まきえや

駅前留学」NOVAの横暴は許さない

[事件報告 1]

「駅前留学」NOVAの横暴は許さない

「いっぱいき~け~て、いっぱいしゃべれ~る」というフレーズを皆さん耳にしたことはありませんか?ピンク色のウサギが出てくるあのCMですね。中にはその「NOVAうさぎ」グッズを持っている方もおられるかも知れません。NOVA(株式会社ノヴァ)は、英会話業界の最大手として、このようなCMを大量に流し、たくさんの生徒を集めています。

しかし、「いっぱいきけて、いっぱいしゃべれる」学校を支えている外国人講師たちの労働条件については、あまり知られることはなく、その労働者としての権利は十分に保障されているとは到底言えない状況です。

講師は全て1年間の短期契約の繰り返しで、その地位は極めて不安定です。また、非常災害の際の教室の安全対策など、その労働環境を見ても、決して整備されたものとは言えない状態です。

そのような中で、ロバート・ビソムさんは、英会話学校の先生などで構成される労働組合のゼネラルユニオンに加入し、同組合のノヴァ支部長として、外国人講師の待遇改善と労働環境の改善を求める運動を始めました。

ビソムさんの要求は、労働者であれば当然のものですので、NOVAで働く外国人講師の間にも受け入れられていき、組合に加入する講師も増えていきました。ビソムさんが働いていた四条河原町校では8人の外国人講師中4人の講師が組合に加入することとなりました。

NOVAによる組合敵視姿勢、不当配転

このようなビソムさんの活動に対して、NOVA側はあからさまに組合敵視の姿勢を見せてきました。ビソムさんが組合に加入し、活動を始めた2001年の秋の定期査定以降、半年の査定ごとに、査定を下げられる理由がないにもかかわらず、恣意的に評価を下げられることとなり、それに伴って、昇給額も抑えられてしまいました。そして、2003年8月1日、ビソムさんは、ありもしないクレームをでっちあげられて、四条河原町校から三条校へ意思に反して配転されることとなってしまったのです。

四条河原町校から三条校への配転と聞いて、別に近いじゃないか、と思われる方もいるかも知れません。確かに、四条河原町校と三条校は歩いて10数分程度で、遠くてとても通勤できないようなところへ飛ばされたという訳ではありません。しかし、ビソムさんが三条校へ配転されたことによる不利益はとても見過ごすことのできない重大なものでした。

それまでビソムさんは四条河原町校を中心にして組合員を拡大してきており、四条河原町校は桂校と並んで組合のノヴァ支部の中心となっていました。それに対して三条校には組合員はおらず、そればかりか、三条校は当時、NOVAの京都地区の拠点となっており、組合をあからさまに敵視する管理職が在籍していたのです。この配転によって組合活動が後退することは明らかでした。また、ビソムさん自身も、クレームをでっちあげられ、不当配転を受けたことの影響から、職場で他の職員との関係を築くのに支障が出るなど、多大な不利益を受けることとなりました。

配転無効の仮処分の提起

このようなNOVAによる不当な配転命令に対して、2003年10月14日、ビソムさんは、配転命令を無効とし三条校で勤務する義務のない地位を仮に定める地位確認の仮処分を京都地裁に申立てました。

NOVA側は、仮処分の中でも、ありもしないクレームを挙げて配転命令を正当化しようとしてきました。しかし、そのクレームは、被害を受けた人が直接言ったものではなく、エリアマネージャーと呼ばれる管理職が「誰々からこんな話を聞いた」というもので、伝聞に伝聞を重ねた、信憑性に全く欠けるものでした。

これに対して、ビソムさんは、クレームを言ったとされる四条河原町校の講師やスタッフから「そのようなことは言っていない」との証言をもらい、そのクレームがでっちあげられたものであることを主張し、全面的に反論しました。さらには、ビソムさんが組合に加入したとたん評価を下げられたことや、その評価の書類に「組合の資料には注意してください」などと書かれていたことなどを挙げて、NOVA側が、組合活動を妨害する目的でビソムさんを配転させたことを明らかにしていきました。

勝利!「本件配置転換命令は権利の濫用として無効」

2004年3月25日、京都地裁は、ビソムさんに対する配置転換命令を権利の濫用として無効であるとの決定を下しました。

その内容は、NOVA側が主張したクレームに対し、「苦情はその真偽自体疑問である」と、クレームの内容以前にクレームがあったこと自体を認めず、また、「債務者(NOVA)は、債権者(ビソムさん)の組合活動を好ましく思っていなかった」と、NOVAの組合敵視の姿勢についても決定の中で言及しているなど、ビソムさん側の主張を全面的に認めたものでした。

ですから、NOVAとしては、決定の確定を待つまでもなく、すぐにでもビソムさんを四条河原町校に戻さなければなりませんでした。

NOVAのさらなる暴挙

しかし、NOVAは、裁判所の決定に従わないばかりか、決定から約2週間後の4月9日、ビソムさんを解雇するというさらなる暴挙に出て来ました。しかも、解雇の理由は、その大半が、先の不当配転に関する裁判所の仮処分決定で排斥されたものの蒸し返しでした。

NOVAによるこの解雇処分は、明らかにビソムさんに対する報復措置であり、裁判所の決定すら無視するその態度は決して許すことはできません。不当配転の無効に続き、解雇の無効も勝ち取るべく、新たな闘いが始まったところです。皆さん是非ご注目下さい。

2003年10月14日 仮処分申立後の記者会見

「まきえや」2004年春号