あなたのために全力で 暮らしと人権を守って48年 京都最大の法律事務所(弁護士19人、事務スタッフ25人) 法律でお悩みの方はお気軽にご相談ください。0120-454-489

「かしこい遺言の書き方~遺言と相続税のポイント」市民のための法律セミナー・レジュメ

かしこい遺言の書き方

浅野 則明

弁護士 浅野 則明

1 遺言は何のために書くのか

〇自分が築き上げてきた財産を誰に引き継いでもらうのか決めておきたい。

〇親兄弟の争いという不幸な事態を招かないようにしたい。

もし、遺言がなかった場合はどうなるか。

⇒民法に従って、法定相続人が各自の相続分に従って相続することになる。

2 法定相続人と法定相続分

〇法定相続人は誰か

〇法定相続分はどうなっているか

〇代襲相続の場合

(1) 相続開始時に子が死亡している場合

 →① 子の直系尊属(つまり孫)が相続人となる

 →② 相続分は、子の相続分をそのまま受け継ぐ

(2) 相続開始時に兄弟姉妹が死亡している場合

 →① 兄弟姉妹の子(つまり甥・姪)が相続人となる

 →② 相続分は、当該兄弟姉妹の相続人をそのまま受け継ぐ

3 遺言の種類(どんな遺言がある?)

  1. 自筆証書遺言(民法968条)
    1. 内容すべてを自分の手で(自筆)で書き(ワープロはダメ!)
    2. 作成日付を入れ(自署)
    3. 署名をして
    4. 印を押す
  2. 公正証書遺言(民法969条)
    公証人役場で公証人に作成してもらう
  3. 秘密証書遺言(民法970条)
    遺言内容を秘密にしておきたい場合に使われる
    1. 遺言者が署名押印する(遺言内容は自署でなくてもよい)
    2. 遺言書を封入し、封印する(印鑑は同一)
    3. 公証人と証人2人の面前に提出し、自己の遺言書であることを申述する
    4. 公証人の記載と公証人、遺言者、証人が署名・押印する

4 遺言のできる事項(遺言の範囲)は何か

(1) 遺言ができる事項

遺言でなしうる事項(遺言事項)は限定的であり、遺言事項以外の事項を遺言で意思表示しても法律上の効果はない。

  • ×借財する
  • ×抵当権を設定する
  • ×相殺する
  • ×相続人を指定する
  • 〇債務免除(一種の遺贈と解される)

法定遺言事項

  1. 認知
  2. 遺贈
  3. 未成年者の後見人・後見監督人の指定
  4. 相続人の廃除と廃除の取消
  5. 相続分の指定・指定の委託
  6. 遺産分割方法の指定・指定の委託
  7. 遺産分割の禁止
  8. 相続人の担保責任の定め
  9. 遺言執行者の指定・指定の委託
  10. 遺贈の減殺の順序・割合の指定
  11. 祭祀主宰者の指定
  12. 持戻免除の意思表示
  13. 保険金受取人の変更

(2) 法定遺言事項以外の事項

  • ア 単に遺言者の希望を述べるもので、遺言としての法的効果を持たない。「付言」として末尾に記載することがある。
     ・葬儀の執行、墓標の建立、納骨の指示、遺言の動機・心情、感謝の言葉等
  • イ 遺言としての法的効果を持たないが、法的意味のある「付言」
     ・特別受益の範囲(生前贈与等)

5 自筆証書遺言はこう書く

(1) 日付

全くない× 年月だけ× 吉日×

還暦の日〇 満70歳の誕生日〇

(2) 署名・押印

氏のみ〇 名前のみ〇 ペンネーム〇 芸名〇 屋号〇

実印〇 認印〇 拇印〇 花押×

(3) 加除・訂正の方法

変更の場所を指示し、変更した旨を付記して、署名し、変更箇所に押印する(民法968条2項)。

6 公正証書遺言とはどんなもの?

【公証人の手数料】

相続財産の価額手数料
100万円まで5,000円
200万円まで7,000円
500万円まで11,000円
1000万円まで17,000円
3000万円まで23,000円
5000万円まで29,000円
1億円まで43,000円
以下5000万円ごとに、13,000円(3億まで)、11,000円(10億まで)、8,000円(10億を超えるもの)を加算。

7 自筆証書遺言と公正証書遺言、どちらがいい?

