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遺言-遺言を書くにあたっての注意点

遺言

5.遺言を書くにあたっての注意点

遺言を書く場合、その他にも、注意すべき点や知っておくと役に立つ知識があります。他にも疑問な点や分からない点があれば、弁護士にご相談下さい。

Q.遺言は口頭で話すだけでも有効ですか?また、私の子どもは未成年ですが、遺言を書くことはできるのでしょうか?認知症の父はどうでしょう?
A.法律上、遺言は書面でしなければならないのが原則ですから、口頭で話すだけでは遺言として認められません。きちんと書面に書き残しておくことが必要になります。

お子さんは未成年ということですが、年齢はいくつでしょうか?未成年者であっても満15歳以上であれば、単独で遺言を書くことができますので、お子さんの年齢によっては遺言を書くことができます。

もっとも、認知症などにより、物事についての一応の判断力(これを「意思能力」といいます)がない方は遺言を書くことができません。ただし、一時的に判断能力を回復したときであれば、医師2人の立ち会いにより遺言をすることができますので、主治医や弁護士と相談してください。

Q.法律で定められた相続人には必ず一定の財産を相続させなければならないのでしょうか。私は、兄弟姉妹よりも自分の子どものために財産をのこしたのですが、何か方法はないでしょうか?
A.まず遺留分の制度について知る必要があります。遺留分とは、各相続人に最低限遺さなければならない割合で、法律によって定められています。例えば、遺言で1人の子どもにすべてを相続させると書いたとしても、他の子どもらが遺留分を主張すれば、相続発生後、特別の請求手続(遺留分減殺請求といいます)をすることで一定の財産を受け取ることができます。相続人が誰であるかによってその割合は変わってくるのですが、遺留分の割合は下記の表のようになります。

表をご覧頂ければ分かりますように、兄弟姉妹には遺留分はありませんので、もし兄弟姉妹に相続させたくないと思えば、兄弟姉妹以外の相続人にすべてを相続させるという内容の遺言を書けばよいことになります。

ご質問の例では、「子どもにすべての財産を相続させる」という遺言を書いておけば、兄弟姉妹に財産が渡ることはありません。

相続人配偶者直系尊属兄弟姉妹
配偶者+子1/41/4  
配偶者+直系尊属1/3 1/6 
配偶者+兄弟姉妹1/2  なし
配偶者のみ1/2   
子のみ 1/2  
直系尊属のみ  1/3 
兄弟姉妹のみ   なし
Q.私の子どもは長年、親である私に対して暴力を振るい、生活に困ると金をせびるなどしてきました。このような子どもにも私の財産を相続させないといけないのでしょうか?
A このように、相続人となる者が被相続人に対し「虐待または重大な侮辱」、「著しい非行」を行った場合、同人を相続人から「廃除」することができます。相続人から廃除された場合、その者は相続人としての権利を失うことになりますから、財産を相続することはありません。

相続人の廃除を行うためには、家庭裁判所に申立を行う必要があります。「廃除」の意思を遺言に記載して、弁護士を遺言執行者に指定しておく方法をとれば、死後、弁護士が「廃除」の申立てをすることになります。

Q.父が遺言をのこして亡くなったのですが、その遺言は、兄が父を脅して無理矢理書かせたものです。このような兄でも相続できるのでしょうか?遺言をわざと破り捨てた場合はどうですか?
A.法定相続人が、相続に関して不正な利益を得ようとして法律に定められた不法な行為をした場合、その者は、法律上当然に相続人としての資格を失います。これを「欠格」といいます。法律上定められた欠格事由には、例えば、以下のようなものがあります。
  • 故意に被相続人あるいは相続について先順位・同順位の相続人を殺し、又は殺そうとして、刑に処せられた者(過失致死や傷害致死は含まれません)
  • 詐欺又は強迫によって、被相続人に遺言をさせたり、既にした遺言を取り消させたり、変更させたりした者
  • 遺言書を偽造したり、既にある遺言書を変造したり、破棄したり、隠匿したしたりした者

相続欠格者は遺贈を受けることもできなくなりますが、代襲相続は認められていますので、相続欠格者に子どもがいる場合、その子どもが相続人となります。

Q.一度遺言を書いたのですが、最近考え直して、別の内容にしたいと思っています。どのようにすればよいでしょうか?
A.一度書いた遺言の内容を変更する場合、その遺言に加除・訂正を加える方法と、その遺言を撤回して新しい遺言を書く方法とが考えられます。

一度書いた遺言に加除・訂正を加える場合、一定の方式を備えることが要求されています。(1)その場所を指示して、変更したことを付記し、(2)これに署名しなければならず、(3)さらに、変更した場所に押印しなければならないのです。

他方、遺言を撤回することはいつでも自由にできます。「前の遺言を撤回する」と明記しても構いませんし、そのような記載がなくとも、前の遺言と抵触する内容の遺言が後に作成された場合、後の遺言で前の遺言は当然に撤回されたものとして扱われます。