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学生が薬品を不正に販売

学生が薬品を不正に販売したら…

村井 豊明弁護士 村井 豊明
化学同人刊行、「化学」2004年5月号掲載
今月の相談学生がインターネットを使って薬品を不法に販売していたことが発覚しました。その法的責任はどのようになりますか。

「薬品」とはどういうもの?

学生が販売した薬品というのは、どのような性質のものなのかによって、規制される法律が異なります。まず、薬品の場合、薬事法にいう「医薬品」なのか、毒物及び劇物取締法にいう「毒物」「劇物」「特定毒物」なのかを区別して考える必要があります。

薬事法2条において、「医薬品」とは、次に掲げるものをいうと定義づけています。

  • (1) 日本薬局方に収められているもの
  • (2) 人または動物の疾病の診断、治療または予防に使用されることが目的とされているものであって、機械器具、歯科材料、医療用品及び衛生用品(以下「機械器具等」という)でないもの
  • (3) 人または動物の身体の構造または機能に影響を及ぼすことが目的とされているものであって、機械器具等でないもの

毒物及び劇物取締法2条は、「毒物」「劇物」「特定毒物」を次のように定義づけています。

  • (1) 「毒物」とは、別表第一に掲げるものであって、医薬品及び医薬部外品以外のものをいう。
    なお、別表第一では、黄リン、シアン化ナトリウム、水銀、ヒ素など27種類のものを掲げ、さらに、その他の毒性をもつものであって政令で定めるものを加えています。
  • (2) 「劇物」とは、別表第二に掲げるものであって、医薬品および医薬部外品以外のものをいう。
    なお、別表第二では、アンモニア、塩化水素、クロロホルム、硝酸、硫酸、ナトリウム、メタノールなど93種類のものを掲げ、さらに、その他の劇性をもつものであって政令で定めるものを加えています。
  • (3) 「特定毒物」とは、別表第三に掲げるものであって、医薬品及び医薬部外品以外のものという。
    なお、別表第三では、オクタメチルピロホスホルアミド、モノフルオール酢酸など9種類のものを掲げ、さらに、その他の著しい毒性をもつ毒物であって政令で定めるものを加えています。
薬事法に関する最高裁の判例

この最高裁判決によると、薬事法にいう「医薬品」とは、そのものの成分、形状、名称、そのものに表示されていた使用目的・効能効果・用法用量、販売方法、その際の演述・宣伝などを総合して、通常、そのものが人の理解において「人または動物の疾病の診断、治療または予防に使用されることが目的とされている」と認められるものをいい、これが客観的に薬理作用をもつものであるか否かを問いません。

「つかれず」「つかれず粒」(クエン酸またはクエン酸ナトリウムを主成分とする白色粉末または錠剤)の商品に対して最高裁は、人体に有害無益なものであるとしても、高血圧、糖尿病などに効くとして宣伝・販売したときは、薬事法にいう「医薬品」にあたるとしてました(昭和57年9月28日判決)。

薬事法による規制

薬事法24条1項は、薬局開設者または医薬品の販売業の許可を受けた者でなければ、業として、医薬品を販売し、授与し、または販売もしくは授与の目的で貯蔵し、もしくは陳列してはならないと定めています。これに違反した者は、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金に処せられ、またはこれを併科させられます(薬事法84条5号)。

今月の相談にある学生は、インターネットで医薬品の宣伝をして、これを販売していたので、当然、許可を得ていないでしょうから、薬事法24条違反で懲役・罰金に処せられます。そして、その販売した量や期間によって、また、反省の程度などによって、懲役の期間や罰金の金額の多寡が決まります。また、その程度が軽ければ、執行猶予起訴猶予が得られる可能性もあります。

なお、「業として」というのは、同種の行為を反復継続的に行うことをいいます。したがって、たまたま自分がもっている医薬品(風邪薬や胃腸薬など)を家族や友人にあげたりすることは薬事法違反とはなりません。

毒物及び劇物取締法による規制

毒物及び劇物取締法3条3項は、毒物または劇物の販売業の登録を受けた者でなければ、毒物または劇物を販売し、授与し、または販売もしくは授与の目的で貯蔵し、運搬し、もしくは陳列してはならないと定めています。また、同法3条の2第6項は、毒物劇物営業者、特定毒物研究者または特定毒物使用者でなければ、特定毒物を譲り渡し、または譲り受けてはならないと定めています。これらに違反した者は、3年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金に処せられ、またはこれを併科させられます(毒物及び劇物取締法24条1号)。

相談にある学生は、インターネットで毒物・劇物・特定毒物の宣伝をして、これらを販売していたので、当然、登録をしていないでしょうから、毒物及び劇物取締法24条1号で懲役・罰金に処せられます。そして、その販売した量や期間によって、また、反省の程度などによって、懲役の期間や罰金の金額の多寡が決まります。また、その程度が軽ければ、執行猶予や起訴猶予が得られる可能性もあります。

なお、毒物などの譲り渡しの場合、医薬品とは異なり、「業として」いなくても違法となります。したがって、1回でも毒物などの譲り渡しをすれば、毒物及び劇物取締法違反に問われますので、注意して下さい。

大学の薬品を盗んだ場合

学生が大学の薬品を盗んで販売していた場合、当然、窃盗罪にも問われます。窃盗罪を犯した者は、10年以下の懲役に処せられます(刑法235条)。

大学にはたくさんの薬品が保管されていますが、これらは研究や実験目的で使用することが許されているのであって、販売目的のために使用することはできません。大学側もこれらの薬品の保管を万全にし、学生が不正使用したり、盗んだりしないように、日頃から注意をする必要があります。

日本薬局方

現代の薬学医学の知識を総合してその性状品質を定めた基準書。厚生労働大臣が中央薬事審議会の意見を聞いて日本薬局方を定め、これを公示しています(薬事法41条)。

併科

懲役刑と罰金刑の双方をいいわたされる場合です。

執行猶予

有罪判決を受けても、情状により、直ちに執行されることなく、一定の猶予期間を無事に経過すれば、執行されなくなる制度です。有罪判決は、3年以下の懲役・禁錮または50万円以下の罰金に限られます。猶予期間は、1年以上5年以下と定められています(刑法25条)

起訴猶予

検察官が犯罪の嫌疑があるときでも、起訴しないことをいいます。これは、「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重および情状ならびに犯罪後の状況により訴追を必要としないとき」に認められます(刑事訴訟法248条)。