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「被害回復給付金制度―犯罪被害財産支給手続き」について~泣き寝入りはしません

「被害回復給付金制度―犯罪被害財産支給手続き」について~泣き寝入りはしません~

岩橋 多恵弁護士 岩橋 多恵

序 ご存知ですか?「被害回復給付金制度」

 振り込め詐欺やヤミ金融などの財産被害の犯罪では、犯人が捕まっても、犯人がそのような犯罪によって得た利益の没収や追徴が禁じられていたために、泣き寝入りをせざるをえませんでした。

 しかし、組織犯罪処罰法の改正(平成18年12月1日から施行)により、詐欺罪や高金利受領罪(出資法違反)などの財産犯は、その犯罪が組織的に行われた場合やいわゆるマネーロンダリングが行われた場合、犯人から財産をはく奪することでできるようになったことから、その財産を元に、被害回復給付が可能となったのです。「被害回復給付金制度」は、そのような被害者に一定の要件のもとに被害回復を図る制度です。これは、一定の財産犯等の犯罪行為によりその被害を受けた方から得た財産等を犯人からはく奪(没収・追徴)する刑が確定した場合、はく奪した「犯罪被害財産」を金銭化して「給付資金」として被害者に支給する制度です。詐欺罪、恐喝罪などの財産犯以外に出資法における高金利受領罪も含まれます。その手続きが開始されることが決定されると、被害者は、担当している検察庁に申立、支給すべきとの「裁定」が出ると、支給されるというものです。

 最近、この制度の利用をした事例に関わりましたのでご紹介致します。

事案の概要(詐欺にご用心!)

 Aさんは、ある会員制レジャークラブに入会していたのですが、あまり利用できていませんでした。そんな時、Aさんに「あなたの加入しているレジャークラブは、解約やサービスが利用しにくいという苦情がもれてきた。あなたがまともに退会するなら多額の解約違約金を支払わねばならない。今回、割安な費用で解約することができるので、その話を聞かないか」と電話がかかりました。気持ちを動かされ、出かけていくと、「自社(B)の取扱商品を購入することによって加入する会員制レジャークラブを無料で退会又は解約することができる」などと言われ、Aさんは、それを信用し、B社の商品を買うことを決め、商品の購入代金を振り込んでしまったという事件です。

 この事件の依頼を受け、話の内容が詐欺の可能性が極めて高いと思われたので、その点も指摘しながらも、B社に対して、クーリングオフの内容証明を送り、全額の返金の請求交渉を開始しようとしました。ところが、相手方と連絡がとれない状況の中で、まもなくしてB社が、破産手続きを開始したことを知りました。Aさんは破産を知ると回収できる期待は持てないと債権届けをすることを躊躇したのですが、とりあえず、「詐欺被害による損害賠償請求権」として債権届けをしてもらいました。破産手続きで、配当は多少あったのですが、Aさんの被害回復は極めて不充分でした。こうして、私の仕事としては、破産債権届けをすることで一旦終了していました。

犯罪被害財産支給手続開始決定公告さる!

 ところが、たまたま弁護士会の通知の中に「ある事件での犯罪被害財産支給手続開始決定公告」がなされた旨の知らせを目にし、何気なく読んでいるとどこかで聞いた事件の内容、会社や販売員の名に覚えがありました。そこで、Aさんの事件だと思い出したのです。

 私は、Aさんに連絡しました。Aさんには、既に、検察庁が被害者として覚知しており連絡は来ていましたが、申請(申立)を逡巡していました。そこで、手続きに不明な点があれば、アドバイスすることを説明すると手続きをすることを決断されました。

泣き寝入りしなくて良かった!

 Aさんは、おかしいと思ったときに、すぐに弁護士に相談し、内容証明を送付し、また破産手続きに債権届けをしていたからこそ、検察庁が被害者であることを把握していたのです。「犯罪被害財産支給手続き」は、申請期間が3箇月などの短期間です。従って、検察庁が、被害者として把握してなければ、この手続きの申請の機会を逃していた可能性があります。

 被害にあったと思ったら、弁護士に相談して、できることから行い、証拠を残しておくこと、加害者の破産手続きが開始しても諦めないことが大切だと感じました。

支給手続き開始事件の情報を得るには

検察庁のホームページを見れば、支給手続きが開始された事件の情報を得ることができます。事件によって担当している検察庁は異なるのですが、全国の支給手続開始事件の一覧が出ていますので、どの検察庁がどの事件の手続きを行っているかを知ることができます。

「まきえや」2012年秋号