まきえや

画期的な大津地方裁判所仮処分決定~稼働中の原発が止まった

事件報告 画期的な大津地方裁判所仮処分決定~稼働中の原発が止まった

1 はじめに

2016年3月9日、大津地方裁判所は、「関西電力は、福井県大飯郡高浜町田ノ浦1において、高浜発電所3号機及び同4号機を運転してはならない。」との仮処分決定を出しました。本裁判の場合は、敗訴側が控訴すると判決の効力は生じませんが、仮処分決定は、すぐに効力を生じます。大津地裁の仮処分決定により、稼働中の高浜原発3号機の運転が停止されました。同決定は、司法判断により、稼働中の原発を停止するという画期的なものです。

2 名古屋高裁金沢支部の不当決定

原発差止めに関する裁判や仮処分は全国各地で行われています。

2015年4月14日、福井地方裁判所は、「関西電力は、福井県大飯郡高浜町田ノ浦1において、高浜発電所3号機及び同4号機を運転してはならない。」との仮処分決定を出しました。

この決定に対して、同月17日、関西電力は異議申立てを行いました。名古屋高裁金沢支部は、関西電力の異議申立を認め、上記福井地方裁判所の仮処分決定を取り消すという極めて不当な決定を行いました。

原発が極めて危険であり、一度原発事故が起これば、取り返しのつかない被害が起きる事は、今なお続く福島原発事故から誰の目にも明らかです。だからこそ、裁判所は、福島原発事故を踏まえた上で原発稼働について謙虚に慎重な判断をしなければなりません。名古屋高裁金沢支部は、「社会通念」という言葉によって、原発の危険性をごまかし、福島原発事故において、多くの人々の生活・故郷が奪われ、その被害が今もなお続いていることを全く無視し、福島原発事故の被害と全く向き合おうとしておらず、極めて不当な決定です。

3 高浜原発再稼働と高浜原発4号機のストップ

2016年1月29日、関西電力は高浜原発3号機の原子炉を起動しました。高浜原発4号機については、同年2月20日、原子炉補助建屋内の床面に水漏れが見つかる等トラブルがあるにもかかわらず、同月26日、関西電力は、高浜原発4号機の原子炉を起動させました。しかし、同月29日、高浜原発4号機は、発電機が自動停止し、タービンおよび原子炉が自動停止したため、再稼働できていません。

4 大津地方裁判所仮処分決定

名古屋高裁金沢支部の極めて不当な決定が出た中で、大津地方裁判所が仮処分の申立についてどのような判断を下すのか、非常に注目が集まる中で、2016年3月9日、稼働中の高浜原発を止めるという画期的な判断が出されました。

大津地方裁判所は、「本件は、福島第一原子力発電所事故を踏まえ、原子力規制行政に大幅な改変が加えられた後の事案であるから、関西電力は、福島第一原子力発電所事故を踏まえ、原子力規制行政がどのように変化し、その結果、本件各原発の設計や運転のための規制が具体的にどのように強化され、関西電力がこの要請にどのように応えたかかについて、主張及び疎明を尽くすべきである」と述べた上で、十分な審理期間があったにもかかわらず、関西電力が主張・疎明できなかったことを指摘した上で、仮処分決定を出しています。大津地方裁判所は、福島原発事故と真摯に向き合い、福島原発事故の今なお続く甚大な被害を踏まえた上で、判断を下しています。

大津地方裁判所と名古屋高裁金沢支部とで判断が分かれた大きな違いは、福島原発事故と真摯に向き合ったか否かこの点につきると言えます。

5 最後に

2014年5月、関西電力に大飯原発の差止めを命じた判決が出されました。その後も、2015年4月14日の福井地方裁判所での仮処分決定、2016年3月9日の大津地方裁判所での仮処分決定、と画期的な判断が次々と出されています。これらの画期的な判断が出された背景には、全国各地で行われている原発差止めの裁判及び国民的な脱原発運動があると言えます。

京都地方裁判所においても、大飯原発差止め訴訟が行われており、これまで、10回の口頭弁論を行ってきました。京都脱原発弁護団では、3,000名を超える原告団となっており、現在第5次原告を募集しています。さらに大きな原告団をつくり、京都地方裁判所でも画期的判決を獲得するために頑張っていきたいと思います。

「まきえや」2016年春号