自筆証書遺言

利点
  1. 自分で簡単に作成できる
  2. 書いたことや内容を秘密にできる
欠点
  1. 作成に不備が発生し、無効になる危険がある
  2. 遺言書の管理が難しい(紛失・隠匿・改変の恐れ)
  3. 相続開始後、家庭裁判所で検認手続をする必要がある

公正証書遺言

利点
  1. 作成に不備が生じない(公証人のチェック)
  2. 自分で文字の書けない人も遺言ができる
  3. 公証人役場が遺言書を管理してくれる
  4. 家庭裁判所での検認の必要がない
欠点
  1. 公証人が関与するので手続が煩雑となる
  2. 公証人の手数料が必要となる
  3. 証人(立会人)を2人必要とする
  4. 遺言内容を秘密にできない

→不安がある場合は公正証書遺言が安心!

  • 遺言書作成に自信がない人
  • 複雑な遺言書を書きたい人
  • 保管に不安がある人
  • 争いごとが予想される人
  • 手の震えなど自筆での作成が難しい人

8 「相続させる」という文言の意味

相続人に対しては「相続させる」と記載し、相続人以外に対しては「遺贈する」と記載する。

利点
  1. 不動産の場合、相続人が単独で所有権移転登記手続が可能となる
    →「遺贈する」の場合、全相続人と受遺者との共同申請となる
  2. 登録免許税が安くなる(5分の1となる)
    →相続の場合4/1000、遺贈の場合20/1000
    ただし、法定相続人に対する遺贈の場合は4/1000
  3. 農地の場合、都道府県知事(農業委員会)の許可がいらない
  4. 借地権や借家権の場合、賃貸人の承諾がいらない

9 遺留分には注意しなければならない!

遺留分(いりゅうぶん)…相続財産の内、兄弟姉妹以外の相続人に保障されている部分

10 遺言執行者とは

  1. 遺言執行者とは、

    遺言の内容の実現のためには一定の行為を必要とする場合があり、遺言の執行を行う必要がある場合、それを行う職務と権限をもつ者をいう。

    *必須事項-①認知、②推定相続人の廃除・取消

  2. 遺言による遺言執行者の指定

    無用な紛争を防止し、遺言内容の早期実現のためには、弁護士を指定する。

  3. 遺言執行者をおくメリット

    遺言の執行事務がすべて遺言執行者に集中し、相続人が遺産の管理処分権を失うことになる結果、相続人は遺言の執行を妨害することができない。

  4. 遺言執行者がいない場合

    利害関係人が家庭裁判所に遺言執行者の選任を申し立てる(民法1010条)。

相続税対策の方向性は?

京都会計 税理士 三浦 幹雄

1 相続税対策の方向性は?

(1)相続財産を減らす

①生前贈与

親などの被相続人が、子供や孫に「贈与」を行って相続財産を減らすことによって、相続人が支払う「相続税」を減らすことができます。
また、贈与を受けた人は資金を納税資金として、活用することもできます。

「贈与」とは
 当事者の一方が自分の財産を無償で相手に与える意思表示を行い、それを相手方が受託することによって成立する契約のことです。

②贈与税の計算方法

(一年間に贈与された財産の合計額-110万円)× 贈与税率 = 贈与税額

現金400万円を父親から贈与された場合

 400万円-110万円 = 290万円

 290万円 × 15% - 10万円 = 33.5万円(収める贈与税)

父親から現金300万円と、母親から現金200万円を贈与された場合(受贈者は20歳以上)

 300万円+200万円 = 500万円

 500万円-110万円 = 390万円

 390万円×15%-10万円 = 48.5万円(収める贈与税)

③確実な贈与、税務調査で否認されないために
  1. 贈与契約書を作成する
  2. 振り込みなど贈与の事実を通帳などに残す
  3. 通帳の印鑑は各人で変え、通帳、印鑑の管理は受贈者が行う

