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ゲートキーパーって何だろう 〜自死のない社会を目指して〜

ゲートキーパーって何だろう 〜自死のない社会を目指して〜

弁護士 高橋 良太

【1】自死問題って深刻

日本における自死の問題は深刻な状況となっています。2018年の自殺者数は2万840人とされています。自死の未遂者は、少なく見積っても自死の既遂者の10倍もいるともいわれています。自死や自死の未遂が1件起きると、身近な関係にあった人の最低でも5人に深刻な影響を与えるともいわれています。自死はだれにとっても無関係ではなく、身近な大切な人が自死しないためにも重大な問題です。

世界保健機関(WHO)によれば、先進国(G7)の自殺死亡率(人口10万人当たりの自殺者数)は、日本18.5、フランス13.8、米国13.8、ドイツ12.3、カナダ11.5、英国7.5、イタリア6.6となっており、国際的にみても日本の自死問題は深刻なことがわかります。

【2】ゲートキーパーって何だろう

(1)ゲートキーパーって何だろう

ゲートキーパーとは、自死を考えている人に出会ったときに、そのサインに気づき、自死を防ぐための役割を果たす人のことをいいます。死にたいと考えているご家族や友人、同僚がいるとき、そのサインに気づき、自死を防ぐための役割を果たすことができれば、大切な人の死にたいという苦しみが和らぎ、自死を思いとどまってくれるかもしれません。

(2)ゲートキーパーって何をすればいいの

ゲートキーパーがすることはごく簡単にいえば、「気づく」「話を聞く」「つなぐ」の3つです。

①「気づく」ーサインに気づく

そもそも自死を考えている人の中には周りに言えない人もいます。そのような中で周りの人はどうやって死にたいという人のサインに気づくのかということが問題です。死にたい人の中には、職場の問題、経済・生活の問題、家庭の問題、学校の問題などで追い詰められ、孤立している人も多いです。そして、追いつめられる中で、精神疾患に罹患し、死にたいと感じる人も多いのです。精神疾患は、その人が弱い人間だという証なのではなく、病気です。むしろ真面目で頑張っている人の方が精神疾患に罹患したりもします。例えばうつ病の症状としては、簡単に言えば、抑うつ気分(気分が沈む)、興味がわかなくなる、喜びがなくなる、疲れやすくなる、活動的でなくなる、集中力や注意力が下がる、自分に対する評価が低くなる、自信がなくなる、罪悪感や無価値観(生きていても仕方がないという感情など)、死にたいと考える、睡眠障害、食欲がなくなるなどがあります。

このように死にたいと考えている人から色々なサインが読み取れることも多いので、まずは死にたい人が発するサインにはどういうものがあるかを知って、気づくことができるようになることが大切です。

②「話を聞く」ー「肯定」「共感」「理解」が大切

死にたいと考えている人は、その思いを打ち明けることで相手にどう思われるか不安な人も多いです。否定せずに話を聞いて、共感し、理解することだけでも、死にたい人の苦しみが和らぎます。「肯定」「共感」「理解」が大切です。自死を考えているかを質問して確認し、考えている場合に自死をしないように約束してもらうことも大切です。

③つなぐー専門家につなぐ

話を聞いて自死してしまうおそれがあると感じたら、ためらわずに精神科医などの専門家につなぐことも大切です。

「気づく」「話を聞く」「つなぐ」の3つは誰でもできるようになることで、これができればゲートキーパーの役割を果たすことができ、大切な人の苦しみを誰でも和らげて、自死を防止することができるかもしれません。「気づく」「話を聞く」「つなぐ」を実践して、自死のない社会をめざしましょう。

「まきえや」2019年秋号