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労働災害(労災)とは

大島 麻子弁護士 大島 麻子

労働災害(労災)とは

Q.仕事中に怪我をしました。労災保険で治療費や休業補償をしてもらえますか?
A. 労災には大きく分けて
  • (1) 本来の業務上の災害(業務災害)
  • (2) 勤途上の災害(通勤災害)
の二つがあります。これらは、業務上の事由や通勤による労働者の負傷、疾病、障害または死亡につき、被災者やその遺族に対して所定の保険給付を行うものです。これにはいわゆる過労死や過労自死(過労自殺)も含まれます。

労災給付を受けるには、被災した労働者あるいはその遺族から、その労働者が働いていた事業所を管轄する労働基準監督署長に対し、所定の請求書を提出することになります。会社(使用者)は、この請求手続に協力する義務がありますが、請求するのは被災者自身なので、会社(使用者)に任せておれば安心なわけではないことに注意が必要です。

また、労災給付の請求には時間的な制約(時効)があります。療養補償、休業補償、葬祭料は2年以上たつと、それ以前の分は請求できなくなります。障害補償、遺族補償は5年以内にしないと請求できなくなってしまいます。

Q.労災保険はどのような災害・疾病に適用されますか?
A. 労働者が被災した事由が「業務上」とされ、労災給付を受けられるためには
  • (1) 労働者が労働契約に基づき使用者の支配下にあること(業務遂行性)
  • (2) 使用者の支配下にあることに伴う危険が現実化したものと認められること(業務起因性)
の二つの要件を満たすことが必要です。この二つの要件を満たした場合には、相当因果関係があるとして「業務上」認定がなされます。古くは「けいわん」(頸肩腕症候群)や過労死の事案、うつ病や過労自死(過労自殺)等については、この業務起因性が問題とされる場合が多くなります。
Q.通勤災害はどのような場合に認められますか?
A. 労働者の通勤による負傷、疾病、障害、死亡については、業務災害とは異なる通勤災害として、通常の業務災害に準ずる保険給付がなされます。通勤災害と認定されるための通勤とは
  • (1) 就業に関し、住居と就業の場所との間を往復すること(業務と密接な関連性をもって行われる往復行為)
  • (2) その往復が合理的な経路および方法によるものであること
が必要とされています。

休日に会社の運動施設を利用するために出社する場合、会社主催の任意レクリエーションに参加する場合、同僚との懇親会や送別会に参加する場合などは、就業に関するものとは認められないケースが多いようです。

友人宅に泊まってそこから直接出勤する場合、法事のために実家に泊まってそこから出勤する場合などは、住居とは認められませんが、交通事情や自然災害のため一時的に宿泊するホテルなどは住居と認められます。

通勤の途中で、飲み屋に立ち寄ったり、映画館に入ったりするような場合には、合理的な経路を逸脱したと評価されがちですが、クリーニング店に立ち寄ったり、病院で治療を受ける場合、投票所に行く場合など、日常生活に必要な最小限度の行為をする場合は逸脱・中断とはならならず、通勤災害と認められる場合があります。

Q.労災保険の給付にはどのようなものがありますか?
A. 下記の表のとおりです。「給付基礎日額」とは、原則として、業務上又は通勤による負傷や死亡の原因となった事故が発生した日又は医師の診断によって疾病の発生が確定した日(賃金締切日が定められているときは、その日の直前の賃金締切日)の直前3か月間にその被災労働者に対して払われた賃金の総額を、その期間の暦日数で割った1暦日当たりの賃金額をいいます。
保険給付
の種類
どんなときに給付の内容
(1)療養補償給付 療養給付療養の給付業務災害や通勤災害による傷病を労災病院や指定病院で療養するとき必要な療養の給付
療養の費用の支給上記以外の病院で療養するとき必要な療養費の全額
(2)休業補償給付 休業給付業務災害や通勤災害による傷病の療養のため、労働ができずに賃金を受けられない日が4日以上に及ぶとき休業から4日目から1日につき給付基礎日額の60%相当額
(3)障害補償給付 障害給付障害補償年金 障害年金業務災害や通勤災害による傷病が治った後に障害等級第1級~第7級のいずれかにあてはまる障害が残ったとき障害の程度に応じ給付基礎日額の313日分~131日分の年金
障害補償一時金 障害一時金業務災害や通勤災害による傷病が治った後に障害等級第8級~第14級のいずれかにあてはまる障害が残ったとき障害の程度に応じ給付基礎日額の503日分~56日分の一時金
(4)傷病補償年金 傷病年金業務災害や通勤災害による傷病が療養開始後1年6か月を経過した日あるいは同日後に次のいずれにもあてはまるとき(イ)傷病が治っていないこと(ロ)障害の程度が傷病等級にあてはまること障害の程度に応じ給付基礎日額の313日分~245日分の年金
(5)介護補償給付 介護給付障害(補償)年金または傷病(補償)年金のうち第1級の者または第2級の者(精神障害および胸腹部臓器の障害の者)であって、現に介護を受けているとき
(6)遺族補償給付 遺族給付遺族補償年金/遺族年金業務災害や通勤災害により死亡(推定も含む)したとき遺族の数等に応じ給付基礎日額の245日分~153日分の年金
遺族補償一時金/遺族一時金(イ)上記の年金を受け取る遺族がいないとき (ロ)年金を受けている人が失権し、しかも他に年金を受け得る人がおらず、既に支給された年金の合計額が給付基礎日額の1,000日分に満たないとき給付基礎日額の1,000日分の一時金ただし、(ロ)のときは既に支給した年金合計額を差し引いた額
(7)葬祭料 葬祭給付業務災害や通勤災害で死亡した人の葬祭を行うとき31万5,000円に給付基礎日額の30日分を加えた額か給付基礎日額の60日分
(8)二次健康診断等給付二次健康診断過労死などの防止のため、脳及び心臓の状態を把握するための検査等医師による健康診断健康診断に必要な費用
保健指導脳・心臓疾患の発生を予防するための医師等による保健指導保健指導に必要な費用

*常時介護の場合は、介護の費用として支出した額(上限104,730円)。ただし、親族等により介護を受けており介護費用を支出していないか、支出した額が56,790円を下回る場合は56,790円。随時介護の場合は、介護の費用として支出した額(上限52,370円)ただし、親族等により介護を受けており介護費用を支出していないか、支出した額が28,400円を下回る場合は28,400円。