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「遺言のすすめ」市民のための法律セミナー・レジュメ

愛する家族のために遺言書を書こう

寺本 憲治

弁護士 寺本 憲治

【1】なぜ遺言書を書くか?

  • 自分の思う通りに財産を分けたい!
  • 家族が争わないように!
皆で公平にわけてくれればいい?

【2】遺言書で想いを伝えることができる!

【遺言書例1】全財産を姉に相続させる。
【遺言書例2】これまでよく介護をしてくれた姉に全財産を相続させる。苦労をかけましたね。

→想いをこめた遺言書はトラブル回避につながる!

【3】元気なうちに書く!

「まだまだ元気だし遺言なんて!」
「遺言書を書いてなんて言いにくいな・・」
↓数年後
「書く元気がない・・書きたくても手が震える・・」

【4】法定相続人は誰か?

  1. 配偶者・・・常に相続人になる
  2. 子・・・常に相続人になる
  3. 親・・・子がいない場合に相続人になる
  4. 兄弟姉妹・・・子も親もいない場合に相続人になる
【相続する遺産の割合】

【5】遺言書の書き方例

  • 丈夫な紙に、ペン書きが望ましい。
  • 間違えた場合、書きなおすのが無難。
  • 2枚以上になる時は割印を押す
  • タイトルは「遺言書」などわかりやすく
  • 全文を手書きで書く
  • 日付を入れる ※「吉日」は不可
  • 自分の名前を書き、印鑑を押す
  • 1人1通作成する(夫婦で共同の遺言書は禁止)

【6】いろいろな遺言書

●遺産の分割を禁止する遺言書(5年を超えない期間)
例:一郎が大学を卒業するまで分割を禁止する。

●特定の相続人を廃除する遺言書
(虐待や重大な侮辱、その他著しい非行があった場合)

●特定の財産を条件付きで譲りたい場合の遺言書
例:姪の京都和子が20歳になったとき、次の財産を遺贈する。

→複雑な遺言書は専門家の点検でトラブル防止を!

【7】公正証書遺言

公正証書遺言ってどんなもの?
→公証役場で公証人が間違いのない遺言書を作成し、原本を役場で保管してくれる制度。

  • 2人以上の証人が必要。遺言者の身内は不可。
  • 証人は弁護士に依頼できる。
  • 証人は遺言の内容を知ることになるので確実に信頼できる人に頼むことが必要!
  • 出張費を払えば出張も可能!
【公証人の手数料】

自筆証書と公正証書、どちらがいい?

●自筆証書遺言の欠点
  1. 作成に不備が発生する恐れ
  2. 遺言書の管理が難しい
  3. 相続人が検認の手続をする必要がある
○公正証書遺言の利点
  1. 作成に不備が生じない
  2. 公証役場が遺言書を管理してくれる
  3. 検認の必要がない
→不安がある場合は公正証書遺言が安心!
  • 遺言書作成に自信がない人
  • 複雑な遺言書を書きたい人
  • 保管に不安がある人
  • 争いごとが予想される人
  • 手の震えなど自筆での作成が難しい人

【8】遺留分に注意!

遺留分…相続財産のうち遺言で自由に処分できない部分

【遺言書例】「全財産を息子に相続させる。」
→娘から息子に遺留分減殺請求!
→配慮が必要!

遺留分の割合:相続人が誰かによって決まる

A 相続人が親のみ
→遺留分は相続財産の1/3
B それ以外の場合
→遺留分は相続財産の1/2
兄弟姉妹は遺留分なし!
【各自の遺留分の割合】
遺留分となる相続財産を各自の法定相続割合で分けたもの

【確認クイズ】

  1. 配偶者の遺留分の割合は?
    1. 配偶者と子が相続人の場合、配偶者の法定相続分は(1/2)
    2. 遺留分の割合は、(1/2)
    3. 配偶者の遺留分は、1の答×2の答=(1/4)
  2. 父の遺留分の割合は?
    1. 父と母が相続人の場合、父の法定相続分は(1/2)
    2. 遺留分の割合は、(1/3)
    3. 父の遺留分は、1の答×2の答 =(1/6)

【9】遺言執行者

【遺言執行者の指定がない場合】

→相続人による協議

【遺言執行者を指定した場合】
遺言執行者

  • 遺言書に沿って手続を行う人
  • 相続人全員の同意がなくても手続できる
  • 未成年者や破産者は不可
遺言の執行がスムーズに行える!
相続人はお互いの利害が絡む
→ 遺言執行者にすることは避けた方がよい

【10】財産の把握は正確に!

