京都第一

事件報告:湖池屋未払い賃金判決 ~三角形の秘密はね…~

事件報告:湖池屋未払い賃金判決 ~三角形の秘密はね…~

事案の概要

本件の被告は、ポテトチップスやポリンキーで有名な湖池屋を傘下に持つフレンテです。原告は、被告京都工場において、スナック菓子の製造ラインにおいて、業務を行っていました。

裁判では、原告の労働者としての地位確認を求めるとともに、未払い賃金の支払いを求めました。残念ながら、地位確認については、認められませんでしたが、未払い賃金については、大部分で勝利を勝ち取 ることができました。

深夜割増賃金の未払い

本来、22 時00 分以降に働いた場合、深夜割増賃金が発生します。本件の場合、22時00分以降は、1時間あたり245円(時給980円×25%)を上乗せしなければいけません。しかし、本件では、深夜割増賃金は 支払われていませんでした。被告側からは、契約書の「深夜割増部分は基本賃金に含む」との記載があるため、支払う必要がないとの主張がなされました。しかし、判決では、「深夜割増部分は基本賃金に含む」 との記載は労働基準法を潜脱するものであり、無効であるとして深夜割増賃金の支払いを命じました。

繰上終業した分の未払い賃金の請求

本件の労働契約書では、契約時間は、17時10 分から22 時10 分とされていました。しかし、22時10分よりも約1 ~ 2時間程度、終業時刻が早められることがありましたが、賃金は、早められた終業時刻分までし か支払われていませんでした。被告側からは、働いていないから支払う必要はないという主張が繰り返しなされました。しかし、判決は、契約書で5時間と定められていることをとても重視して、22 時10 分までの賃金の支払いを命じました。

着替え時間等についての請求

本件判決では、他にも、作業前後の制服への着替え時間や作業前の手洗い、靴底クリーナー、アルコール消毒、エアーシャワー、粘着ローラーについても1分単位で未払い賃金の支払いを認めました。

ブラックバイトをなくすために

被告工場は、原告と同じ勤務形態の労働者だけでも100人近くいて、多額の未払い賃金が存在したことになります。子どものころにCMで聞いた「三角形の秘密はね♪」が、実は多額の未払い残業代だったのかと いう気持ちになります。

今後、低賃金で違法な働かせ方をするブラックバイトをなくすために、同判決を活かしていきたいと思います。

弁護士 尾﨑 彰俊

「京都第一」2016年夏号