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パソコンソフトの不正コピー

パソコンソフトの不正コピーが発覚

浅野 則明弁護士 浅野 則明
化学同人刊行、「化学」2004年3月号掲載
今月の相談大学(企業)内において、コンピュータソフトの不正コピーが大量に行なわれていたことが発覚し、ソフトの販売会社から損害賠償を請求されていますが、支払義務はありますか。

コンピュータ・プログラムは著作権の対象?

社会の高度情報化が急速に進行している現代社会においては、コンピュータを用いた情報処理、加工、伝達はその中核的な地位を担っています。著しく発達したハードの上で、実際にその機能を担うのはさまざまなコンピュータ・プログラムです。このコンピュータ・プログラムは、昭和60年の著作権法改正により、「著作物」として保護されることが明確化されました。すなわち、著作権法上、「プログラムの著作物」が著作物の例示の一つとしてあげられており(同法10 条1項9号)、プログラムとは「電子計算機(コンピュータのこと)を機能させて一の結果を得ることができるように、これに対する指令を組み合わせたものとして表現したもの」と定義されています(同法2条1項10号の2)。したがって、プログラム言語、規約、解法を除いて、コンピュータ・プログラムは著作権の対象となります。著作権者は著作物を複製する権利を専有することが認められていることから(同法21条)、著作権者の許諾のない限り、これをコピーすることはできません。

コピーが認められる場合もある?

コンピュータ・プログラムにはさまざまなものがありますが、代表的な例としては、ワープロソフトのWordや一太郎、表計算ソフトのExcelなどがあります。これらは市販されていますので、それを購入し、パソコンにインストールして使用することはできますが、原則として一つのソフトは1台のパソコンにしか使用が許されていません。したがって、一つのソフトを購入し、それを複数のパソコンにインストールして使用することは著作権の侵害にあたることになります。

ただ、個人的に、または家庭内やその他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とする場合には、複製することができるとされています(同法 30条)。つまり、買ってきたコンピュータ・プログラムを、家庭内やその他これに準ずる限られた範囲では、コピーすることが認められていることになります。しかし、家庭内であっても個人的なものであっても、大量にコピーしたり、友人などに提供するためにコピーしたりすることは認められません。したがって、学内において、あるいは企業内において、コピーして複数が使うようなことは認められず、著作権の侵害になることは明らかです。

また、プログラムのバックアップやバージョンアップのためであれば、コピーをつくることは認められています(同法47条の2、1項)。

著作権の救済措置はあるの?

著作権を侵害した場合には、どのような救済措置があるのでしょうか。まず、著作権を侵害する者または侵害するおそれのある者に対し、その侵害の停止または予防を請求する権利が認められています(同法112条1項、差止請求権)。この差止請求に際しては、侵害行為を組成したもの、侵害行為によって作成されたもの、またはもっぱら侵害行為に供された機械もしくは器具の廃棄、その他の侵害の停止または予防に必要な措置を請求することができるとされています(同法 112条2項)。したがって、不正コピーがインストールされているパソコンにおいて当該プログラムの使用停止を求めることはもちろんのこと、プログラムの削除を求めることができます。

損害賠償の請求額はどれくらい?

次に損害賠償についてですが、著作権者は、故意または過失により著作権を侵害した者に対して、民法の一般原則に従って、侵害行為により生じた損害の賠償を請求することができます(民法709条)。不正コピーを行った本人はもちろん、このような不正コピーが学内(教室内)あるいは企業内で行われていることを知りながら、これを阻止する措置をとらず、漫然と放置していた管理者(学校、企業)も使用者責任(民法715条)を問われることがあるので注意を要します。

では、損害賠償の金額はどうなるのでしょうか。著作権侵害により発生する損害額がいくらであるかを算定することは困難なことが多いことを予想して、侵害行為によって侵害者が得た利益の額が、著作権者が受けた損害の額であると推定されています(同法114条1項)。しかし実際には、侵害行為によって侵害者が得た利益の額の立証が困難であることも多いので、最低限の損害賠償として、著作権の行使の対価として受けるべき使用料の額を損害額として請求することができるとされています(同法114条2項)。

それでは、一般に市販されているパソコンソフトの不正コピーを行った場合の損害は、どのように解釈されているのでしょうか。これまでの判例では、著作権侵害者がソフトの無許諾コピーにより得た利益額は、正規品小売価格相当額により評価し尽くされているのであり、これを超えると解するのは相当ではなく、また使用許諾料相当額もこれと同額であるとされています[東京地裁平成13年5月16日判決(LEC判決、コラム参照)、同旨大阪地裁平成15年10月23日判決]。

著作権を侵害された原告が、正規品の事前購入者との均衡などから、侵害行為によって侵害者が得た利益の額(使用許諾料相当額)は正規品小売価格の2倍を下らないという主張をしたことに対し、判決はこれを退けています。しかし、上記二つの判例は不正コピーが発覚した後、正規品を購入したことにより、原告の損害は補填されたという被告の主張に対しては、正規品の購入は利用者として自発的に利用することであり、不正コピーという不法行為とは別個独立の行為であって、これにより不法行為による損害賠償請求権が消滅することはできないとして、これを認めませんでした。結果的には、被告らは正規品小売価格の2倍相当額の支払いをしたことになります。

LEC判決とは?

パソコン用ビジネスソフトを不正コピーして業務に利用され著作権を侵害されたとして、マイクロソフトなど米ソフトメーカー3社が大手司法試験予備校、東京リーガルマインド(LEC)を相手に約1億1400万円の損害賠償などを求めた訴訟。東京地裁は原告側の主張をほぼ認め、「正規品の小売価格と同額の損害賠償をすべきだ」として、LECに約8500万円の支払いを命じた。しかし、原告側が求めていた制裁的な賠償金支払いは退けた。

判決によると、LECは1999年5月当時、高田馬場西校内のパソコンにマイクロソフトの表計算ソフト「Excel」や、アップルの画像処理ソフト「MacDraw」、アドビの編集ソフト「PageMaker」など3社のソフトを無断で違法にコピーし、教材作成などの業務に利用していた。LEC側は、「コピー発覚後に正規ソフトを購入した。ソフトの使用契約(シュリンプアップ契約)では、一度代金を支払えば無期限で利用できることになっており、原告に損害を与えていない」などと主張していたが、裁判所は、「著作権侵害行為は違法にコピーした時点で成立している」として退けた。一方、原告側は制裁的な賠償も含め正規小売価格の2倍の支払いを求めたが、判決は「正当とする根拠や証拠がない」としてこれを認めなかった。