  • 不動産登記簿謄本
  • 固定資産税課税証明書
  • 預金通帳
  • 株式
  • 投資信託
  • 事業用財産
  • 保険金
  • ゴルフ会員権

  ・・・などなど

【11】特に、遺言が必要な場合(遺言がないと困る場面)

例えば、法定相続人はいないが、(1)内縁の妻の場合や(2)特別縁故者の場合など・・


遺言と「付言」でトラブル回避

飯田 昭

弁護士 飯田 昭

(ケースⅠ) このようなケースは絶対に遺言が必要です

70歳になるAさんは、30年前に妻と死別しましたが、亡妻との間に2人の子(長男、次男)がいます。その後、20年前からは、内縁の妻と一緒に暮らしています。入籍はしておらず、今後も入籍はしないつもりです。

Aさんの財産としては、北区にお住まいの自宅(3000万円相当)と、預貯金が3000万円ほどあります。Aさんとしては、家は内縁の妻に渡し、預貯金については、内縁の妻と2人の子で、3分の1ずつにして欲しいと考え、内縁の妻にも、長男・次男にも伝えていました。

ところが、ある日、脳梗塞で倒れ、意識は十分には回復せず、半年後には肺炎を併発して帰らぬ人となります。

【最悪のパターン】

…Aさんは、内縁の妻にも、2人の子にも口頭で意向を伝えていたため、子どもたちは納得してくれるだろうと思って、遺言は作成していませんでした。

(ところが、Aさんの死後)

長男、次男にはそれぞれ進学期を控えた子どもがいて、家計は大変で、内縁の妻には相続分が無いことを知っている長男・次男の妻の意向もあり、長男・次男は、(1)預貯金は長男・次男で1500万円ずつ分けること、(2)家も処分して内縁の妻には100万円だけ渡し、残りは2人で分けることを主張し、結局内縁の妻は家を追い出されてしまいました。

【通常の遺言を書いていたが…】

…Aさんは、家を内縁の妻に遺贈すること、預貯金は3等分し、3分の1を内縁の妻に遺贈し、3分の1を長男、3分の1を次男に相続させるとの遺言を残しました。

(Aさんの死後)

長男・次男は、上述の理由から、それぞれ1500万円の遺留分があることを主張し、内縁の妻に支払いを求め、内縁の妻は長男・次男に500万円ずつ支払わざるを得ませんでした。

【このような遺言を書いていれば、子どもたちも納得し、円満に終わったかも】

Aさんは、以前地域のマンション問題でお世話になったI弁護士に相談し、I弁護士の助言に基づき、「付言」付きの遺言(本文は上記と同じ)を公正証書で作成してもらい、あわせて、I弁護士には証人と遺言執行者になってもらいました。

遺言の付言として、長男、次男に次の通り聞いてほしい。

(付言の要旨のみ紹介します)

私は、病気で亡くなった君たちの母さんを生涯愛していたため、生涯独身でいようと誓った。だから、20年前から同居している●●さんとは、戸籍は一緒にしなかった。そして、●●さんのことは、君たちのお母さんの次に愛しているし、本当に感謝している。

彼女もここ数年は体調が悪く、住むところと生活費は残してあげるのが、私の努めである。君たちには、ローンは残っているだろうが、住むところはある。

どうか、家と預貯金の3分の1を●●さんに渡すことについて、了解してあげてほしい。

遺言執行者は、地域のマンション問題で以前お世話になったI弁護士にお願いしているので、どうか、I弁護士からも私の思いを聞いてほしいし、私の死後、●●さんと君たちがそれぞれ、どうか仲良くやってほしい。

