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「残業代・未払賃金の請求」市民のための法律セミナー・レジュメ

取り返せ未払い残業代

寺本 憲治2012年6月16日

弁護士 寺本 憲治

はじめに・・
 労働時間と健康問題、労働時間と家族的責任→残業時間は減らすべき

1.残業代とは?

  • 【法定労働時間】1週間に40時間、1日8時間(32条)
  • 【所定労働時間】労働契約書や就業規則に定められた労働時間

割増賃金となる残業代は法定労働時間を超えた就業について発生するのが原則

会社指示なら早朝出社も残業になる!

【深夜労働】

午後10時~午前5時に勤務した場合は割増賃金を請求できる(37条)
 (※地域や期間によっては午後11時~午前6時の場合もあり)

【休日出勤】

毎週少なくとも1回 or 4週間に4日以上 の休日(35条)
 ⇒労基法で定める休日に出勤した場合は割増賃金を請求できる(37条)

2.割増賃金

労働割増率
1 時間外労働(残業)25%以上
2 深夜労働25%以上
3 休日出勤35%以上

※ 1 + 2(残業が深夜に及んだ場合)
 →25+25=50%

※ 2 + 3(休日の深夜に勤務した場合)
 →25+35=60%

3.残業代逃れの隠れみの

1 役職手当

労基法41条

「監督若しくは管理の地位にある者、または機密の事務を取り扱う者は労働時間、休憩、休日についての規定を適用しない。」
→ 管理監督者には残業等は存在しない
ただし、
【管理監督者】
労働条件の決定やその他の労務管理について経営者と一体的な立場にある者
※ 役職名とは無関係!!

2 みなし労働者(38条の2)

  • 会社の外で仕事をする人 ex.営業
  • 自由裁量の余地の大きい仕事をしている人 ex.研究開発職

→会社は労働時間の管理をすることなく、所定労働時間の勤務とみなすことができる。

ただし、
出勤や退社の時刻、休憩等を社員が自分の裁量で決めていることが必要!

3 職務手当 ex.営業手当

「残業代は職務手当に含まれているから支払わない」と会社が主張するケース

  • 本来、残業代と職務手当は別物
  • その旨の規定がある場合でも、実際に算出した残業代の方が多い場合にはその差額分を請求できる。

4.労働審判制度

賃金不払いや解雇など、使用者と労働者の間で起こる個別の争いについて、迅速かつ実効性のある解決を図るための制度

1. 専門性

専門的な知識と経験を持つ委員が審判官とともに審理

2. 迅速性

原則として3回以内の審理で終結

3. 柔軟性

法律を踏まえながらも、当事者間の実情に即した迅速な解決を図る。

強制力あり!

5.残業代は勝ち取れる!

100万円以上の割増賃金の是正状況
年度企業数労働者数(人)是正支払額(万円)
平成136137132813818
平成1440363873723899
平成1511841946532387466
平成1614371691112261314
平成1715241679582329500
平成1816791825692271485
平成1917281795432724261
平成2015531807301961351
平成2112211118891160298

厚生労働省「平成21年度 賃金不払残業(サービス残業)是正の結果まとめ」より

6.残業代請求のために準備したい書類

1.タイムカードや出勤簿のコピー

 →ない場合は【勤務実態を証明できそうな証拠】を探す。

  • 勤務時間・内容等を記録した手帳や日記
  • 鉄道ICカードの履歴
  • 退社時に会社付近で購入しているもののレシート
  • 社内に書かれた帰社予定時刻の写真
  • 家族や同僚へ送った帰社時刻を示すメール

・・・など

 →なお、使用者には労働時間把握義務あり

2.給与明細書

3.就業規則・給与規定

4.労働契約書(雇用契約書)

7.その他

残業代など賃金の請求権は2年で時効消滅する。

 →過去2年分についてのみ請求可能

企業コンプライアンス(法令遵守)重視の流れ

 →未払残業代請求に追い風!

泣き寝入りを続けると後輩社員も同じサービス残業を強いられる。

以上


残業代請求事件の実情

藤井 豊2012年6月16日

弁護士 藤井 豊

会社は簡単には残業代を支払ってくるか?

