弁護士コラム

復活の巻

復活の巻

しばらくお休みしておりました「弁護士よもやま話」、今月号から装いを新たに復活することとなりました。新担当となった私も、実は、弁護士として復活したばかりです。二重のブランクがあり、にもかかわらず歴代の執筆者のような強力な個性のない私が、なぜ新担当者となったのか、は、やがて分かる時がくるのかもしれません。現時点では、私自身も分かりません。きっかけは、単なる思いつきだったと聞いていますが、それはともかく、私なりに努力していきたいと思っております。どうぞよろしくお願いします。

さて、初回なので、定番の自己紹介からはじめたいと思います。生まれは九州で、サラリーマンの父と専業主婦の母のもと、「我が家は中流」と思い込んで育ちました。地元大学に進学する予定でしたが、偶然が重なり東京の大学に入学。親族からは、「女の子なのに?!」と不興をかったようですが、当時は全く気づきませんでした。時は、男女雇用機会均等法とバブルで沸き立っていました。地方出、一人暮らし、女子学生の私が正社員の職を見つけられたのは、今にして思えば時代のおかげだったのでしょう。就職後、大学時代に知り合った恋人と結婚しました。

と、ここまでは順調というか、ある意味無駄のない人生だったのですが、仕事で様々な壁にぶち当たりました。薄々は分かっていたものの、女というだけで、見えないハードルがあることを実感する日々でした。結局、約6年働いた後に退職。その後、世間的には専業主婦と呼ばれる生活を送りつつ、司法試験に挑戦、何とか弁護士になった時点で既に30代半ばとなっていました。

こうして回り道の末弁護士になった私ですが、その後も、出産時に約2年間、さらに昨年春から今年春にかけて約1年間、2回も休職するという寄り道をしました。結果的に産休・育休となってはいますが、直接的には、配偶者が仕事の関係で海外に行くことになったためです。さすがに2回目は、弁護士辞めるしかないかなと覚悟しましたが、周囲に助けられ、何とか復帰したところです。とはいえ、気がつくと既に中年。休みボケがさらに追い打ちをかけ、動きが鈍いこと。復活への道はまだまだ遠いとため息をついています。

ところで、休職している間、あるものも復活していました。それは、関西電力の大飯原発3号機・4号機です。現時点で、唯一稼働している日本の原発です。2011年3月の福島の未曾有の原発事故を経て、全ての日本の原発がとまったのは昨年5月。ところが、翌月には、政治判断で大飯の再稼働が決定され、7月には早くも復活となってしまいました。

国は、「暫定基準」という曖昧な基準で大飯を再稼働させたのですが、一方で、原発の「安全神話」は見直すべきとしました。そこで、昨年9月、新しく原子力規制委員会が発足し、今年7月8日、新しい原発の規制基準が施行されました。

さて、そうなると稼働中の大飯は? と思っていたら、原子力規制委員会は、新規制基準の作成作業を行いながら、大飯がその新規制基準にどれだけ適合しているかの調査もしていました。なんだか、にわとりと卵を同時に作っちゃうような話ですね。公表された調査の結果を読んでみると、「(大飯は)直ちに安全上重大な問題が生じるものではないが、いくつかの点において、新規制基準を満たしていない点が認められた。」と書いてありました。が、9月の定期点検まで、大飯の稼働は続けるそうです。とりあえず、しばらく地震とか起きないよう、神に祈っていようね、ということなのでしょうか。

この大飯原発3・4号機については、昨年、1107名の原告が、京都地裁に差し止め訴訟を提訴しています。第1回の口頭弁論が行われたのが、今年7月2日。実は、弁護士復帰後、私がはじめて代理人として弁論を行ったのが、この裁判なのです。裁判の詳細は紙面の都合上省略しますが、休みボケとか、もうトシとか言っていられない、という気持ちになりました。いや、そうは言っても、動きがたちまち早くなることはないと思いますが、少なくとも、気持ちにカツは入りました。「原発安全神話の復活許さじ」を弁護士復活にあたっての抱負にしたいと思います。

「ねっとわーく京都」2013年9月号