弁護士コラム

混ぜるともっと危険!特定秘密保護法と安保法制

混ぜるともっと危険!特定秘密保護法と安保法制

1 秘密保護法とは

安倍政権が世論の大きな反対を押し切り、特定秘密保護法を強行制定してから2年が経過しました。そして、同法が施行されてから1年が経過しました。

この法律は、政府にとって「都合が悪い」情報を「特定秘密」に指定し、私たち市民に知られないようにすることを可能とするものです。『「防衛」「外交」「特定有害活動」「テロリズム」に関係する情報』と説明をつければ「特定秘密」として指定できてしまう仕組みです。

ある情報がいったん秘密に指定されると、5年間はその内容が国民・市民に明らかにされず、政府自身が秘密指定を延長する必要があると考えれば、期間延長できることになっています。この法律は、国民の知る権利の行使を刑罰権でもって抑止するという点に最大の問題点があり、憲法違反の危険な法律です。

2 特定秘密保護法成立後の動向

この法律が施行された2014年12月の時点だけをとっても、382件もの情報が特定秘密と指定されています(指定された文書や写真そのものの点数は40万件を超えると推定されます。)。一体、どんな情報がどんな理由で特定秘密とされてしまったのかさえ私たち市民にはわからないのです。市民の目、耳、口を塞ぐ悪法は、今も止まることなく日々、私達の知る権利の侵害を継続しているのです。

3 安保法制との関係

安倍政権は、特定秘密保護法を施行した翌年である2015年9月19日に、集団的自衛権の行使や戦闘地域での他国軍隊の後方支援を可能とする安保法制を強行制定しました。そして同法は2016年3月末には施行されることが予定されています。「自衛隊が米軍と共に海外で戦っている。」という状態が現実のものとなる可能性が高まっています。

ところが、国民や国会議員が、「戦争状態はどうして発生したのか。」「現地で自衛隊はどのような活動をしているのか。行きすぎた行動はしていないのか。」について判断し声を上げられる情報を得たいと思っても、特定秘密保護法によって、必要な情報が国民に届けられないという、危険な事態が生じうるのです。中谷元・防衛大臣は、衆議院特別委員会で「(集団的自衛権の行使が必要と)認定する前提となった事実に特定秘密が含まれる場合もある。情報源や具体的な数値そのものは明示しない。」と述べています(2015年11月10日付東京新聞)。

国会議員でさえも、「集団的自衛権の発動の前提となった、我が国の存立危機事態の具体的事実関係と、その情報源を明らかにしてもらいたい。」と国会で質問をしても、質問を受ける行政機関の官僚は、「それらについては秘密指定されているためお答えできません。」の一言で遮ることが可能となってしまうのです。これでは、時の政権は、集団的自衛権を行使したいときは、いつでも行使できることになります。また集団的自衛権発動に関わる事実を、特定秘密にしておけば、国会からも国民からも、追及はされないことになってしまいます。

国会での十分な議論もなく、アメリカなどの要請に応え紛争地域に自衛隊を送り、他国軍隊の後方支援活動に参加することが可能になります。アメリカと共に有志連合に参加してきたフランスやイギリスのように、日本もテロ攻撃と復讐的な武力行使の悪循環に陥る危険が格段に高まってしまいます。

まさに特定秘密保護法と安保法制は「混ぜるともっと危険!」という関係にあるのです。

4 改めて、特定秘密保護法の廃止を求める活動を!

特定秘密保護法は、日本国憲法の国民主権原理、知る権利、取材・報道の自由に真っ向から違反する憲法違反の法律であり、戦争への道を進めるものです。

同法の廃止を求める声を更に大きく上げていく必要があります。京都弁護士会では、秘密保護法廃止を求める街宣活動・署名活動を行っています。