京都第一

弁護士ファイル/労働

弁護士ファイル/労働

奥村一彦
弁護士:Okumura Kazuhiko

配転命令を撤回させる

Kさんは、関東に本社がある化学薬品会社の社員として京都の自宅を営業所とし、主に地方自治体の薬品関係の入札に参加する業務に携わってきました。ところが、会社から急に京都営業所を廃止すると通告され、本社に出社するよう命じられました。しかし、入社時に京都で勤務する約束があったこと、また高齢の母親の介護が必要であるとの理由で転勤を拒否しました。そこで相談を受けましたが、このままでは解雇されるので介護休暇を申請し、すぐ配転禁止の仮処分を申し立てました。会社は経営上の苦境、新規業種の展開のため及び京都営業所勤務を認めたことはない等の反論を提出しました。しかし、Kさんは入社以来の勤務の実態、京都営業所の成績が順調であることを立証して勝利し、会社も転勤命令を撤回しました。

秋山健司
弁護士:Akiyama Kenji

仕事の影響で病気になった。 会社にも損害賠償請求はできますか?

仕事の影響で病気になったという場合、会社の側に労働者に対する安全配慮義務違反がある場合には、労働者は労災保険による救済を受けることのほか、会社に対する賠償請求をすることが可能です。先日、溶接業務を行う会社の労働者が、会社から作業に適する防護マスクを支給されていなかったために防護マスクをせずに溶接作業に従事していたところ、白内障を発症してしまったという担当事件において、「会社は労働者が白内障にかからないように適切な指導を行うべきであったのにそれをしていなかった」と会社の安全配慮義務違反と損害賠償を認める判決を得ました。仕事の影響で病気になった場合、会社に対する賠償請求が認められることがあるのです。

水野彰子
弁護士:Mizuno Akiko

労災申請と弁護士の役割

労災(正式名称「労働者災害補償保険」)とは、労働者が業務中に災害にあったり、通勤途上で災害にあった場合に給付される保険のことです。

労災申請手続は、通常、個人の方だけでできるものですが、弁護士に依頼した方がよい場面もあります。

その一つめは、過労死の場合。過労死は、労働者の死亡と業務との関係(因果関係といいます。)があるといえるかどうか、立証が難しいため、専門的知識のある弁護士に申請手続を依頼することが有効です。

二つめは、認定された後遺障害等級に不満がある場合。弁護士の意見書やその他資料を添えて審査請求すれば、等級認定が上がる場合があります。

このような場合は、ぜひ一度弁護士にご相談下さい。

大河原壽貴
弁護士:Ookawara Toshitaka

拡がる官製ワーキングプアと公契約条例

近年、地方自治体の現場では非正規職員が増え、公共サービスの民間委託が拡大しています。そこで働く労働者の賃金は、最低賃金以下という場合も少なくなく、官製ワーキングプアと呼ばれる事態が拡がっています。また、民間委託の現場では、「合理化」により、公営プールでの事故など公共施設の安全性が問われています。

このような状況の中で、公契約条例を定め、公共サービスに従事する労働者の労働条件や労働環境の整備を進める自治体が出てきました。公共サービスは私たちの日常生活や社会生活を支える重要な役割を担っています。そこで働く労働者の働き方は、私たちの生活の安全・安心にも深く関わってきます。公契約条例を全国に拡げていきたいものです。

「京都第一」2010年夏号