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「ご存知ですか、相続・遺産分割」 – レジュメ

【担当講師】
第1章~第3章 弁護士 飯田 昭
第4章~第5章 弁護士 村井 豊明
第6章~第7章 弁護士 浅野 則明

相続の開始 ~ 相続人の範囲と相続分 ~ 遺言があった場合

飯田 昭弁護士 飯田 昭

第1章 相続の開始

被相続人の死亡時です。

Q 生前に相続することはできませんか?

A できません。生前の財産移転は「贈与」となり、年間110万円を超える贈与については高額の税金がかかります。但し、65歳以上の親から20歳以上の子への贈与の場合には贈与税の相続時精算課税制度という方法がありますので、弁護士か税理士にご相談ください。

一般的には、相続させたい方に、遺言を書いておくことが最良の方法です。弁護士にご相談ください。

Q 父は25年前に妻子を残して行方不明になりました。父名義の不動産を相続することはできますか?

A 家庭裁判所に失踪宣告を申立てて認められると、7年の失踪期間が満了した時点で死亡したものとみなされます。

第2章 相続人の範囲と相続分

配偶者と子がいる場合

→配偶者1/2、子は1/2を均分(代襲相続あり)。

子のみの場合

→子供のみで均分されます(代襲相続あり)。

配偶者のみ

※被相続人の親が健在のとき

→配偶者2/3、親は1/3(両親とも健在であれば各1/6)

※被相続人の親はいないが、兄弟(ないしその子)が健在のとき

→配偶者3/4、兄弟は1/4を均分(子への代襲相続あり)。

独身者

※被相続人の親が健在のとき

→親のみ(両親とも健在であれば各1/2)

※被相続人の親はいないが、兄弟(ないしその子)が健在のとき

→兄弟が均分(子への代襲相続あり)。

Q 胎児にも相続権はありますか?

A あります。生きて生まれた場合は、相続開始時に生まれていたものとして扱われます。

Q 代襲相続とは何ですか?

A 例えば、相続開始以前に被相続人の長男が死亡していて、長男に子供が3人いる場合には、長男の相続分は長男の3人の子供(被相続人の孫)に均分相続されることになります。

Q 養子の場合は養親からも実親からも相続できるのですか?

A 両方から相続できます。養子も実子も「子」としての相続人です。但し、特別養子の場合は実親からは相続できません。

Q 内縁の妻の場合は相続できるのですか?

A 相続人にはなれません。他に相続人がいない場合に特別縁故者としての分与の申立てはできます。生前に遺言を作成しておいてもらう必要がありそうです。

Q 親に暴力をふるい、親の財産をくいつぶした次男は相続人からはずせませんか?

A 民法891条は相続人の欠格事由を定めていますが、殺人や詐欺・脅迫による遺言作成など、理由は極めて限定されています。他に、家庭裁判所に申立てるか、遺言で、相続人の廃除という制度があります(同893条)。これも、子が親を虐待するとか、重大な侮辱を加えたとか、その他著しい非行があったことが要件となりますから、弁護士に相談してください。一般的には、遺言で次男の相続分をなくすことが考えられますが、遺留分減殺請求権はありますので、やはり弁護士に相談した方がよいでしょう。

第3章 被相続人に遺言があった場合

遺言の形式が満たされていなかったり、1年以内に遺留分減殺請求が行使されない限り、遺言通りに相続されることになります。但し、相続人間の全員の合意で、遺言と異なる内容の遺産分割協議を成立させることは可能です。

Q 私は次男ですが、長男のみに相続させるとの遺言があるとのことです。私は何も相続できないのでしょうか?

A 配偶者や子供には遺留分が認められています(兄弟姉妹にはありません)。その割合は本来の相続分の半分です。遺留分を侵害されたことを知ってから1年以内に遺留分減殺請求を行う必要がありますので、速やかに弁護士に相談してください。

Q 亡くなった父親の遺言がみつかりましたが、何か手続きが必要ですか?

A 公正証書遺言の場合にはその必要はありませんが、自筆証書遺言の場合には、家庭裁判所に申出て、遺言の検認を受ける必要があります。

Q 亡くなった父親の遺言は、かなり複雑であり、遺言執行者としてA弁護士が指定されていました。どうしたらよいでしょうか?