(ケースⅡ)
京都市中京区の山鉾町にお住まいのBさんの場合はごく普通の家族構成ですが、それでも遺言が必要なのです

80歳になるBさんには、京都市中京区の市街地に、先祖からの町家があります。祇園祭の山を出す町内の一つで、不動産の価格は約4000万円です。

Bさんには、長男と長女がいますが、会社員の長男は右京区にマンションを借りて家族で住んでおり、長女は結婚して岡山に住んでいます。妻は5年前に亡くなり、Bさんは一人暮らしですが、これまでは大変元気で、長年祇園祭りの神事係として巡行にも裃(かみしも)を着て参加してきましたが、先日軽い脳出血で倒れてしまいました。幸い近所の人がすぐに見つけてくれて短期間の入院で済みましたが、在宅で要介護になりました。

Bさんとしては、町内の山の神事係を勤めてきたこともあり、地域(町内)に強い愛着があり、なんとしても町家を残したいとの思いを持っており、また長男には将来は家を継いでもらいたいと思っており、長男もそのつもりでいます。預貯金は、家のリフォームで1000万円以上使ったため、残りは1000万円だけです。

【最悪のパターン】

…Bさんは、長男と長女がまさか相続問題でもめることはないと思い、口頭で、子どもたちに「家は長男のものにしてくれ。預金は半分ずつ分けてくれ」と言っていましたが、遺言は作成していませんでした。

(ところが、Bさんの死後)

実は、長女の夫がリストラで職を失い、長女の3人の子どもの教育費を支払うのが大変で、長女としては、子どものために、2分の1の権利(2500万)を要求せざるを得ない立場だったのです。

結局町家を処分して、遺産を半分に分けることになってしまいました。

【通常の遺言を書いていたが・・・】

…区役所で無料法律相談した弁護士のアドバイスを受け、遺留分があるため、町家を長男に譲る場合には、長女の遺留分(1250万)を考慮し、「不動産は長男、預貯金については長女」とする遺言が作成されました。

(Bさんの死後)

長女は上述の理由からそれでも不満で、250万円について、長男に「遺留分減殺請求権」を行使しました。実は長男も収入が減ったうえ、2人の子どもの教育費がかさみ、長女に250万円の遺留分を払うことができず、結局、町家を処分せざるを得なくなりました。

【このような遺言を書いていれば、長女も納得し、円満に終わったかも】

…Bさんは、以前地域のマンション問題でお世話になったI弁護士に相談し、I弁護士の助言に基づき、次のような遺言を公正証書で作成してもらい、あわせて、I弁護士には証人と遺言執行者になってもらいました。

遺言の「付言」として、長男、長女に次の通り聞いてほしい。

(付言の要旨のみ紹介します)

(町内・祇園祭り・町家への思い)

・長男、長女へ

君たちの生まれ育った●●町の町家は、私の祖父、つまり君たちの祖祖父が滋賀県から出てきて、明治の初めに建てたものです。町内は祇園祭りの○○山を出す町内で、私の祖父も、父も、そして私も祇園祭りの神事係を務めてきました。この町家は、何度も手を入れてきましたが、10年前に1000万円をかけて本来の形に修復したのも、将来にわたって、この町内で、住み続けて欲しいからです。ここ10年ほどは、長男も祇園祭りの準備や巡行には参加してくれ、孫も囃子方に参加してくれて、感謝しています。

長女には、遠いのにたびたび来てくれて感謝しています。祇園祭りの際に皆で集まれる場所としても、どうか、この町家を残してください。

・長女へ

本当はもっと多額のお金を残してあげればよいのですが、そこまで甲斐性がありませんでした。家計は大変でしょうが、どうか、長男とこれからも仲良くしてください。また、この町家は、長女の子どもたちにとっても、祇園祭りには帰る場所として残してください。

・遺言の証人と執行をI弁護士にお願いしたのは、争いごとのためではなく、以前、町内のマンション建設問題でお世話になったI弁護士なら、町家を維持する方向で考えてもらえたからです。わからないことがあれば、何でもI弁護士に聞いてください。