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和解で円満解決〜マールブランシュでの障害者に対する雇い止め事件〜

事件報告 和解で円満解決〜マールブランシュでの障害者に対する雇い止め事件〜

弁護士 大島 麻子

障害者雇用で表彰された会社での不当雇い止め

マールブランシュは、京都北山に本店をもち、デパートや京都の観光地にも出店する人気洋菓子店です。このマールブランシュを経営する会社は、2014年9月、京都労働局などが主催する京都障害者ワークフェアにおいて努力賞の表彰を受けるなど、障害者雇用に取り組む企業とされていました。ところが、その数か月前、会社は、障害者雇用として雇い入れた原告(当時19歳)に対し、不当な雇い止めを行っていたのです。

原告の就職

原告は軽度の知的障害があるものの、日常生活においては問題なく自立し、2014年4月、製造ラインのパート社員として雇用されました。高校在学中から3度も就労体験を行うなど、慎重なマッチングを経た上での採用でした。当初の雇用期間は7月末までという有期雇用でしたが、原則更新との会社の約束を信じて求人に応じたのです。採用後は、一般の労働者と同じラインで熱心に仕事に励み、会社もその働きぶりを評価していました。

突然の雇い止め

5月に入り、ある従業員が更衣室に放置したスマホから、LINEでいたずらメッセージが送られるという「事件」が発生します。更衣室前の防犯カメラには、たまたま休憩中であった原告が更衣室に入室する姿が映っていました。会社は、それだけで原告を犯人と決めつけ、契約の更新拒絶と、清掃業務への配置転換を決定したのです。原告は「事件」への関与を否定しましたが、会社は原告の弁解には耳を貸しませんでした。

原告の保護者、卒業校の教員、障害者支援団体や障害者雇用を担当したハローワークの職員らは、何度も会社と面談を重ね、原告への濡れ衣を晴らそうとしました。最後には滋賀労働局が、障害者虐待の疑いがあるとして指導に入り、7月中旬、会社はいったん雇い止めと配置転換を撤回しました。

しかしながら、会社は引き続き原告を「事件」の犯人として扱ったため、原告の保護者が謝罪と事実経緯の説明を求めたところ、会社は再度雇い止めを通告し、7月末をもって雇い止めを強行しました。

地裁での不当判決

10月、原告と保護者は、不当な雇い止めや配置転換に対する慰謝料を求めて提訴しました。

当初からこの「事件」には狂言が疑われる点があり、問題のスマホが本当に更衣室にあったのかもはっきりしていません。防犯ビデオの時刻の正確性にも疑問があり、会社が証拠として提出した映像には、別の従業員が更衣室に不自然な出入りをくり返す姿も映っていました。他方、原告はLINEを使ったことがなく、普段の真面目な態度と「事件」とは全く結びつきませんでした。

なぜ、会社は原告を犯人と決めつけたのか。原告らの疑問に対し、会社の障害者雇用の責任者は、「(原告に)何かが突発的に起こったんではないかなと」「特に様子がおかしくなかったので、余計怖いなというふうに」と、障害者への偏見むき出しの証言を行い、傍聴席を唖然とさせました。そして、今でも原告を犯人だと考えており、謝罪するつもりはないと言い切りました。

これに対し、地裁の判決は、会社が雇い止めを行ったのは、原告の保護者らが謝罪や事件経緯の説明を更新の条件にしたせいであるとして、原告の請求を棄却したのです。

高裁での勝利的和解

障害者は、不当な扱いをされても、雇って欲しかったら文句を言わずに黙って働けといわんばかりの地裁判決に対し、原告は大阪高裁に控訴しました。

そして2017年1月末、高裁で和解が成立しました。和解条項として、会社が原告に対し遺憾の意を表すること、給与1年分以上に相当する解決金を支払うことが盛り込まれました。

2016年に障害者雇用促進法が改正され、また障害者差別解消法が施行されました。本件の和解が、障害者への不当な差別を解消する一契機になることを願っています。

 

「まきえや」2017年秋号