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「高齢者の財産管理・遺言」市民のための法律セミナー・レジュメ

高齢者等の財産を守るために

飯田 昭2011年6月4日

弁護士 飯田 昭

1.相談例

(相談例1)

母は3年前に亡くなり、実家の京都で一人暮らしの父のことが心配です。父には自宅の他、かなりの預貯金がありますが、最近はかなり痴呆が進んできています。

私は一人息子で、関東に仕事、家庭があり、京都で生活することはできません。

介護については、将来は施設に入れるように準備するつもりですが、父の財産の管理をしてもらうには、どうしたらよいでしょうか?

(相談例2)

叔父が亡くなり、叔母は京都で一人暮らしでしたが、痴呆が進んできたので、老人ホームに入居させました。子供はおりません。

叔母には妹がおり、私はその長女で、叔母には、小さい頃からずーっとかわいがってもらいました。

ところが、最近になって、叔父の弟が、叔母の家に入りこんでいると聞きました。その人は、定職にもつかず、叔父は生前から気をつけるよう言っていた人です。

叔母の通帳の一つは、施設の支払のため、私が預かっていますが、他にも、預貯金や株式、貴金属などがかなりあるはずです。

叔母の財産を守るためには、どうしたらよいでしょうか?

2.財産管理とは?

民法859条1項

(1)貯金

(2)年金

(3)役所への届出

(4)税務申告

(5)不動産管理

(6)身上関連契約(介護、施設、診療etc)

(7)居住用不動産の処分(,家庭裁判所の許可)

(8)日常生活自力支援事業(社会福祉法)との連携

(9)生活保護受給

3.財産管理の必要性とその制度

高齢により財産管理不十分な能力となった場合や年齢にかかわらず精神的障害等で財産管理が不十分な能力となった場合、これを法的に援助する制度があります。

(1)任意後見制度(任意後見契約に関する法律、家事審判法など)

(2)法定後見制度(後見・保佐・補助)(民法7条~20条、838条~876条の10、家事審判法など)
です。

4.後見制度の趣旨・理念

民法858条(2000年改正で創設)

「成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を行うに当たっては、成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない」とされています。

即ち、

(1)自己決定の尊重

(2)残存能力(現有能力)の活用

(3)ノーマライゼーション(地域で普通に暮らせる環境を整備すること)

が後見制度の趣旨・理念です。

そして、この趣旨・理念の実現のためには本人の権利擁護~必要かつ適切な福祉・医療、財産管理、所得保障、居住の確保、就労支援、社会参加etc~が必要です。

また、このためには、

→日常生活自力支援事業(社会福祉法社会福祉協議会)との連携も重要です。

→市町村長申立の活性化も必要です。

5.任意後見制度では何ができますか

(1)任意後見制度は、

本人が意思能力あるうちに、「事理弁識能力不十分な状況における自己の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務の全部又は一部を委託し、その委託に係る事務について代理権を付与する委任契約」(第2条)。公正証書での契約であること、任意後見監督人が家庭裁判所で選任されてはじめて活動できます。

(但し)

← 本人の行為を制限するものではありません

← 後見契約による取消権はありません。

→ 従って、本人の行為制限、取消権を得るためには法定後見制度を検討する必要があります。

この意味では任意後見制度は万能ではありません。悪徳商法などに引っ掛かった場合は、クーリングオフなど消費者保護法を駆使することになります。

飯田 昭 弁護士

(2)代理してもらう法律行為

ア 財産管理―預貯金の管理・払戻、不動産その他重要な財産の処分、賃貸契約の締結・解除

イ 身上監護―介護契約、入所契約、医療契約

ウ なお、上記に関する訴訟行為、本人が行った契約の取消・無効の主張等もできる

(3)実例(なお、将来型、移行型、即効型が考えられる)

・後見契約で、代理の範囲を特定する。

・着手金、各行為の事務手数料など細かく約束する

・書類の保管、郵便物の開封、財産処分の方法、○万円以上の支出、一ヶ月通算して○万円以上の支出など

・死後の事務委託として、葬儀、納骨、墓石建立、あるいは施設利用料の支払い、賃料の支払い、保証金の受領など

6.法定後見制度(後見・保佐・補助)では何ができますか

(1)どのような制度ですか

(1)後見人

ⅰ 「精神上の障害により事理を弁識する能力を常に欠く状態にあるものについて、家庭裁判所は、本人、配偶者・・の請求により後見開始の審判をすることができる。」(民法7条)

