京都第一

弁護士ファイル/相続

弁護士ファイル/相続

渡辺馨
弁護士:Watanabe Kaoru

特別縁故者への財産分与

被相続人に相続人がいないときは、相続財産は原則として国に帰属します。例外的に内縁の妻(夫)、事実上の養子または最後まで献身的に被相続人を世話した人等、被相続人と特別に縁故の深い人に対し家庭裁判所は相続財産の全部又は一部を与えることができるようになりました。その手続きは、特別縁故者は家庭裁判所に相続財産管理人の選任の申立をします。選任されますと、管理人、家庭裁判所は相続人の債権者、受遺者の申出や、相続人捜索(期間は6ヶ月以上)の官報公告をします。これらの手続きで相続人が出てこなかったら捜索の期間満了後3ヶ月以内に特別縁故者は家庭裁判所に相続財産の分与の申立をします。申立書には特別縁故の内容を具体的に書く必要があります。

分与の手続きには1年以上かかりますし、裁判所の「縁故」の認定はきびしいものがあります。できたら被相続人に「遺言書」を書いて貰うことがよいと思います。

岩橋多恵
弁護士:Iwatasi Tae

高齢者の財産管理

京都でも成年後見に関する相談も増え、裁判所から成年後見人、任意後見人の後見監督人に選任される弁護士が増えてきました。成年後見人の事件を通じて実感するのは、自分の判断能力がなくなる前に、信頼できる弁護士、人物に財産管理などをまかせる任意後見契約を締結するなどの準備をしておくことの大切さです。判断能力がなくなった時に、他人が判断能力のなくなった人の真の意向を推し量りながら、後見するのは、むずかしい面があります。その意味で、任意後見人を早めに選任し、財産管理の相談、自分の介護が必要になった場合の意向、希望を述べながら、進めておくと、本人の意向が最大限に生かされ、安心した老後を送れるのではないかと思います。

村井豊明
弁護士:Murai Toyoaki

死亡した親の預金の取り戻し

親の入院中や死亡前後に、親の預金を子供の一人が無断で引き出してしまうケースがよくあります。

この場合、最高裁平成21年1月22日判決が出たことにより、相続人が複数いる場合でも、相続人全員の同意書の提出は必要ではなくなり、一人の相続人が単独で銀行に対し預金の取引明細や払戻請求書のコピーを請求できるようになりました。

そして預金払戻の日付や払戻請求書の筆跡などから子供の一人が親に無断で預金を引き出したことを暴くことが可能となります。

そうすれば無断で預金を引き出した人に対し自己の相続分に応じた預金額の返還を請求することができます。

谷文彰
弁護士:Tani Fumiaki

借金がある場合の相続

亡くなった方に多額の借金がある場合、その借金も相続の対象となりますが、このような場合のために、法律は相続放棄や限定承認を認めています。

相続放棄とは相続そのものを拒否すること、限定承認とは相続する財産の範囲内で債務を負担することです。いずれも、相続開始を知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所で手続をしなければなりません。

仮に、3ヶ月を経過した後に多額の借金があることが判明したときでも、相続放棄が認められる場合がありますので、一度当事務所の弁護士に相談してみて下さい。

逆に、相続財産を処分したりすると単純に相続したものとして扱われますので注意が必要です。

浅野則明
弁護士:Asano Noriaki

遺言のすすめ

最近、遺言を作成する依頼が増えています。遺言は、自分の死後、遺産を相続人たちにどのように分けるかを予め決めておくものです。遺言がなければ、民法が定めた相続分に応じて遺産分割が行われることになりますが、往々にして相続人間に争いが起こります。遺言を書いておけば、相続人間に争いを防ぐことができるか、あるいはその争いを最小限度に抑えることができます。自分の死後、どうなってほしいかを遺言に託すことになります。遺言には厳格な方式が定められていて、これを逸脱すると遺言自体が無効になってしまいます。自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類がありますが、無効になることがほとんどなく、紛失の可能性もない公正証書遺言をお勧めしています。相続争いを避け、かつ無効になることのない遺言を作成するならば、弁護士にご相談することをお勧めします。

「京都第一」2010年夏号