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センセイの働き方改革は、法制度の抜本的改革と教育予算の大幅増加によるしかない

センセイの働き方改革は、法制度の抜本的改革と教育予算の大幅増加によるしかない

弁護士 村山 晃

長時間残業社会を作ってきた自民党政治

政府は「働き方改革」を進めている、と言います。目に余る長時間労働やそれに伴う家庭破壊・健康破壊が無視できないところに来ていることは間違いのない事実です。

しかし、そんな社会を作ってきたのは誰なのでしょう。労働基準法という労働者を守るための法律で、1日8時間、週40時間という勤務時間が原則として確立されているのですが、ここに裁量労働制や変形労働時間制など労働時間制度の根幹をないがしろにする法制度を次々と導入してきたのは、ほかならぬ自民党政府自身でした。「労働時間の規制緩和」こそ長時間労働を生む最大の原因なのです。

結果、残業時間規制が無かったこととあいまって日本社会に野放しの長時間労働が蔓延していったのです。

そして、この長時間労働で大きな問題になっている職場の一つに学校があります。

国際的に、もっとも長い労働時間・もっとも少ない教育予算

文部科学省が行った教員の労働時間についての全国調査では、中学校の教員が週63時間18分、小学校の教員が57時間25分という結果が出ています。

OECD(経済協力開発機構)という国際機関がありますが、ここの調査で、小学校・中学校ともに、日本の教員の仕事時間は、参加国で最長という結果が出されています。参加48ヵ国での平均仕事時間は中学で38.3時間なのです。

日本の異常な働き過ぎが数字の上からも分かります。

しかも国際比較ではっきりしているのが、国が教育にかける予算の貧困ぶりです。

同じOECDの調査(調査対象・調査時点は上記と異なります)で、日本の教育への公的支出は、34ヵ国で最下位だったのです。平均が4.2パーセントであったのに、日本は2.9パーセントにすぎません。

課題が多いのに、教員が絶対的に不足しています。その原因が国の教育にかける予算の不足にあるということが一目瞭然なのです。センセイを増やすしか解決の道はありません。それをしない結果、教員不足のしわ寄せが個々の教職員の肩に重くのしかかっているのです。

ブラック職場にしている法制度にメスを

今「教員の働き方改革」なるものが叫ばれています。今の法制度(「給特法」という特別な法制があります)では、公立学校の教職員には、「超過勤務手当を出さない」というようになっているのです(これを理解するのは容易ではありません)。しかし、これはもともと「超過勤務をさせない」という原則と一体のものとして規定されたのです。しかし、超過勤務は法律を無視して蔓延していったものの、手当てを出さないという運用は堅持するという状態が続いてきたのです。まさにサービス残業が蔓延する「ブラック職場」そのものになっているのです。

そんな法制度の運用が許されてよいはずはありません。残業手当をしっかりと出させることは、長時間残業を阻止するもっとも有力な手立てです。このような法制度にメスの入らない「改革」が功を奏するはずもありません。

しかし、今回の「改革」は、そこにはまったく手をつけようとしていません。残業の「上限規制」だけを導入しようとしています。それも、何の法的根拠のないままのガイドラインでしかありません。およそ実効性はないのです。そもそも残業はしなくて良いはずのものです。必要なことは残業の上限規制ではなく、残業しなくても良い職場にどうしてしていくかです。

さらなる問題は、次の「改革」の目玉に「一年間の変形労働時間制」を持ち込もうとしていることです。今以上の長時間勤務を合法化しようとしているのです。

学校に真の「働き方改革」を

子どもたちを教える先生が長時間勤務で疲弊していたのでは、良い教育ができるはずもありません。また、長時間勤務の中身が、子どもたちと向き合う時間以外のところで生まれているので、それも子どもたちにとっては不幸なことです。豊かな教育環境の中で、未来をになう子どもらが育って行くように、真の教職員の「働き方」改革の実現は、私たちの課題です。

「まきえや」2019年秋号