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南山城村メガソーラー開発問題

南山城村メガソーラー開発問題

弁護士 森田 浩輔

1 問題の経過

京都府南山城村と三重県伊賀市の県境をまたいでメガソーラーが建設されようとしています。メガソーラーとは、出力1メガワット以上の大規模な太陽光発電所で、非常に広大な用地を必要とします。米外資系資本により設立された「FS(ファーストソーラー)ProjectJapan6合同会社」が、2013年頃から自然豊かな南山城村の山間部にメガソーラー開発計画を進めており(計画区域面積約80ヘクタール)、地元住民が反対運動を展開しています。

これまで地元住民団体は、林地開発行為に関する府の手続条例に基づき意見書を提出するなどして、事業者や京都府に対し、計画への疑問や反対意見を訴え続けてきました。しかし、事業者は強行に事業を推し進めており、計画自体に待ったをかけるには至っていません。

残す手続としては、事業者が森林法上の林地開発許可の申請を行い(2018年9月に本申請がなされ府は受理済)、これを受けて府の森林審議会が審査・現地調査をし、知事の許可がおりれば工事開始、となります。事態は切迫しています。

2 なにが問題か

知事の林地開発許可の判断においては、①災害の防止、②水害の防止、③水の確保、④環境の保全という4つの基準につき、それぞれ発生のおそれや悪化のおそれが問題となります(森林法第10条の2)。本件計画地においては、とりわけ①②④が大きな問題となっています。

⑴ 災害、水害の問題

本件計画地は、1953(昭和28)年に、戦後府内最大の水害被害をもたらしたと言われる南山城水害の中心的な被災地域に該当します(当時の集中豪雨による被害者総数約2万8,000人)。当該地域は上流に花崗(かこう)岩山地をひかえた洪水災害の起こりやすいところであり、全体的に広い湿地帯で軟弱地盤地域になっています。このような土地の特性から、本件計画地はいずれも砂防法上の砂防指定地に指定されており、京都府自身が定める「技術基準」において,軟弱地盤等における盛土が原則として「禁止」されています。土木専門家の意見では事業計画がこれに当たる行為を行うものである可能性が高く、そうだとすれば、災害・水害のおそれから本件開発は許可されるべきではありません。

⑵ 自然環境破壊の問題

計画予定地及びその周辺地域は、希少生物が多数生息する豊かな自然が残っている地域であり、開発によって貴重な自然環境が破壊される懸念があります。当該地域には、府の天然記念物、準絶滅危惧種に指定されているハッチョウトンボが生息し、また府の絶滅寸前種とされるイシモチソウやコモウセンゴケの群落が存在しています。事業者は、計画地外周部に森林を配置し、影響があると予測した種については移植等の保全措置を実施すると説明していますが、不可逆性を有する希少種の保全に十分とはいえません。

3 おわりに

このような緊迫した状況のなか、2018年6月及び7月の2度にわたり、環境問題に取り組む弁護士が現地に赴き、土木・建築の専門家とともに現地調査及び地元住民団体の方々との懇談の機会をもちました。

地元住民との懇談会では、まずは行政に対して自ら策定した基準を守るよう強く要請すべきこと、訴訟の選択肢はあるがそれは最後の手段であることなどを確認し、今後の運動の展開について話し合いました。

「太陽光発電」だからといって、地球にやさしい再生可能エネルギーというイメージだけでこの問題を捉えてはいけません。低炭素社会の実現とエネルギー安全保障の向上のために必要な太陽光発電ですが、現在、全国各地域で散発しているメガソーラー開発は、大規模な設備に投資できる外資系企業や富裕層が自身の利益のために参入し、金儲けの道具につかわれているのが実情です。メガソーラー建設後は個別の区画ごとに売却し、地域によっては杜撰な管理によって災害時に地元住民に甚大な被害が及びうることなどを考えると、今、メガソーラー事業そのものの是非を一旦立ち止まって考える必要があるのではないでしょうか。

「まきえや」2018年秋号