A 遺言執行者は相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務をもち、公平・公正な立場で遺言内容を執行する者です。一般的にはお父様が生前にA弁護士に依頼されていたはずですので、速やかにA弁護士に連絡をとってください。もし、A弁護士が辞退した場合には、家庭裁判所に遺言執行者の選任を申立てることもできます。

遺産の範囲 ~ 遺産分割手続

村井 豊明弁護士 村井 豊明

第4章 遺産(相続財産)の範囲

(1)不動産(土地、建物)

登記簿謄本 固定資産評価証明書 路線価 不動産鑑定
法定相続分に応じた共有。遺産分割手続で持分・所有者変更。

(2)預貯金

通帳 取引明細(相続人1人でも取り寄せ可能)
判例は当然分割説。銀行・郵便局の実務は相続人全員の承諾書を要求。
被相続人死亡前後に相続人の1人が預貯金の払戻しを受けたり、解約している場合⇒不当利得返還請求、不法行為に基づく損害賠償請求(地裁)

(3)現金

遺産分割の手続が必要。

(4)生命保険

指定された受取人は保険契約の効果として保険金を取得(相続ではない)。但し、相続税の対象となる。受取人の指定がない場合は相続財産となる。

(5)株式

取引明細(相続人1人でも取り寄せ可能)
法定相続分に応じた準共有。遺産分割手続で持分・所有者変更。

(6)賃借権(借地権・借家権)

法定相続分に応じた準共有。遺産分割手続で持分・所有者変更。
同居の家族(内縁の妻も含む)は援用理論等により居住する権利を保護(判例)

(7)債務(借金・保証人)

法定相続分に応じて債務を相続(分割承継)。負担割合を変更するには債権者の同意が必要。

特別受益

共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け又は贈与を受けた者があるときは、その価額を加えたものを相続財産とみなし(「みなし相続財産」)、相続分の中からその価額を控除した残額をもって、その者の相続分とする(民法903条1項)。

寄与分

共同相続人の中に、被相続人の事業に関する労務の提供、財産上の給付、被相続人の療養看護、その他の方法により被相続人の財産の維持・増加について特別の寄与をした者があるときは、寄与分を控除したものを相続財産とみなし、相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする(民法904条の2)

第5章 遺産分割手続

(1)遺産分割協議書

共同相続人全員の署名捺印(登記手続や預金解約手続には実印と印鑑証明が必要)

(2)「相続分なきことの証明書」

署名捺印した相続人には相続分がゼロとして扱われる(登記手続や預金解約手続には実印と印鑑証明が必要)。

(3)遺産分割調停申立(家裁)

→成立・調停調書
→不成立・審判へ移行⇒審判

(4)遺産分割審判申立

→通常は職権で調停に付される。
→審判

相続の承認と放棄 ~ 相続人の不存在

浅野 則明弁護士 浅野 則明

第6章 相続の承認と放棄

1 制度の概要

(1)相続の開始
  • 人(被相続人)の死亡⇒相続の開始(民法882条)
  • 相続の効力⇒被相続人に属していた権利義務の一切が当然に相続人に移転する(896条本文)
(2)相続人の選択権
  1. 単純承認-権利義務をそのまま承継(920条)
  2. 限定承認-相続債務等を遺産中の積極財産の限度で責任を負う(922条)
  3. 相続放棄-最初から相続人でなくなる(939条)
  • *1と3は、相続人ごとに行うことができるが、2は共同相続人全員で行う必要がある(923条)。
(3)熟慮期間
  • 相続放棄あるいは限定承認を選択する場合⇒家庭裁判所に申述する
  • 熟慮期間⇒自己のために相続の開始のあったことを知ったときから3か月(915条1項本文)
  • 熟慮期間の伸長⇒家庭裁判所に求める(915条1項但書)

2 相続の放棄

(1)相続放棄-相続人となることの拒否
(2)要式行為-熟慮期間内に家庭裁判所に申述する必要がある(938条)
  • *1 書面または口頭で(家審規3条)-通常は書面(定型書式)
  • *2 相続開始地の管轄裁判所
  • *3 申立手数料800円、予納郵便切手80円×5枚
  • *4 添付書類-申立人、被相続人の戸籍(除籍)謄本
(3)放棄理由-問わない(債務超過、生前贈与、生活安定、遺産僅少等)
(4)放棄効果-初めから相続人でなかったことになる
(5)相続開始前の放棄-無効

cf.相続開始前の遺留分の放棄は可能(家裁の許可必要1043条1項)

