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「遺言のすすめ」市民のための法律セミナー・レジュメ

高齢者等の財産を守るために

【1】相談例

(相談例1)


母は3年前に亡くなり、実家の京都で一人暮らしの父のことが心配です。父には自宅の他、かなりの預貯金がありますが、最近はかなり痴呆が進んできています。

私は一人息子で、関東に仕事、家庭があり、京都で生活することはできません。

介護については、将来は施設に入れるように準備するつもりですが、父の財産の管理をしてもらうには、どうしたらよいでしょうか?

(相談例2)


叔父が亡くなり、叔母は京都で一人暮らしでしたが、痴呆が進んできたので、老人ホームに入居させました。子供はおりません。

叔母には妹がおり、私はその長女で、叔母には、小さい頃からずーっとかわいがってもらいました。

ところが、最近になって、叔父の弟が、叔母の家に入りこんでいると聞きました。その人は、定職にもつかず、叔父は生前から気をつけるよう言っていた人です。

叔母の通帳の一つは、施設の支払のため、私が預かっていますが、他にも、預貯金や株式、貴金属などがかなりあるはずです。

叔母の財産を守るためには、どうしたらよいでしょうか?

【2】財産管理とは?

民法859条1項

(1)貯金

(2)年金

(3)役所への届出

(4)税務申告

(5)不動産管理

(6)身上関連契約(介護、施設、診療etc)

(7)居住用不動産の処分(家庭裁判所の許可)

(8)日常生活自力支援事業(社会福祉法)との連携

(9)生活保護受給

【3】財産管理の必要性とその制度

高齢により財産管理不十分な能力となった場合や年齢にかかわらず精神的障害等で財産管理が不十分な能力となった場合、これを法的に援助する制度があります。

(1)任意後見制度(任意後見契約に関する法律、家事審判法など)

(2)法定後見制度(後見・保佐・補助)(民法7条~20条、838条~876条の10、家事審判法など)
です。

【4】後見制度の趣旨・理念  民法858条(2000年改正で創設)

「成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を行うに当たっては、成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない」とされています。

即ち、

(1)自己決定の尊重

(2)残存能力(現有能力)の活用

(3)ノーマライゼーション(地域で普通に暮らせる環境を整備すること)

【5】任意後見制度では何ができますか

(1)任意後見制度は、

本人が意思能力あるうちに、「事理弁識能力不十分な状況における自己の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務の全部又は一部を委託し、その委託に係る事務について代理権を付与する委任契約」(第2条)。公正証書での契約であること、任意後見監督人が家庭裁判所で選任されてはじめて活動できます。

(但し)

← 本人の行為を制限するものではありません

← 後見契約による取消権はありません。

→ 従って、本人の行為制限、取消権を得るためには法定後見制度を検討する必要があります。

この意味では任意後見制度は万能ではありません。悪徳商法などに引っ掛かった場合は、クーリングオフなど消費者保護法を駆使することになります。

(2)代理してもらう法律行為

ア 財産管理―預貯金の管理・払戻、不動産その他重要な財産の処分、賃貸契約の締結・解除

イ 身上監護―介護契約、入所契約、医療契約

ウ なお、上記に関する訴訟行為、本人が行った契約の取消・無効の主張等もできる

(3)実例(なお、将来型、移行型、即効型が考えられる)

  • 後見契約で、代理の範囲を特定する。
  • 着手金、各行為の事務手数料など細かく約束する
  • 書類の保管、郵便物の開封、財産処分の方法、○万円以上の支出、一ヶ月通算して○万円以上の支出など
  • 死後の事務委託として、葬儀、納骨、墓石建立、あるいは施設利用料の支払い、賃料の支払い、保証金の受領など

【6】法定後見制度(後見・保佐・補助)では何ができますか

(1)どのような制度ですか

(1)後見人

ⅰ 「精神上の障害により事理を弁識する能力を常に欠く状態にあるものについて、家庭裁判所は、本人、配偶者・・の請求により後見開始の審判をすることができる。」(民法7条)

ⅱ 後見事務

  • 財産管理 包括的管理権・代理権をもつ(民法859条1項)
  • 身上監護 介護、施設の入退所、医療、教育、異議申立
    高齢者虐待防止法、老人福祉法
  • その他 取消権

(2)保佐人

ⅰ 「・・事理弁識能力が著しく不十分である者については・・」

ⅱ 保佐事務

  • 財産管理 a 民法13条1項各号の同意権
    → 同意無く本人が行った場合、取り消しうる。
    b 取消権
    c 代理権 特定の法律行為について付与される
    財産管理・身上監護

(3)補助人

ⅰ 「・・事理弁識能力が不十分である者については・・」

ⅱ 申立に本人の同意が必要

ⅲ 補助事務

  • 同意権 同意を得ることを要する行為を審判で決める(民13条1項限定)。従って取消権はその範囲のみ。
  • 代理権 特定の法律行為について代理権を付与

※クリックすると大きな画像がご覧いただけます。

(2)後見人に誰がなっていますか(2007年32629件)

親(28・2%)、子(21・3%)、兄弟姉妹(18・2%)、配偶者(6%)、
弁護士(5・2%)、法人もあります。

【7】相談例に回答

(相談例1)

状況と希望に応じて、任意後見か法定後見による対応が可能です。

(相談例2)

成年後見人の選任を家庭裁判所に申立てた方がよいでしょう。

【8】弁護士の役割と費用

(1)役割

  • 財産や権利関係の紛争がある場合には、弁護士の役割が大きいと言えます。
  • これまで経験した成年後見人の例
  1. 遺産紛争
  2. 施設
  3. 財産の費消(疑)

