、使用者がこれを超えて働かせることは原則できませんし、仮に例外的に働かせた場合でも割増賃金(残業代)を支払わなければなりません。

京都地方裁判所は、2015年7月31日、同社に対して、Aさんに、未払い残業代、遅延損害金、付加金として1,100万円余を支払うよう命じました。

この判決は判例雑誌である『労働判例』(1128号52頁 類設計室事件)に「全員取締役制塾職員の労働者性と割増賃金請求」というタイトルで掲載されました。ブラック企業対策弁護団の代表である佐々木亮弁護士がこれをさらにインターネット上の記事で取り上げたため、大きな反響を呼びました。

そのような中、大阪高等裁判所は、2016年1月15日、株式会社類設計室の控訴を棄却しました。これにより、京都地裁判決が維持されました。

評価

このように、会社がどのような制度を勝手に採用しても、労働者は、労働者なのです。長時間労働は心身に悪影響を及ぼし、最近は、プライベートの時間を確保できないことも大きな問題となっています。

しかし、類塾はその後もこの制度を止めようとせず、次々に訴訟が起きているのが現状です。私自身、事件に着目したテレビ局の取材をうけて、情報番組に出演いたしました。超長時間労働で人を使い潰しながらまともな賃金を支払わないのは、ブラック企業の典型的な手口です。類塾がまともな労働環境になるよう、追及していきたいと考えています。

「まきえや」2017年秋号