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都市法制の抜本的改正~動向と重要課題(3)

都市法制の抜本的改正~動向と重要課題(第3回/全4回)

飯田 昭弁護士 飯田 昭
※日本環境法律家連盟「環境と正義」2010年11月号に掲載

全体目次

第3.「エコ・コンパクトシティ」の問題点と真のエコ・コンパクトシティの実現のための視点について(1)

1.本号の趣旨

(1)前々号では、都市法制(都市計画法及び建築基準法の集団規定)の改正問題の状況と論点について、前号では、今般の大改正においては「建築自由の原則」から「建築調和の原則」、「計画なければ開発なしの原則」への転換が最重要課題であることについて述べた。

本号では、「サスティナブルシティ(持続可能な都市)」の実現とともに、「コンパクトシティ」の実現が課題とされているが、「コンパクトシティ」の内容については、十分に批判的にみなければならないことについて、整理しておきたい。

(2)結論から言えば、我が国において「コンパクトシティ」を論じる際には、「横」への拡大(=都市の郊外への膨張)の抑制については論じられるが、その反面として、「縦」への拡大(=高層化)がセットになっている論調が多いことである。もとより、サスティナブルシティ(持続可能な都市)の実現のためには、「横」への拡大のみならず、「縦」への拡大についても、コンパクトでなければならない。(超)高層建築物は、1.景観や周辺の住環境に与える悪影響、2.こども、障害者や高齢者などの社会的弱者にとっての住みにくさや生育への悪影響、3.分譲マンションでは将来の大規模修繕や立替えの困難性、4.廃棄物問題など、長期的に見て到底「持続可能」とは言えない。真のコンパクトシティの実現のためには、「横」だけでなく、「縦」にもコンパクトな、中低層を基本にしたまちづくりが必要である。

2.サスティナブルシティ(持続可能な都市)とコンパクトシティ

(1)サスティナブルシティ(持続可能な都市)

将来にわたって都市(社会)が持続可能であるためには、社会と経済と環境の3つの側面がそれぞれに持続可能性を実現することが重要であり、それらが相互に依存しあって持続可能性が実現する。そして、そのためには、社会、経済、環境の持続可能性を目指す包括的で統合的な地域政策が徹底した住民参加のもとに追求されなければならないとする考え方をいう。すなわち、徹底した住民参加を前提として環境保全をとりわけ重視しながら、生活の質を保証する経済発展と社会的公平がバランスをとって実現される社会を目指すもの。1992年の地球サミットで提唱された「持続可能な開発」の都市版であり、その具体的内容は1996年にEUにおいて「欧州サスティナブルシティ報告」として発表され、EUの都市政策として既に確立した考え方である。

(2)コンパクトシティ

急速なモータリゼーションにより、特に地方都市では、自動車利用を前提とした施設が郊外に数多く建設されるようになり、自動車利用に対応できない中心市街地が衰退する一方で、都市が無秩序かつ低密度に郊外に拡大していった。

しかも、この流れに対応しようとして際限なく幹線道路のバイパスを建設したがために、中心市街地の衰退と都市のスプロール化に一層拍車がかかるという悪循環に陥ってしまった。

しかし、少子高齢社会となった今、自動車を利用できない交通弱者が多くなると、上記のような無秩序かつ低密度に郊外に拡大した都市にはもはや住み続けることが出来なくなってしまう。また、人口減少により土地の利用密度が低下することは、環境保全の観点からも、充実した生活サービスを享受するという観点からも、持続可能なものとはいえない都市となってしまう。

そこで、少子高齢社会を前提として、特に地方都市において持続可能な都市を実現するべく目標にされるようになったのが、コンパクトシティである。コンパクトシティとは自動車の利用を中心とはしないまち、都市の空洞化や拡散を抑えたまち、歩いて楽しいまち(ウォーカブルシティ)、農村との連携が図られた、自然や環境に優しいまちである。

すなわち、コンパクトシティは本来はサスティナブルシティの1つである。

3. 我が国におけるコンパクトシティの実践例~青森市

(1)中心市街地の活性化

青森市は、かつては、青函連絡船と東北本線・奥羽線の終点である場所として栄えてきたところであるが、同時に、日本の都道府県庁所在地で唯一、特別豪雪地域に指定されているところである。人口約30万人前後で、これは、1980年から今日まで大きな変化はない。

ただし、市の中心部の人口は、1980年代から1990年代前半まで一貫して減少し、また、高齢化も急激に進行しており、中心部の高齢化率は全国平均をはるかに上回り、青森市の高齢化率の1.5倍前後のものとなっていた。これに伴う中心部の商店街の衰退も著しく、また、スプロール化による行政コストも増大し、さらに、周辺部の自然環境の悪化も深刻な問題となっていた(こうした問題状況自体は、青森市に限らず、多くの地方都市に共通するものと思われる)。

青森市は、こうした中で、1995年ころから、1.行政需要を抑制し、2.既存ストックの活用による効率的な都市整備を行い、3.周辺の自然環境保全を目指すために、周辺部での大規模小売店舗などの開発を抑制するとともに、周辺部から中心部への移転を促し、また、中心部の商業施設などの再活性化を図り、コンパクトシティ政策を実施してきた。

その結果、青森市は、大幅な行政コストを削減するとともに、中心部の商業維持、中心部の人口減少の停止などの効果があがった(中心部の人口は1995年前後を底に、増加に転じ、現在最少時から約2割の増加というところまで回復してきている。青森駅周辺の歩行者数も減少を防いでいる)。

地方都市の中で、駅前の商店街がそれなりのにぎわいを維持し、中心部の人口減少も食い止めている数少ない例である。青森市の実践は、政府が発行する環境白書でも、サステイナブルなまちづくりの成功例として取り上げられるなどしている。

(2)青森市の取組みと現在の都市法制に起因する限界

青森市は、町づくりの基本をコンパクトでサステイナブルなまちづくりにおき、その旨を、市の基本構想や都市計画マスタープランで定め、それにそった施策を実施してきた。しかし、それにも、現在の都市法制との関係でいくつかの限界があった。

第1に、中心部の商店街として形成をはかる地域において、大規模店舗が撤退した後に、まったく商店の付設がない、完全な住居としてのマンションが建てられ、商店街の歯抜け現象が起きるなどし、中心部の商店街の一部では商業地としての活力が後退している。これは、マスタープランがただちに法的拘束力をもつものではないため、中心商業地においても、商店の付設が当然には義務づけられないこととなっていることの反映である。

第2に、青森市の周辺都市では、郊外型の大規模小売店舗が建設されるなどし、青森市のコンパクトシティ政策に深刻な影響を及ぼしている。これは、現在の都市計画法・建築基準法では、中心市街地の活力維持・地球温暖化対策・行政コストの削減・高齢者等にとって住みよいまちづくりなどが建物の建築を認める際の基準とされておらず、また、影響を受ける近隣市町村であっても他市町村の計画に意見を言う手続がなんら存在せず、参加する権利が認められていないことなどによる問題である。

こうした問題点の結果、青森市が1995年以降全国に先駆けて実践してきたコンパクトシティ政策も行き詰りをみせている。

中心市街地の活力維持・地球温暖化対策・行政コストの削減・高齢者等にとって住みよいまちづくりを都市計画・建築法制の基本理念・基準とすることなしには、青森市同様、必死に努力を続けている地方都市は深刻な危機に陥ることとなりかねない。

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