  • 社内秩序への影響
  • 他の従業員からの請求
  • 同様の働き方をする他の従業員への対応
  • 予定外の人件費の支出による経営側の取り分の減少

近時の傾向

  • 支払能力に乏しい会社
  • 確信犯的な経営者 いわゆるブラック企業
  • 若い経営者、管理職等の法に対する無知
  • 脱法的な不払いの就業規則上の工夫

依頼を受けてから解決までの流れ

相談段階
  • 手持証拠の整理(タイムカード、給与明細、就業規則)
  • 請求すべき賃金の確定 「給与第一」の活用
委任契約
  • 委任契約書の作成(受任の範囲、弁護士報酬の確定)
  • 委任状
受任通知・交渉
  • 受任通知の送付→時効の中断
  • 証拠隠滅のおそれ→証拠保全手続
労働審判
  • 原則3回の審理
  • 2回目には和解案
  • 3回目に審判
  • 異議60%
  • 当事者の出廷が必要
  • 労働審判員
訴訟
  • より丁寧な事実認定
  • 解決まで時間を要することも
  • 付加金の請求
  • 当事者の出廷不要

ケース タイムカードの廃棄処理

事案

労働者は、自動車の点検、分解、整備、板金及び塗装を事業内容とする会社に勤務し、板金修理を担当していた。解雇事案から、未払い賃金の請求も加わった。タイムカードで時間管理がなされていたが、手元にコピーなし。

争点

  • 実労働時間の立証
  • タイムカードの証拠保全
  • セキュリティー会社の記録を弁護士会照会により取り寄せる

解決

  • 労働審判→訴訟
  • 請求額拡張 90万→280万
  • 会社の経営状態に鑑み、残業代のみの分割払いでの和解

ケース 事業所外労働

事案

労働者は、システムエンジニア。業務内容は、取引先に赴き、販売したシステムを導入する作業を行う。システムの導入の際に、深夜や休日の労働も多く、連続した長時間の業務についていた。時間外労働の一部未払いがあり、計算をしたところ、約450万円となった。タイムカードはコピーあり。

争点

事業所外労働

労基法38条の2
  1. 事業所外で労働したために「労働時間を算定し難いとき」、所定労働時間内の労働と見なす
  2. 当該業務の遂行に通常必要となる労働時間が所定労働時間を超える場合は、通常必要とされる労働時間の労働とみなす
  3. 通常必要とされる労働時間は労使協定で定めうる(協定は届出)

解決

  • 訴訟を選択
  • 被告弁護士交代
  • 第1回から退職を前提とした和解協議に入る。
  • 第3回期日で和解成立
  • 退職合意
  • 700万円の解決金
  • 社長が退職について遺憾の意を社員に対し表明

ケース 変形労働時間制

事案

某大手飲料メーカー子会社で自販機の飲料詰め替えの仕事に従事。1日をほぼ社外で過ごす外勤スタッフが200万円の残業代の請求を行った。タイムカードを本人がコピー持参。

  • 変形労働時間制とは、一定期間において、平均して週40時間以内にすることで、1日8時間、週40時間を超える賃金の抑制をしようとする制度。
  • 1ヶ月単位の場合、 1.就業規則又は労使協定 2.平均して1週間あたり40時間内 3.各日の所定労働時間を特定することが必要
  • 労使協定の要件は、
    1. 過半数を組織する労働組合か労働者の過半数を代表する者が労働者代表として
    2. 使用者との間で労使協定を締結する。
    3. この労働者代表の選出方法については、労働基準法施行規則に最低限のルールが定められている。法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であること。

解決

労働審判
ほぼ満額の請求が認められる

ケース 付加金、不法行為

事案

ちゃんこ鍋店で勤務していた6人の従業員がそれぞれ長い人で3年分の残業代請求をした。

この職場では労働時間の管理はオンライン上で管理されていた。
長い月では労働時間が300時間にも及ぶ過酷な労働環境の下、残業代は全く支払われていなかった。あまりに過酷な労働であるため、労働者が残業代の支払いを要求したところ、その後労働時間記録の改ざんが行われるようになり、訴訟に至った。

争点

  • 付加金
  • 不法行為責任 3年分の請求

解決

  • 訴訟
  • 判決では、未払賃金約1500万円、付加金は未払賃金の8割にあたる約1100万円の支払いを命じる。
  • 大阪高裁でも維持
  • 不法行為責任ついては、否定。

ケース 固定残業代

事案

飲食店の調理スタッフ。
労働者は、労働契約締結時の会社からの説明において、基本給14万円、調整手当8万円が毎月支払われる固定給与であり、これとは別に残業代が支払われると聞いていた。
残業代の支払いが一部しかなかったケース。
基本給を時給換算すると約800円となり、アルバイトよりも低額。
固定残業代は80時間相当の時間外手当 過労死ライン。
就業規則においては、調整手当は固定残業代として支給してする旨、明確に規定。
就業規則についての説明がなく、採用募集段階では誤解させる説明をしている。

争点

  • 手当の内容が労働契約の内容となっているか
  • 就業規則自体の効力
  • 周知されていたか

最後に

  • 具体的な請求額は個別のケースごとに大きく異なる。
  • 提供した労働に対する正当な対価
  • 職場の違法行為の是正
  • 残業時間の抑制