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亀岡駅北開発問題/京都スタジアム建設に関わる二つの行政事件~水害とアユモドキ

亀岡駅北開発問題/京都スタジアム建設に関わる二つの行政事件~水害とアユモドキ

飯田 昭弁護士 飯田 昭
※日本環境法律家連盟「環境と正義」2016年4月号に掲載

1.亀岡駅北開発 ~二つの裁判

亀岡駅の北側において予定されている、駅北土地区画整理事業(組合施行)と球技専用競技場(京都スタジアム(仮称))建設を含む「京都・亀岡保津川公園」の都市計画公園事業をストップさせるために、2013(平成25)年の台風18号により浸水被害を受けた周辺住民ら約150名が原告となって二つの取り消し訴訟を提起し、8名の常任弁護団でこれを支援しています。

土地区画整理事業については2014(平成26)年12月4日に土地区画整理組合設立認可取消請求訴訟(以下、「区画整理訴訟」)を提起、京都スタジアム建設を含む都市計画公園事業については、2015(平成27)年1月13日に都市計画公園事業認可取消請求訴訟(以下、「スタジアム訴訟」)をそれぞれ提起し、現在二つの訴訟(被告は亀岡市)は京都地裁第3民事部において併合審理されています。

2.二つの目的 ~アユモドキの保全と水害の危険を食い止める

訴訟の目的は、大規模スタジアムと駅北土地区画整理事業の開発を止めることですが、一つには、希少生物であるアユモドキを守ること、もう一つには、本件事業地及びその周辺地は、常襲浸水地であり、このような土地を開発することにより将来的に生じるであろう水害の危険を食い止めることです。

2-1 水害の危険

亀岡駅北区画整理事業予定地とスタジアム予定地の位置関係は【写真1】の通りです。予定地は、保津川直下流に保津峡の狭窄部があることから、洪水が逆流して氾濫する浸水常襲地であり、長らく遊水池として機能していた田畑で、都市計画の線引きでは、「溢水、湛水、津波、高潮等による災害の発生のおそれのある土地の区域」(同施行令8条2号)としての市街化調整区域でした。

【写真1】駅北区画整理・スタジアム予定地(航空写真)

亀岡駅から北側をみると【写真2】のように事業予定地が見えます。2013(平成25)年9月の台風18号の時には、【写真3】のような浸水状況で、道路部分以外は、完全に水没していることがわかります。

ところが、サッカースタジアムの建設ありきで、駅からスタジアムに至る範囲を、区画整理を名目に住宅・商業用地として開発し、駅北の「活性化」を図ろうとする計画です。

【写真2】
【写真3】

そして、駅北については、区画整理を行うために市街化調整区域を市街化区域に変更して実施しようとし、スタジアムの方は、都市計画公園事業であることから、市街化調整区域であるにもかかわらず、開発許可を受けることなく実施しようとしています。

水害の危険との関係での亀岡市側の説明は、2009(平成21)年の保津川の第1段階の改修(当面改修)で洪水確率は10年に一度の危険レベルに向上したから市街化区域にしたというものですが、第2段階(30年に一度確率)、第3段階(100年に一度確率)の改修(これらは、下流の保津峡を拡幅しない限り不可能)を達成したのであればともかく、上記台風18号の被害が当面改修後に生じたことをみても、開発抑制を継続する必要性は明らかです。

殊に、区画整理では区域内に約4メートルの盛土をし、貯水機能を失うわけですから、これまでも繰り返し水害に遭ってきた周辺住民にとっては、生命・身体・財産がより強い脅威にさらされることになります。

2-2 アユモドキの保全

スタジアム建設が何故起きてきたのでしょうか?

京都には、西京極陸上競技場というパープルサンガが本拠地とするスタジアムがありますが、陸上競技の全国大会とJリーグを開催する関係から日程調整が困難だということで、球技専用競技場の整備が検討されていました。その候補地として城陽市の河川敷など数カ所が検討されてきましたが、駅北開発を指向する亀岡市が積極的に動いた結果選定されて、JR亀岡駅北側において京都スタジアム(仮称)が建設されることになったのです。

ここでの問題は、水害問題に加え、スタジアムを含む南丹都市計画公園事業は、アユモドキの生息地を事業予定地としていることです。

アユモドキ【写真4】は、国の天然記念物、環境省レッドリストの絶滅危惧ⅠA種(C R)、京都府の絶滅寸前種に指定されているばかりでなく、京都府の1ヶ所(本計画地)、および岡山県の2ヶ所に生息・繁殖場所が残るのみとなっており、種の存続が極めて危機的な状況にあります。また、アユモドキは当該事業地におけるシンボル的な生物ですが、保津川の河川空間には、他にも、アカザ、アジメドジョウ、スナヤツメ、イチモンジタナゴなどの魚類、カイツブリ、トラツグミ、イソシギ、イカルチドリ、オオヨシキリなどの鳥類、ワラハハコ、カワヂシャ、コガマ、ホザキノフサモ、ウキヤガラなどの植物などが生息しており、多様な生態環境を 構成しています。

【写真4】アユモドキ幼魚(生後1年)

このような土地を開発することにより、アユモドキを頂点とする多種多様な生態系に対して絶滅の危険性を含む多大な影響があると考えられます。

この間、アユモドキについては、日本魚類学会をはじめ多くの自然保護団体が開発の中止を求める意見書・声明を出していましたが、国際自然保護連合(IUCN)もアユモドキを絶滅危惧種の最上位であるⅠA類(CR)に正式に指定しました【記事1】。これは、スタジアム開発計画によるアユモドキの危機的状況が世界的に認識され、その保全が地球的規模でみても優先度が高いと判定されたものです。京都府の設置した環境保全専門家会議の繁殖実験や生態系調査の検証結果も昨年末に終わる見込みがなお終了しておらず、府は当初の予定を1年延ばして本年4月に予定していたスタジアムの着工を更に1年程度延期せざるを得ませんでした【記事2】。

訴訟はまだ始まったばかりで、この種裁判には、原告適格、行政事件訴訟法10条1項の問題、行政裁量等々かなりのハードルが待ち受けておりますが、原告団・弁護団では本訴訟に全力で取り組んでいきますので、今後ともご支援いただきますようお願いいたします。

【記事1】
【記事2】