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「セクハラ・パワハラ」市民のための法律セミナー・レジュメ

労働とセクシャルハラスメント

岩橋 多恵2012年6月13日

弁護士 岩橋 多恵

1 セクハラとは何か(定義)

最広義「他人に不快感を感じさせる性的な言動」
 →職場や学校など公的関係に限られず、親子兄弟間も含まれる。
被害者の性別は女性に限られない。
権力関係を利用したものに限るもの。
職場に限るもの(人事院規則)
「他の者を不快にさせる職場における性的な言動及び職員が他の職員を不快にさせる職場外における性的な言動」(人事院規則10-10)

※本稿では、雇用関係におけるセクハラ問題を中心に取り上げる

2 職場(雇用関係)におけるセクハラ問題

(1)男女雇用機会均等法における「セクハラ」<人事院規則における「セクハラ」

(2)雇用関係における「セクハラ」の2分類

  • 「対価型」
  • 「環境型」

(3)セクハラとは何か(具体例)→下記の具体例

◎重要なことは、あくまでも「例示」であること

※人事院規則「セクハラをしないようにするために職員が認識すべき事項についての指針」

(3・セクハラになり得る言動)参照

※「ジェンダー・ハラスメント」は、含まれるか?

仮に、セクハラに含まれないとしても、セクハラにつながっていく
 EX)「男のくせにいくじがない、女性なのに○○」等、

(4)セクハラの本質

=個人の尊厳(憲法13条)への侵害であること

3 職場のセクハラの問題点

労働者が弱い立場にあり、声を上げにくい。

毎日、数ヶ月ないし数年単位で関係が続き、任意に逃れられない。

声を上げることが不利益につながり、生活の基盤が断たれる

→労働者保護の見地から法整備
(均等法11条1項に基づく指針、人事院規則)

4 セクシャルハラスメントの被害

肉体的、精神的被害
 (→深刻な性被害の場合)

  • 不安、抑うつ、人間不信、仕事が手につかない、集中力低下、人前に出るのが怖い、
  • 頭痛、腹痛、不眠、過換気、音に過敏になる、パニック
  • 自責の念、自尊心の低下、自分が無価値だと思う、意欲の低下
    • 直接的な経済的損失 精神科などの受診による
    • 間接的な経済的損失―失職
    • 家庭崩壊

5 セクシャルハラスメント(広義)の発生原因・背景

(1)女性差別、男尊女卑の観念

  • 性別役割分担意識
    • 「男は仕事、女は家庭(女性は子を産み、家を守る存在という観念」
    • 「男が主、女は補助的」
  • 相手を性的な関心の対象として捉え、対等なパートナーと意識しないこと
  • 性に関する受け止め方には個人や男女間で差があることを十分認識していない

(2)権力関係(上司と部下、教授と大学院生、警察官と容疑者、医療従事者と患者、介護者と要介護者、宗教的指導者と信者、有名知事候補と選挙運動員など)

  • 職場における上下関係などの優越的地位を不当に利用し、性的言動をとること

6 セクシャルハラスメントに伴う責任

人格権の侵害(憲法13条「個人の尊厳」)

  • 民事上の責任
  • 懲戒事由該当
  • 刑事上の責任
    • 強制わいせつ罪、強姦罪、公然わいせつ罪、わいせつ物頒布罪

※場合によっては、労災・公務災害申請(責任追及というより被害救済)

7 加害者(間接的加害者も含めて)とならないために

→※5記載のセクハラの原因・背景を十分理解した上で行動する

8 セクハラを受けそうになったら・受けたら・目撃したら

(1)セクハラであることの指摘・拒否・抗議する

◎後に「合意があった」と言われることがよくある

◎明示しないことが、セクハラの継続性、潜在化→深刻な被害につながっていくことが多い

(2)拒否・抗議による不利益取扱いは違法であると自信を持つ

(3)「これはセクハラである」「セクハラは人権侵害である」と自信を持つ。自分を責めない。

(4)しかるべき人に相談する。一人で抱え込まない。

Ex)各種相談窓口、労働組合、同僚

(5)「自分さえ我慢すればいい」と思わない。第二・第三の被害を防ぐことは重要である。

(6)セクハラが継続する可能性がある場合

◎場合によっては、会社に申告し、配置換えをさせる(「分離」の重要性)

(7)被害の事後的救済のために

セクシャルハラスメントの責任追及のための証拠の確保

  • 会社に申告する際や相手方への申し入れを文書で行う
  • 録音(ICレコーダー)
  • 日記など

9 職場における事業主の責任と対策について

労働省の指針(「均等法指針3」参照)

雇用管理上配慮すべき事項

(1)事業主の方針の明確化及び周知・啓発
  1. 社内報などによる啓発
  2. 就業規則への明記など
    • 就業規則では、懲戒解雇の可能性もあることを示すなど
  3. 研修、講習
    • とりわけ、新人研修だけでなく、管理職者研修(社長も含めて)
    • 繰返の研修
(2)相談・苦情への対応

相談窓口の明確化

内容、状況に応じ適切かつ柔軟な対応

「均等法指針3(2)」の各1、2の外に
<以下のようなきめ細やかな配慮が必要>

相談のプライバシーの配慮、
窓口カウンセラー担当者(女性、複数、専門家など)
担当者のアドバイスが悪かったための被害拡大がないように。

(3)生じた場合の事後の迅速かつ適切な対応(「均等法指針3(3)」
  • 事実関係を迅速かつ正確に確認(※1)
  • 適正に対処(※2)

