取扱業務

セクハラ、パワハラ等

セクハラ、パワハラ等

いじめ・セクシャルハラスメント・パワーハラスメントといった職場における人格権侵害は、その内容や程度は様々ですが、労働者の名誉、プライバシー、身体の安全を侵害する違法行為であり、被害者に大きな苦痛を与えます。被害者は、肉体的・精神的苦痛を受け、最悪の場合は職を失うこともありえます。

また、職場におけるハラスメントは、職場全体の就労環境を悪化させ、使用者にとっても、職場秩序や業務の遂行を阻害し、社会的評価に影響を与える問題です。

1 セクシャルハラスメントとは

Q.私は、従業員3人の小さな会社の経営者です。職場の経理の女の子に、彼氏はいるのかどうか聞いたところ、セクハラだと抗議を受けました。私としては、何の気なしに聞いただけであり、彼女の体に触ったり、性的な意図があったわけでもありません。

私の行為はセクハラですか。セクハラとはどういうものなのですか。

A セクシャルハラスメント(セクハラ)とは、狭義では、雇用上の関係を利用して行われる、相手方の望まない性的行為をいいますが、広義では、相手方の望まない性的な言動をいいます。その内容は様々ですが、労働者が意に反する性的な言動を拒否したことによって解雇、不利益な配置転換、降格、減給等の不利益を受ける「対価型セクシャルハラスメント」や、労働者の意に反する性的な言動(身体接触、発言、視覚)によって、就業環境が不快なものとなったために、労働者が苦痛に感じて業務に専念できないなど、能力の発揮に悪影響が生じるなど、当該労働者が就業する上で見過ごせない程度の支障が生じることを「環境型セクシャルハラスメント」などがあります。

「性的な言動」とは、性的な内容の発言(例えば性的な事実関係を尋ねること、性的な噂を意図的に流すこと、性的な冗談やからかい等)や性的な行動(例えば性的な関係の強要、身体への不必要な接触、わいせつな図画の配布、食事やデートへの執拗な誘い等)を指します。

セクシャルハラスメントが発生する原因には、男女(個人)の感じ方の違いや女性を対等な働き手として見ない意識、社会において、女性を性的対象として見る見方が強いこと、性的役割分担意識があり、女性従業員を「女の子」(あるいは、「おばさん」「パートさん」)などと呼ぶのも、一人の労働者としての人格を無視するものであって、セクシャルハラスメントといえます。

したがって、あなたの場合も、あなたに性的な意図はなくても、相手方の女性があなたの発言に苦痛を感じているのであれば、セクシャルハラスメントにあたります。そもそも、職場の女性労働者を「経理の女の子」と呼ぶこと自体がセクシャルハラスメントにあたりかねないので、注意が必要です。

2 セクハラの被害をうけたら

Q.男性上司からの夜の食事や飲みへの誘いを断っていたら、職場で無視したり、嫌がらせを受けるようになり、「辞めさせてやる」といったメールまで送られてくるようになりました。

精神的につらくなり、仕事に行くことができなくなりました。このまままでは退職も考えざるをえません。どうやって解決すればいいのでしょうか。

A セクシャルハラスメントを受けたとしても、被害者であるあなたが退職する必要はありません。まずは、相手方に行為を止めるよう求めることが必要です。

相手方に対する意思表示は文書に残しておくことも重要です(内容証明郵便などで)。その相手とメールや口頭でやりとりする場合、メールのデータを保存し、会話を録音しておくなどして証拠を残しておきましょう。また、相手方のメールは保存しておき、相手方の嫌がらせについても録音するなどして、証拠を残しておきます。

また使用者には、労働者が良好な環境で生命・身体等の安全を確保しつつ労働出来るよう就労環境に配慮する義務があります。男女雇用機会均等法では、使用者に、セクシャルハラスメントを防止する義務を課しています。

そこで、あなたから、経営者(又は職場のセクハラ相談窓口)に対して、当該男性上司からのセクシャルハラスメントを止めさせ、再発を防止する措置を取ることを求めることができます。

それでも、解決出来ない場合には、弁護士などの専門家に相談しましょう。雇用均等室や都道府県労働局といった行政機関に相談し、助言、指導、あっせんを求めることも考えられます。

3 セクシャルハラスメントによる被害と防止

Q.職場においてセクシャルハラスメントを防止するために、どのような点に気を付ければいいでしょうか。
A.使用者には、労働者に対する就労環境配慮義務やセクシャルハラスメントを防止する義務があります。

具体的には、

  • (1) 就業規則などによる排除すべきセクシャルハラスメントの内容の規定、制裁規定の整備、方針を従業員等に周知徹底、研修による啓蒙
  • (2) 相談窓口の開設、相談担当者及び苦情処理制度等システムの構築、人事部門との連携による円滑な対応、対応マニュアルの作成
  • (3) 事実調査
    職場におけるセクシャルハラスメントが生じた場合における迅速かつ正確な事実調査。調査担当者(機関)による公正な調査方法

事実調査に際して留意すべきことは、労働者のプライバシーに配慮し、受容的な態度で調査を行い、かつ被害者と加害者が接触する機会をなくすことが大切です。また、第三者から事情聴取する必要もあります。さらに、客観的資料や記録を保存することも必要です。

使用者はセクハラを受けた労働者の退職回避のため、配置転換等の雇用管理上の措置を講じる必要があります。また、加害者に対し自宅待機・配転などの措置をとる必要があります。使用者としては、現実に生じているセクハラの場合だけでなく、今後のセクハラの発生のおそれやセクハラとの判定が微妙な場合も、積極的に相談・苦情に対応する必要があります。

4 パワーハラスメントとは

Q.この不況でなかなか営業成績を上げることができないでいます。営業成績があがらないのは他の人も同様なのに、私だけ、職場の上司から、「無能」、「バカ」、「給料泥棒」などと罵倒され、「嫌ならクビだ」、「明日からくるな」、などと怒鳴られる毎日が続いています。

我慢しなければならないのでしょうか。これはパワハラではないのでしょうか。

A いわゆるパワーハラスメント(パワハラ)とは、「職場などのパワーを背景にして、本来の業務の範疇を超えて、継続的に人権と尊厳を侵害する言動を行い、就業者の働く環境を悪化させ、あるいは雇用不安を与えること」と言われています(岡田康子 「許すなパワーハラスメント」)。

セクシャルハラスメントと同様、職場における人格権侵害の一類型であり、解決方法や使用者の防止措置等については、上記Q2、3と同様になります。

ただ、上司による部下に対する注意や叱責は、業務の遂行上一定程度は必要ですので、直ちに違法ということにはなりません。業務の必要性や行為の目的、労働者の不利益の程度といった基準に照らして、違法性を判断することになります。

あなたの場合は、あなただけに対して行われているという点で、真に目的が指導にあるのかどうかが不明ですし、他の社員もいる前で、「無能」、「バカ」、「給料泥棒」などと罵倒し、「嫌ならクビだ」、「明日からくるな」、などと怒鳴る必要性も認められないでしょう。しかも、それが、毎日続いているとなれば、あなたがうける精神的負担は大きいと思われます。

そこで、パワーハラスメント(違法行為)であるとして、上記セクハラと同様の方法で解決することが考えられます。