ⅱ 後見事務

・財産管理 包括的管理権・代理権をもつ(民法859条1項)

・身上監護 介護、施設の入退所、医療、教育、異議申立

高齢者虐待防止法、老人福祉法

・その他 取消権

(2)保佐人

ⅰ 「・・事理弁識能力が著しく不十分である者については・・」

ⅱ 保佐事務

・財産管理

a 民法13条1項各号の同意権

→ 同意無く本人が行った場合、取り消しうる。

b 取消権

c 代理権 特定の法律行為について付与される

財産管理・身上監護

(3)補助人

ⅰ 「・・事理弁識能力が不十分である者については・・」

ⅱ 申立に本人の同意が必要

ⅲ 補助事務

・同意権 同意を得ることを要する行為を審判で決める(民13条1項限定)。従って取消権はその範囲のみ。

・理権 特定の法律行為について代理権を付与

飯田 昭 弁護士

(2)後見人に誰がなっていますか(2007年32629件)

ア 財産管理―預貯金の管理・払戻、不動産その他重要な財産の処分、賃貸契約の締結・解除

7.相談例に回答

(相談例1)

状況と希望に応じて、任意後見か法定後見による対応が可能です。

(相談例2)

成年後見人の選任を家庭裁判所に申立てた方がよいでしょう。

8.弁護士の役割と費用

(1)役割

・財産や権利関係の紛争がある場合には、弁護士の役割が大きいと言えます。

・これまで経験した成年後見人の例

A 遺産紛争

B 施設

C 財産の費消(疑)

(2)後見人の費用について

・任意後見契約の場合→契約書に明示します。

・家庭裁判所の選任による後見人→年1回(もしくは2年に1回)家庭裁判所が決定します。

以上


愛する家族のために遺言書を書こう

寺本 憲治2011年6月4日

弁護士 寺本 憲治

※図表を交えたものは PDF でご覧ください。

1.なぜ遺言書を書くか?

自分の思う通りに財産を分けたい!

家族が争わないように!

皆で公平にわけてくれればいい?

2.遺言書で想いを伝えることができる!

→想いをこめた遺言書はトラブル回避につながる!

3.元気なうちに書く!

4.法定相続人は誰か?

(1)配偶者 ・・・ 常に相続人になる

(2)子 ・・・ 常に相続人になる

(3)親 ・・・ 子がいない場合に相続人になる

(4)兄弟姉妹 ・・・ 子も親もいない場合に相続人になる

【相続する遺産の割合】

(配偶者と子2人)  (1)配偶者1/2 (2)子1/4 (2)子1/4

(配偶者と親1人) (1)配偶者2/3 (3)親1/3

(配偶者と兄弟1人) (1)配偶者3/4 (4)兄弟姉妹1/4

5.遺言書の書き方例

寺本 憲治 弁護士

6.いろいろな遺言書

●遺産の分割を禁止する遺言書(5年を超えない期間)

例:一郎が大学を卒業するまで分割を禁止する。

●特定の相続人を廃除する遺言書

(虐待や重大な侮辱、その他著しい非行があった場合)

●特定の財産を条件付きで譲りたい場合の遺言書

例:姪の京都和子が20歳になったとき、次の財産を遺贈する。

→複雑な遺言書は専門家の点検でトラブル防止を

7.公正証書遺言

公証役場で公証人が間違いのない遺言書を作成し、原本を役場で保管してくれる制度。

・公証人

出張費を払えば出張も可能

・証人

2人以上の証人が必要。遺言者の身内は不可。証人は弁護士に依頼できる。

相続財産の価額
手数料
    100万円まで
    5,000円
    200万円まで
    7,000円
    500万円まで
   11,000円
   1000万円まで
   17,000円
   3000万円まで
   23,000円
   5000万円まで
   29,000円
     1億円まで
   43,000円
以下5000万円ごとに、130000円(3億円まで)、110000円(10億円まで)、8000円(10億円を超えるもの)を加算。

8.知っておきたいあれこれ

●財産を正確に確認する

→不動産登記簿謄本、固定資産課税証明書、預金通帳、株式、投資信託、事業用財産、保険金、ゴルフ会員権・・など

遺留分への配慮が必要

遺言執行者を指定すれば相続がスムーズに進む