Q 相続開始を知ったときから1年後に多額の借金のあることが判明した場合、相続放棄はできませんか。

相続開始当時、被相続人に借金がないと思っていたところ、熟慮期間経過後に借金の存在が判明したような場合です。このような場合まで相続債務を引き受けさせるのは酷と考えられ、現在では、相続人が債務を含めて相続財産が全くないものと誤信したために相続放棄の手続をとらず熟慮期間を徒過してしまった場合には、被相続人の生活歴、被相続人と相続人の間の交際状態その他諸般の事情から見て、相続人がそのように誤信したことにつき相当な理由がある場合には、債務の存在を認識したときから熟慮期間が始めるとされています(最判S59.4.27)。

3 限定承認

(1)相続財産の範囲内で、相続債務や遺贈を弁済すること(有限責任)

プラスの財産でマイナスの借金等を弁済し、

  1. 残余があれば、相続人が取得し(遺産分割は必要)
  2. 残余がなければ、それ以上に債務等を負担する必要がない-つまり不足債務を相続人個人の債務として弁済する必要がない
(2)要式行為、熟慮期間⇒相続放棄と同じ
(3)共同相続人全員(放棄したものは除く)で行う必要がある(923条)
  • *共同相続人の一人が単純承認した場合⇒他の共同相続人は単純承認するか、相続放棄するかの選択になる
(4)限定承認後の手続
  • ア 相続財産管理人の選任(936条1項)
    共同相続人の中から選任される
  • イ 相続債権者および受遺者に対する公告と催告(927条)
    公告-相続財産管理人選任後10日以内(通常は官報公告)
    催告-知れたる債権者に対し、通常内容証明郵便で行う
  • ウ 相続財産の換価・評価
    原則競売(932条1項)
    競売によらない場合-損害賠償の責任(934条1項)
  • エ 弁済
    1. 優先債権者
    2. 申出(知れたる)債権者
    3. 申出(知れたる)受遺者
    4. その余の債権者
    5. その余の受遺者
  • オ 不当弁済の責任(934条1項)
  • *限定承認を選択する場合は、手続が複雑であり、場合によっては損害賠償責任を負うことがあるので、弁護士に依頼した方がよい。

4 単純承認

(1)法定単純承認(921条)

-確定的、包括的に相続財産・債務等の一切の権利義務を承継する(無限責任)

(2)単純承認の原因
  1. 熟慮期間内に相続放棄も限定承認もしなかった場合
  2. 相続財産の全部または一部の処分
    • *1 保存行為は除外
    • *2 形見分けはどうか
    • *3 相続財産から葬儀費用を支出した場合
    • *4 生命保険金の受領
  3. 相続放棄、限定承認後の相続財産の隠匿、処分、財産目録への不記載
    • *1 限定承認後に共同相続人の一部にあった場合(937条)

第7章 相続人の不存在

1 相続人の不存在とは

→相続人のあることが明らかでないとき(951条)

2 相続財産法人の当然成立

3 相続財産管理人の選任請求(952条1項)

利害関係人(例えば、相続債権者、受遺者、特別縁故者)からの請求により、家裁が選任する-通常は弁護士が選任される

4 相続財産管理人選任後の手続

(1)相続債権者・受遺者に対する公告・催告(957条1項)

2か月以上の期間をおいて、官報により公告し、知れたる者に対しては個別に催告する

(2)相続債権者・受遺者に対する弁済(957条2項)

限定承認の場合と同様

(3)相続人捜索の公告(958条)

6か月以上の期間をおいて、官報により公告する

(4)相続人等の失権(958条の2)
(5)特別縁故者への財産分与(958条の3、1項)

相続人捜索の公告期間満了後、3か月以内に家裁に請求する
特別縁故者とは、

  1. 被相続人と生計を同じくしていた者
    内縁の配偶者、事実上の養子、継親子、子の妻、伯叔父母
  2. 被相続人の療養看護に努めた者
  3. その他被相続人と特別の縁故があった者
  • *分与財産の範囲や程度→家裁の判断による
(6)国庫帰属(959条)