まきえや

綾部信用金庫労組が地労委の利用で短期に勝利解決

綾部信用金庫労組が地労委の利用で短期に勝利解決

金融再編に向けた組合攻撃

綾部信用金庫には古くから「従業員組合」(以下単に組合という)がありました。上部組織としては「全信労」に加盟し、大きな争議はなかったものの、殆んどの従業員を組織し、金庫との間で適切な対向関係を維持し、労働条件の確保と、金庫が地域金融機関としての役割を果たすのに尽くして来ました。

ところで、多くの金融機関では、全国的にも京都でも、既に労働者に対する人事考課制度が導入され、この運用が労働者の抑圧に悪用される事態が生じていましたが、綾信では労働者の賃金は一律で考課はされていませんでした。

ところが地域金融機関の再編時期を迎え、これでは都合が悪いと理事者レベルで判断されたもののようで、金庫は数年来人事考課の導入策を進めてきました。これに対する組合の態度は、制度の導入そのものに反対するというものではなく、事前に労使協議を十分に重ね、恣意的運用がなされないよう問題点を整理することを求めるというものでした。

ところが金庫はこの協議を十分尽くさないまま、1999(平成11)年4月より試験的として、人事考課導入の前提としての(1)労働者に目標を記載したチャレンジカードを提出させ、(2)上司による目標面接を受けさせるとの制度を実施してきました。組合としてはこのような金庫の強行実施は認めることはできず、方針として役員四役がチャレンジカードの提出や目標面接を受けることを拒否しました。これに対し金庫が「業務命令違反」を理由として4人に対し減給処分を行ったものです。組合としてはこれは実質的には組合活動を理由とする処分で不当労働行為と考えざるを得ませんでした。

そこで昨年9月、組合がこの処分の撤回と、その前後の時期の金庫幹部の組合攻撃の言動に対する金庫側の謝罪を求め、京都府地方労働委員会に不当労働行為救済申立を行ったものでした。

勝利和解報告集会

その後の第2組合の組織化と職場状況

良くあることですが、組合がこの申立てをした後、組合のこのような方針を批判し、労使協調を求める動きが顕在化しました。そして上級職中心に新たな組合が結成され、各支店長などによってこの新組合への勧誘活動が活発に展開され、この結果組合には連日同じ内容の組合脱退届けが送付されて来るようになりました。

しかしだからといって組合はひるむことなく、地労委での審理と、職場での年末一時金その他の問題についての運動を一層進めました。これらによって金庫が考えていた第二、第三の処分や、一時金についての査定導入などもストップさせることが出来ました。このような状況で、組合員の団結は25名前後で維持されることとなりました。第二組合結成を進めた者たちは、恐らく組合員を少数争議団に追い込むことを考えたでしょう。組合の力は何よりも数がものを言います。少数派にはなっても、20名を超える組合員の力は大きなものがあります。運動的にはこの団結の力を維持できたことが勝利の大きな要因です。

地労委での取り組みと得られた和解のレベル

地労委では、2回の調査期日と5回の審問期日が開かれました。毎回近畿から多数の仲間の傍聴があり、各証言では金庫の建前としての主張が正しくないとの確信が聞いているものに広がっていきました。審問中に金庫の労務管理の責任者が退職金上積みで退職したことにも組合員の怒りが増しました。

このような審理を経たのち、和解交渉が行われ、本年8月1日、組合の主張が120%認められたともいえる以下の内容の和解成立となったものです。

  • (1) 金庫は本件減給処分を撤回し、今後本件を理由に組合四役を差別することは一切しない。
  • (2) 金庫は本件で問題となった支配介入と疑われる言動については真摯に反省し、以後再発防止の指導を徹底する。
  • (3) 金庫は組合員の労働委員会出頭費用などを負担する。
  • (4) 組合4役は今後チャレンジカード、目標面接に参加する。
  • (5) 以後人事考課制度の新設等労働条件の変更については、金庫は組合と事前に誠意をもって協議を行う。

法人再編を利用した新たな組合弱体化攻撃を許してはならない。

国鉄のJRへの移行期を利用し、法律を使って、国労、全動労労働者が旧国鉄である清算事業団に残されるとの国家的不当労働行為が行われました。この是正を求める運動はなお継続していますが、私自身はこの問題は、我が国の民主主義の真価が問われる問題として今なお私たちに鋭く提起されていると認識しています。それはともかく、財界、経営者側は、旧の法人から新たな法人に移し、その際に労働者を分別する方策の有用性を学んだようで、その後国会レベルでは会社分割法、労働関係承継法などを成立させ、リストラ合理化と不当労働行為を同時に行うことを可能とするような途を開こうとしています。また例えば大阪では不動信用金庫労働者に対する全員解雇、別金融機関への営業譲渡の際の労働者選別がなされるなど、従来と異なった法人再編を利用した不当労働行為の事例が増える傾向にあります。今回の綾部信金労組の事件はその一歩手前時点での事案でした。これに対し労働者の側ではまだ有効な闘い方の方策が全国的に確立されてはいません。勿論労働者が分断されずに団結を維持することが最も有効な途であることは当然ですが、雇用不安が広がる中ではどうしても団結に隙が生じることは避けがたい場合が多く、そのような状況でも働く仲間の権利と団結権をきっちりと守れる運動の方法を早急に確立していくことが必要となっています。

「まきえや」2001年秋号