<事実確認のためのポイント、被害拡大防止のためのポイント>

正確な事実関係の把握に厳格なあまり、アドバイスのポイントや分離がおろそかにならないように

10 本当にセクハラをなくすには

「セクシャルハラスメントってなんでしょうか。」=それは、あなたが当然に受けてしかるべきRESPECT(尊重、尊敬)を受けないときです」(これは、FENで流されたスポット)

要するに相手の立場に立って、相手の人格を尊重することが基本であって行為に対する規則やべからず集の問題ではない。

教育の問題(ジェンダー教育)、お互いを尊重をすることのあたりまえさ。

まさに「個人の尊厳」=人格権(憲法13条)=人権の問題であることの認識


労働とパワーハラスメント

谷 文彰2012年6月13日

弁護士 谷 文彰

1 パワーハラスメントとは何か

(1) 定義

「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える、または職場環境を悪化させる行為」

「職場内での優位性」には、「上司から部下に行われるものだけではなく、先輩・後輩間や同僚間、さらには部下から上司に対してさまざまな優位性を背景に行われるものも含まれる」

(2) 被害と問題性

  • 「優位性」に基づいて行われるため、長期間にわたる可能性があり、被害者が声を上げにくい
  • 労働者の尊厳や人格を侵害し、意欲や自信を失わせ、職場での居場所も失わせるおそれ
  • 周囲の者もパワーハラスメントに接することによって仕事の意欲が低下し、能率が低下するおそれ
  • 行った者も周囲への悪影響によって職場の業績が悪化し、社内での信用の低下、ひいては懲戒処分や訴訟のリスク
  • 企業にとっても、能率・生産性の低下、人材の流出、使用者責任の追及やイメージダウンのおそれ
「もし、自分や家族がパワーハラスメントを受けたら」

(3) 相談件数

都道府県労働局への相談のうち、職場いじめ・嫌がらせに関する相談は3万件超

解雇・退職勧奨は関連するところが多い
→実際にはさらに多い?
精神障害の労災認定件数はせいぜい数十件
→労災申請の壁は高いと言われてきたが、昨年末、基準変更あり

2 パワーハラスメントの行為類型

(1) 身体的な攻撃

暴行・傷害
 →業務の遂行に関係があるかどうかは無関係

(1) 身体的な攻撃

暴行・傷害
 →業務の遂行に関係があるかどうかは無関係

(2) 精神的な攻撃撃

脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言
 →業務の遂行に関係があるかどうかは原則として無関係

(3) 人間関係からの切り離し

隔離・仲間外し・無視
 →業務の遂行に関係があるかどうかは原則として無関係

(4) 過大な要求

業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害
 →業務上の適正な指導との線引きが困難な場合も

(5) 過小な要求

業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと
 →業務上の適正な指導との線引きが困難な場合も

(6) 個の侵害

私的なことに過度に立ち入ること
 →業務上の適正な指導との線引きが困難な場合も

ただし、これですべてという趣旨ではない

3 パワーハラスメントの発生原因・背景

(1) 権力関係

セクシャルハラスメントと同様

(2) その他の要因

  • 企業間競争の激化による社員への圧力の高まり
  • 職場内のコミュニケーションの希薄化や問題解決機能の低下
  • 上司のマネジメントスキルの低下
  • 上司の価値観と部下の価値観との相違の拡大
  • その職場に何らかの問題がある場合

など

4 パワーハラスメントに伴う責任

(1) 民事上の責任

人格権の侵害による損害賠償責任

:労働契約法5条「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう必要な配慮をするものとする」
 →上司による当該命令が、業務の範囲を逸脱した合理性のない命令かどうかを、業務の必要性、不当な目的や動機などがあるか否かによって判断し、業務の範囲を逸脱したものである場合、パワーハラスメントをした者の民事責任が肯定される

会社の責任が認められる場合も

(2) 会社内での責任

懲戒事由に該当

(3) 刑事上の責任

5 裁判例


6 労災認定基準(参考)

(1) 一般的な労災の認定基準

次の1、2及び3のいずれの要件も満たす対象疾病は、労働基準法施行規則別表第1の2第9号に該当する業務上の疾病として取り扱う。

  1. 対象疾病を発病していること。
  2. 対象疾病の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること。
  3. 業務以外の心理的負荷及び個体側要因により対象疾病を発病したとは認められないこと。

また、要件を満たす対象疾病に併発した疾病については、対象疾病に付随する疾病として認められるか否かを個別に判断し、これが認められる場合には当該対象疾病と一体のものとして、業務上の疾病として取り扱う。

(2) パワーハラスメントに関係する具体的な認定基準

ア 達成困難なノルマが課された

例:客観的に、相当な努力があっても達成困難なノルマが課され、達成できない場合には重いペナルティがあると予告された

イ 退職を強要された

例:退職の意思のないことを表明しているにもかかわらず、執拗に退職を求められた
恐怖感を抱かせる方法を用いて退職勧奨された

ウ 配置転換があった
エ 非正規社員であるとの理由等により、仕事上の差別、不利益取扱いを受けた

例:非正規社員であるとの理由等による仕事上の差別、不利益取扱いの程度が著しく大きく、人格を否定するようなものであって、かつこれが継続した

(3) ひどい嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた

7 パワーハラスメントの対策と予防

セクシャルハラスメントと同様

例: 就業規則等に関係規定を明示、ガイドラインや指針の策定、
実態把握、研修、啓発活動、相談窓口や解決機関の設置

「職場のパワーハラスメントはなくさなければならない」という認識を会社、社員が共通にすることが肝要

→共通認識を出発点に、一人一人の尊厳や人格が尊重される職場に

以上