(贈与契約書の例)
祖父○○太郎が成年の子○○一郎に現金200万円を贈与する場合

贈与契約書

贈与者○○太郎(以下、甲という)は、受贈者○○一郎(以下、乙という)に、現金200万円を贈与することを約し、乙はこれを承諾した。また、甲は当該金額を平成○年○月○日までに乙の下記口座に振り込むものとする。

○○銀行○○支店 普通預金口座○○○○  口座名義人 ○○一郎

平成○年○月○日

(贈与者)甲 住所
  名前  ○○太郎    印

(受贈者)乙 住所
  名前  ○○一郎    印

祖父○○太郎が未成年の孫○○一郎に現金200万円を贈与する場合

(父○○次郎 母○○花子)

贈与契約書

贈与者○○太郎(以下、甲という)は、受贈者○○一郎(以下、乙という)に、現金200万円を贈与することを約し、乙の親権者(父○○次郎 母○○花子)はこれを承諾した。また、甲は当該金額を平成○年○月○日までに乙の下記口座に振り込むものとする。

○○銀行○○支店 普通預金口座○○○○  口座名義人 ○○一郎

平成○年○月○日

(贈与者)甲 住所
  名前  ○○太郎    印

(受贈者)乙 住所
  名前  ○○一郎    印

(受贈者の親権者)住所
  名前  ○○次郎    印

(受贈者の親権者)住所
  名前  ○○花子    印

④毎年贈与する場合

(国税庁のホ-ムペ-ジ)

Q 親から毎年100万円ずつ10年間にわたって贈与を受ける場合には、各年の受贈額が110万円の基礎控除額以下ですので、贈与税がかからないことになりますか。

A 各年の受贈額が110万円の基礎控除額以下である場合には、贈与税がかかりませんので申告は必要ありません。
 ただし、10年間にわたって毎年100万円ずつ贈与を受けることが、贈与者との間で約束されている場合には、1年ごとに贈与を受けると考えるのではなく、約束をした年に、定期金に関する権利(10年間にわたり毎年100万円ずつの給付を受ける権利)の贈与を受けたものとして贈与税がかかりますので申告が必要です。
 なお、その贈与者からの贈与について相続時精算課税を選択している場合には、贈与税がかかるか否かにかかわらず申告が必要です。

これは事例は「1000万円を10年に分けて贈与する」ということ
「毎年100万円の贈与を10年間続けた結果、1000万円の贈与になった」こととは違います。

⑤贈与税を支払っても損にはならない

相続税との比較によっては、贈与税の最も低い税率(1年間につき310万円まで)で贈与しても、まだ得である可能性があります。

具体例
  5億円の相続財産  相続人が子供3人
  3人の子供に10年にわたり一定額を贈与する

  • イ、一人につき110万円の贈与をする
      1年間で330万円
      10年間で3300万円が移転
      贈与税は0円
  • ロ、一人につき710円の贈与をする
      1年間で2130万円
      10年間で2億1300万円が移転
      贈与税は合計2700万円

相続税を支払う場合と比較
  贈与を行わない場合の相続税は約1億2979万円
  一人につき710万円の贈与を10年間行った場合の相続税は約5069万円
  1億2979万円-(2700万円+5069万円)=5210万円→得をしたことになる

一人につき110万円の贈与を10年間行った場合の相続税は約1億1659万円
  1億2979万円-(0円+1億1659万円)=1320万円→得をしたことになる

⑥相続開始前3年以内の相続人に対する贈与は相続税の計算対象となる

「相続開始前3年以内の相続人に対する贈与は、相続財産に取り込まれて相続税が計算されます。
ただし、孫などの「相続人以外」に対する贈与は、相続開始前3年以内でも相続財産に取り込まれることはありません。

⑦相続時精算課税とは

祖父母、または親(贈与した年の1月1日において60歳以上)から、子供や孫(贈与を受けた年の1月1日において20歳以上)へ贈与した場合に、子供や孫が相続時精算課税を選択した場合、贈与税の特別控除2500万円に達するまでは、年をまたいで贈与しても贈与税はかかりません。2500万円を超えた場合には、超えた部分の金額に対して20%の贈与税がかかります。ただし、贈与者が死亡した際、贈与財産は「贈与時の価格」で相続財産に加算し相続税を計算します。

