まきえや

「表示」に惑わされない 〜「機能性表示食品」と「安心R住宅」〜

「表示」に惑わされない 〜「機能性表示食品」と「安心R住宅」〜

「機能性食品表示」ってなに?

【1】 「機能」を売りにする商品いろいろ

みなさん、「トクホ」、ご存じですよね?その食品を摂取することで、そこに記載された保健目的が期待できるという内容の表示です。正式名称は①「特定保健用食品」で、某烏龍茶をはじめ多くのものがあります。

これとよく似たものに、②「栄養機能食品」と③「機能性表示食品」というものがあります。

②は、ビタミン、ミネラルなどの特定の栄養成分の補給のために利用する食品で国が定める基準に当てはまっていれば、国への届出や許可申請なく、その栄養成分の機能を表示することが出来ます。

③は、ある科学的根拠を基に商品にその機能を表示するもので、2015年から始まりました。

【2】 国が審査しているかどうかが違う

①と③、同じように見えますが、両者の違いは何でしょう?

それは、食品の安全性や有効性について国が審査を行い、販売を許可しているか(①の場合)、事業者が独自に調べ、国との関係では許可ではなく届出だけか(③の場合)という点です。機能性表示食品の場合は国が関与していないため、表示されているような機能があるかどうかの保障が必ずしも十分とはいえない場合があるのです。消費者庁の行った調査では、機能性表示食品の科学的根拠となる研究レビューのうち、80パーセント近くに何らかの不備があったことが報告されています。

2019年4月時点での機能性表示食品の届出件数は1,785件と、特定保健用食品の許可件数1,085件を大きく上回っており、市場には多くの製品が出回っています。国の審査を通して許可を得るために多額の資金と時間が必要な特定保健用食品に比べ、科学的根拠があれば届け出るだけで販売できる機能性表示食品の方がコストが小さいため、当然のことといえば当然のことです。

安全性・有効性 販売するためには
特定保健用食品 国が審査 国の許可が必要
機能性表示食品 事業者の責任 届け出るだけでよい

【3】「表示」に惑わされない

「こんな機能があります!」と謳われている食品でも、特定保健用食品と機能性表示食品とでは意味合いが大きく異なります。表示だけではなく、それがどういう意味合いのものかもよく分かった上で、本当に必要なものを必要な分だけ購入するようにして下さい。

消費生活相談センターに寄せられる相談のうち、食品に関するものは例年多数を占め、特に高齢者からは健康食品に関する相談が多くなっているということもあります。「表示」に惑わされないよう、十分にご注意下さい。

「安心R住宅」ってなに?

【1】中古住宅についても気をつけるべき「表示」が

「表示」に関して、もう1つ、中古住宅の「安心R住宅」にもご注意下さい。

これは、中古住宅の流通を促進しようと、2018年4月から運用が開始された制度です。国交省の説明によれば、「不安」「汚い」「わからない」といった従来のいわゆる「中古住宅」のマイナスイメージを払拭し、「住みたい」「買いたい」既存住宅を選択できる環境の整備を図るためとされていて、大雑把に言えば、中古住宅を調査し、その調査結果において「劣化事象なし」と評価された住宅に「安心R住宅」という標章の使用を認める制度です。

問題は、本当に「安心」できるような中古住宅なのかということです。「安心」という名称なので、多くの方は、きちんとした調査が行われ、欠陥のない安全安心な住宅だと思われるのではないでしょうか。ところが・・・

【2】本当に「安心」なのか

ここで行われるのは既存住宅状況調査(インスペクション)という調査ですが、建物の一部について、「目視や計測等」によって劣化事象がないかどうかを見るだけです。

欠陥があっても目で見て分からなければ「劣化事象なし」、少しぐらいのひび割れや傾きがあっても基準以下であれば「劣化事象なし」となり、「安心R住宅」として売り出されることになります。もっといえば、目に見える部分だけ直してしまうことで「劣化事象なし」と売り出すこともできてしまいます。

耐震性についても、1981年5月31日以前に着工した建物であれば耐震診断を行うことが求められていますが、それよりも後に着工した建物であれば耐震診断は不要とされています。これには1981年6月に建築基準法の耐震基準が改正されたことが関係していますが、比較的新しい物件でも耐震性に乏しい欠陥住宅が多数存在していることは私たちには周知の事実ですから、1981年6月以降の着工だから耐震性に心配はないとはとてもいえません。それでも、「安心R住宅」として売り出されることになるのです。

【3】消費者被害を引き起こすおそれがあると京都弁護士会が意見書

国土交通省の説明でも、「安心」というのは、現行の建築基準関係法令等への適合を保証するものでないこと、将来にわたっての地盤の不同沈下や地震後の液状化について保証するものでないこと、が注意的に述べられています。目視できない劣化事象や瑕疵が存在し、あるいは実際には建築基準法令や耐震基準を満たしていなくても、「安心」だと宣伝されることになるわけです。

このような制度は、消費者に対し、中古住宅の安全性について誤った印象を与え、新たな消費者被害を発生させる可能性があるといわざるをえません。

そこで京都弁護士会では、「『安心R住宅』及びこれに関連した制度に関して抜本的な見直しを求める意見書」を2019年3月6日付で発出しました。消費者保護の観点から多くの問題点のある「安心R住宅」制度は、廃止されるか、少なくとも抜本的に見直されるべきとの内容です。

「安心R住宅」と宣伝されていても、「表示」に惑わされず、きちんとした情報を得てから判断するようにしてください。

「まきえや」2019年秋号