(2)後見人の費用について

  • 任意後見契約の場合→契約書に明示します。
  • 家庭裁判所の選任による後見人→年1回(もしくは2年に1回)家庭裁判所が決定します。

財産管理のいろんな形。運用の実際と選択の仕方

村山 晃

弁護士 村山 晃

1.財産管理のいろんな形

自身のタンス預金から、裁判所の手を借りる法定後見まで、いろいろあります。

これまでは、あまり後見制度は、利用されてきませんでした。

大半は、銀行等に預金をするという方法で、自身のお金の管理をしています。ただ、金融機関は、お金を預かるだけですから、預けた預金について、さらに誰かに管理をしてもらうという必要が生まれてきます。

近親者が、もっとも一般的ですが、弁護士に管理をゆだねる方、さらに任意後見契約をされる方もおられます。

誰が、何が、安心できるかがポイントでしょう。

2.法定後見が必要となる場合

法的な手続を取らずに近親者に頼むのが安心である場合が多く、かつ簡便なのですが、(1)近親者間に争いがあったり、不適切な方の場合、(2)対外的に法律的な契約行為を求められ、後見人でないとできない場合、には、法定後見制度を使わざるを得ません。

3.後見は、少し面倒で、かなり窮屈。後見人自身もちょっと大変。

後見制度を活用するには、裁判所が求める書類を準備して、申し立てをし、審判をしてもらう必要があります。

ポイントは、医師の診断書です。裁判所が求める診断書のフォームがありますから、それに即して、できるだけ丁寧に書いてもらうことが大切です。

また、誰を後見人にするかは、裁判所が決めます。必ずしも自身の意向通りとはいきません。そして、後見人になると裁判所が求める報告を定期的に行う必要があります。

後見人は、財産管理だけでなく身上監護も任務になっています。

また、財産の額が多くなると、親族が後見人になると、後見監督人というのを裁判所が選ぶことがあります。いずれにしても、後見制度を利用すると、裁判所に監視してもらって安心という面と同時に、少し窮屈になってくることがあります。

4.もう少し、事実上の管理と、法定後見との違い

後見は、そうした面倒な制度ですが、管理をする側からしても、安心できる面があります。

懸命に親の介護をし、親のお金も使いましたが、自身のお金も使ったりしました。亡くなった後、そうしたお金の使い道が問題になることがあります。「親のお金が足りない」「お金や労力を使ったというが、中身が分からないから考慮できない」などなど、相続人でもめるのです。

後見制度だと、そうしたお金の流れは透明になるし、頑張った分については、「報酬」という形で、生きている内に精算ができます。争いがなくなります。

5.後見制度では、どのようにして被後見人を守ってくれるのか

裁判所が1年ないし2年に一度、後見人に財政報告を出させて、変なお金の使い方をしていないかチェックします。また、上に書きましたように、後見監督人をつけて、さらに監督を強化することもあります。

それでも、不適切な事例は散見されます。人間の行うことなので。

6.後見を急ぐ場合

財産が散逸する危機的状況があり、本人では、守りきれない時に、通常の後見制度の申立では、時間がかかって間に合わないことがあります。

裁判所では、保全制度があり、財産管理人を選任する場合と、後見そのものを仮に開始させる場合があります。

一刻も早く弁護士の門を叩くべきでしょう。

7.後見・保佐・補助は、誰がどのように選択する。

制度の適用を受けようとする人の選択にある程度はゆだねられますが、基本は、先の説明のとおり、本人の認識力・判断力が、どのような状態かで決まります。

これも、裁判官の考え方で一定左右されますが、後見の適用を広く認めていこうという傾向にあるように思われます。

8.親族は、どのように関与できる

申し立てる権利があります。自身が後見人に名乗りをあげたりします。また、不適切な人が候補者に上がっていたりすると、逆に、その人にダメだしができます。

9.申し立ては、誰に頼む

親族等ご自身で行うことも可能ですが、できれば、弁護士を依頼した方が、万事スムーズに進むと思います。

10.弁護士は、どのように財産を管理してくれる

後見の手前で、財産管理を弁護士に依頼される方も増えています。もっとも、よほど信頼関係が強いことが前提になります。また、弁護士にも複数で関与してもらって、相互に監視する役割を果たしてもらうことなども有用です。

1年に一度とか期限を決めて管理して貰っている財産の状況をチェックすることなどが必要です。費用もきっちりと決めておきましょう。いざとなった時には、後見の申立も頼んでおけば良いのです。

その形を整えたのが、任意後見契約ですが、これもちょっと面倒です。

11.後見人がつくと被後見人は何もできなくなるのか

あくまでも被後見人の権利を守る制度なので、被後見人の意思が確認できれば、それが最優先されます。

補助などの方が、「被」となった人の権限が大きいので、どのような制度が良いのか、今一度検討しましょう。

12.制度も生きもの、裁判官の考え方も変わる

後見制度は、制度としては、同じはずですが、運用の仕方などは、種々の要因で変わっていきます。裁判官の考え方一つでも変わります。特に、不正事件などが起こると神経をとがらせます。

年金の制度や、介護の制度も変わります。相続税の制度も変わります。すべてを把握することは難しいことですが、財産を管理する人、される人、介護する人、される人、後見する人、される人の思いをできるだけかなえられるよう、私たちもいろんな工夫と努力を積み重ねていきたいと思っています。