具体例
  3000万円の贈与をし、100万円の贈与税を支払った
  (3000万円-2500万円)× 20%=100万円

・相続発生時に相続税を計算したら、相続税が50万円
   50万円-100万円=△50万円 → 還付50万円

・相続発生時に相続税を計算したら、相続税が150万円
    150万円-100万円=50万円 → 納付50万円

この制度を使って得するのは贈与時の価格が相続時の価格より小さい場合です。

⑧婚姻期間20年以上の配偶者に自宅を贈与する

婚姻期間20年以上の配偶者に自宅の土地建物(自宅を購入するためのお金でもよい)を贈与した場合、2000万円までは贈与税がかかりません。

また、相続開始前3年以内の贈与であったとしても相続税の対象となりません。

婚姻期間20年とは、婚姻の届け出があった日から贈与の日までで判定します。入籍していない期間は含まれません。

具体的な手続き

  • イ、贈与する土地建物の評価
  • ロ、贈与契約書の締結
  • ハ、不動産の登記
⑨住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税について

平成27年1月1日から平成31年6月30日までの間に、父母や祖父母などの直系尊属から住宅取得等のため資金の贈与を受けた場合、住宅取得等資金のうち一定金額について贈与税が非課税となります。

各年分の非課税限度額は、次の表のとおりです。

平成27年1月1日から平成31年6月30日までの間に住宅取得等資金を贈与により取得した場合における受贈者1人についての非課税限度額は、住宅の種類や住宅用家屋の取得等に係る契約の締結がいつになるかにより異なります。

イ 下記ロ以外の場合

住宅用家屋の取得等に係る契約の締結期間

良質な住宅用家屋

左記以外の住宅用家屋

~平成27年12月

1,500万円

1,000万円

平成28年1月~平成29年9月

1,200万円

700万円

平成29年10月~平成30年9月

1,000万円

500万円

平成30年10月~平成31年6月

800万円

300万円

ロ 住宅用家屋の取得等に係る対価の額又は費用の額に含まれる消費税等の税率が10%である場合(以下、「特別住宅資金非課税限度額」といいます。)

住宅用家屋の取得等に係る契約の締結期間

良質な住宅用家屋

左記以外の住宅用家屋

平成28年10月~平成29年9月

3,000万円

2,500万円

平成29年10月~平成30年9月

1,500万円

1,000万円

平成30年10月~平成31年6月

1,200万円

700万円

⑩教育資金贈与の非課税について

平成25年4月1日から平成31年3月31日までの間に、父母や祖父母等直系尊属(贈与者)が、子供・孫(受贈者)名義で開設された金融機関の口座に、教育資金に充てるため一括して資金を拠出した場合に、この資金について、子供・孫ごとに1,500万円までの金額に相当する部分について贈与税が非課税とされます。

非課税限度額は次の①と②合わせて1,500万円までです。

イ「学校等の教育費」(限度額)1,500万円
  入学金、授業料等のうち領収書が発行される費用

ロ「学校等以外の教育費」(限度額)500万円
  学習塾や習い事等「謝礼」「月謝」「会費」等の名目で領収書が発行される費用

この制度を受けるためには、受贈者名義の口座を開設し、「教育資金非課税申告書」を開設した金融機関等の営業所に提出することが必要です。
教育資金口座からの払出しには、一定期間内に領収書等を金融機関に提出することが必要です。

(三井住友銀行ホ-ムぺ-ジより)

⑪結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税について

平成27年4月1日から平成31年3月31日までの間に、20歳以上50歳未満の方が、結婚・子育て資金に充てるため、父母や祖父母等直系尊属(贈与者)から、子供・孫(受贈者)名義で開設された金融機関の口座に、一括して資金を拠出した場合に、この資金について、子供・孫ごとに1,000万円までの金額に相当する部分について贈与税が非課税とされます。

(三井住友銀行ホ-ムぺ-ジより)

(2)相続財産の評価を下げる

所有不動産の賃貸活用について

不動産は活用の仕方により、相続税の評価額が大きく変わります。

土地

自用地   → 100%評価

貸家建付地 → 85%~79%

建物

自己利用  → 取得価額の約60%

貸家    → 取得価額の約40%