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職場における暴力を許さない!!

職場における暴力を許さない!!

弁護士 尾﨑 彰俊

1 本件の事案と争点

本件は、被告会社の従業員である原告が、被告会社の従業員である原告の上司(以下「被告上司」)から、業務時間中に呼び出しを受け、二人きりで、部屋の隅に立たされ、恫喝及び暴行を受けたことにより精神的苦痛を受けたと主張して、被告上司及び被告会社に対して、損害賠償請求を行った事案です。原告は、京自教労組光悦分会に所属していました。原告から、恫喝及び暴行の報告を聞いた組合は、団体交渉を繰り返しました。この上司は、過去にも暴力沙汰を起こしたことがありましたが、会社が、今回の暴行について、適切な処分を行いませんでした。このような会社の態度を許していては、組合員が安心して働くことができないため、労働組合としても安心して働ける職場を守るために、全面的に支援して裁判を闘いました。

本件では、被告上司が、原告を業務時間中に呼び出し、部屋の隅に立たせ、原告のすぐ横の壁を蹴り、壁に穴を開けたという事実関係については、ほぼ争いはありませんでした。本件で争いとなったのは、主に①被告上司が、原告を業務時間中に呼び出した理由②被告上司が、原告のすぐそばの壁を蹴った動機③被告上司の行為に、違法性・損害が認められるかの3点となります。①及び②の点について、被告上司の主張の要旨は、原告の言葉遣い等について指導を行うために、原告を呼び出し、原告に指導を行ったが、原告が反省しなかったため、自身の指導力不足に不甲斐なさを感じ、壁を蹴ったというものであり、本件行為は、原告に向けられたものではないという内容でした。これに対して、原告は、本件は、従前から原告の態度に、いら立ちを覚えていた被告上司が、原告の言葉遣い等を「指導する」という名目で、原告を呼び出し、壁を蹴るという暴力行為に及んだものであり絶対に許されないパワーハラスメントであると主張しました。争点③については、被告側は、被告上司の足が、原告に直接当たっていないこと、「蹴る」という行為が1回だけであり、継続して行われたものではないこと等を理由に、違法性・損害が無いと主張しました。これに対して原告は、穴が開いた壁の写真や原告が労働組合と一緒に作成した再現写真などを証拠として提出するとともに、原告が、今回の行為によって被った精神的苦痛の具体的な事実を主張し、被告上司の行為の悪質性を訴えました。

2 裁判所の判断

争点③について、裁判所は、被告上司の行為は、「1回だけのものであるが、原告に相応の威圧感を与える行為であるというべきである」と評価したうえで、「原告に何らの精神的損害がないと認めることはできない。」とし、結論として「指導中にされる行為としての社会的相当性を逸脱した違法性を認めざるを得ない」と述べ、違法性及び損害を認めました。

一方で、裁判所は、争点①(業務時間中に呼び出した理由)については、被告側の主張に沿った事実認定を行いました。また、争点②(被告上司が、壁を蹴った動機)については、「単に自分に対する不甲斐なさにとどまらず、原告に対するいら立ちなどもあったと考えられ、原告に向けられた要素もあったことを否定することはできない。」と、「自分に対する不甲斐なさで壁を蹴った」という被告側の主張を一部認めました。本件行為について、違法性・損害が認められた点は、良かったのですが、事実認定の点において、裁判所の認定では、今後も職場の安全が守られないと判断し、原告は、控訴しました。一方、被告会社、被告上司も控訴しました。

3 控訴後の闘い

控訴後、原告と労働組合が一体となって、団体交渉を重ね、被告会社と交渉し、①会社は、被告上司の原告に対する暴行の事実を認め、原告に対し深謝する②会社は、組合に対して、今後は、組合員が安心して安全に働くことができるよう安全配慮義務を尽くすことを約束するという内容の合意を勝ち取ることができました。さらに、原告代理人から、被告上司代理人に交渉を申し入れ、原告に対する謝罪文を提出させるとともに、暴行の事実を認め、深謝するとの合意を勝ち取ることができました。

本件の裁判を担当し、原告・弁護団・労働組合の三者で、裁判所内・裁判外で一体となって闘い、被告上司から謝罪文を提出させるとともに、職場での安全ために、義務を尽くすことを会社に約束させたことは、大きな成果だと思います。今後も、労働者が働きやすい安全な職場を作るために、頑張っていきたいと思います。

(当事務所の弁護団:尾﨑・浅野)

(京都自動車教習所労働組合光悦分会の皆さんと弁護団)
「まきえや」2018年秋号