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動物愛護団体から動物虐待で訴えられた

動物愛護団体から動物虐待で訴えられた!

糸瀬 美保弁護士 糸瀬 美保
化学同人刊行、「化学」2005年11月号掲載
今月の相談大学で動物実験をしていたら、動物愛護団体から動物虐待であるとして訴えられました。このような場合、どう対応すべきでしょうか?

動物愛護管理法とは?

「動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護管理法)」は、「動物の保護及び管理に関する法律(旧動物保護管理法、昭和48年9月成立)」が、平成11年 12月に改正されてできた法律です。平成17年6月22日に動物愛護管理法が一部改正、公布され、公布の日から1年以内に施行されることになっています。

この法律は、基本原則として「動物が命あるものであることにかんがみ、何人も、動物をみだりに殺し、傷つけ、又は苦しめることのないようにするのみではなく、人と動物との共生に配慮しつつ、その習性を考慮して適正に取り扱うようにしなければならない」(2条)と定めています。そして、動物を虐待した者に対する罰則も定めています(現行法27条、改正法44条)。

動物虐待に対する罰則

愛護動物をみだりに殺したり、傷つけた場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます。また、愛護動物を遺棄したり、みだりに給餌または給水をやめることによって衰弱させるなどの虐待を行った場合、現行法では、30万円以下の罰金に処せられますが、平成17年の改正法では、罰金の額を50 万円以下として罰則を強化しました。ここでいう愛護動物とは、牛、馬、豚、めん羊、やぎ、犬、ねこ、いえうさぎ、鶏、いえばと、あひるのほか、人が占有している動物で、ほ乳類、鳥類、は虫類に属するものをいいます。

動物実験は動物虐待にあたるのか?

法律上、動物は「物」であり、これが飼養されれば人の所有に帰することになりますが、所有者といえども、まったくの自由ではなく、虐待の禁止によって実質的な所有権の制限を受けることになります。しかし、動物実験や家畜などの利用は、その合理的な目的と社会的役割に応じて適正に取り扱い、利用していくことで、「人と動物との共生」が図られていくものと考えられています。

そこで、動物実験の場合のように、動物を科学上の利用に供する場合は、その合理的な利用の範囲内において不必要な苦痛を与えないなどの配慮がなされているものであれば、動物を「みだりに」殺したり、傷つけたり、苦しめたりして、虐待したことにはならないのです。

科学上の利用に供する場合

動物実験などにより、動物を殺さなければならない場合には、できる限りその動物に苦痛を与えない方法をとらなければなりません。具体的には「化学的又は物理的方法により、できる限り処分動物に苦痛を与えない方法を用いて当該動物を意識の喪失状態にし、心機能又は肺機能を非可逆的に停止させる方法によるほか、社会的に容認されている通常の方法によること」とされています(総理府告示第40号「動物の処分方針に関する指針」)。

また、動物を動物実験など科学上の利用に供する場合にしなければならない配慮が定められており、現行法では「その利用に必要な限度において、できる限りその動物に苦痛を与えない方法によってしなければならない」と定められ、動物実験などのあとに動物が回復の見込みのない状態に至ったときは、「直ちにできる限り苦痛を与えない方法によってその動物を処分しなければならない」とされています(24条)。

ところが改正法では、「科学上の利用の目的を達することができる範囲において、できる限り動物を供する方法に代わり得るものを利用すること、できる限りその利用に供される動物の数を少なくすること等により動物を適切に利用することに配慮するものとする」(41条)とされ、動物実験の方法だけではなく、できる限り実験に動物を使用しない配慮が求められています。

動物実験に際しての方法や処分についての具体的な基準として、「実験動物の飼養及び保管等に関する基準」(総理府告示第6号)があります。この基準の対象となる「実験動物」は、「実験等の利用に供するため、施設で飼養し、又は保管しているほ乳類及び鳥類に属する動物」を指しますので、虐待に罰則が課せられる愛護動物よりも範囲が狭くなっています。また、ここでいう「実験等」とは、「動物を教育、試験研究又は生物学的製剤の製造の用その他の科学上の利用に供すること」をいいます。

そして、動物実験を行う者は、「実験等の目的を達成するために必要な範囲で実験動物を適切に利用するように努める」こととされており、実験などにあたっては、「その実験等の目的に支障を及ぼさない範囲で麻酔薬等を投与すること等によりできる限り実験動物に苦痛を与えないようにするとともに、保温等適切な処置を採ること」、そして「実験等を終了し、又は中断した実験動物を処分するときは、速やかに致死量以上の麻酔薬の投与、又は頸椎脱臼等によって、実験動物にできる限り苦痛を与えないようにすること」とされています。

また、実験動物を飼養または保管するにあたっては、「その生理、生態、習性等に応じて適切な設備を設けるようにすること」、「適切に飼料及び水の給与を行うこと」など、「実験動物の健康及び安全の保持に努めること」が求められています。

今回の相談の場合

したがって、大学において生化学や医学の実験のために動物を利用し、飼養する場合については、その方法や設備、管理において、上記のような配慮がなされている限り、動物虐待にはあたりません。そのため、訴えられたからといって、実験動物を利用した研究をやめなければならないわけではありません。

ただし、実験であれば動物に何をしてもよいということではありません。動物実験を装って動物を虐待すれば、当然ながら動物虐待となります。今回の相談においてもまず、大学における実験動物の飼養・保管状況が適切か、動物にできる限り苦痛を与えない実験方法がとられているかといった点を見直してみる必要があるでしょう。

コラム

ニホンザル譲渡差止請求事件

札幌市の住民が市に対して、札幌市円山動物園において飼育されているニホンザルを、実験動物繁殖母集団として利用する目的で京都大学霊長類研究所へ譲渡することの差し止めを求めた裁判〔札幌地方裁判所 平成15年(行ウ)第21号〕がありました。この裁判では、ニホンザルの譲渡が動物愛護の思想からほど遠い動物実験に関連するものであって、動物愛護管理法に基づき定められた「展示動物基準」(展示動物等の飼育及び管理に関する基準)に反し、違法であることが主張されました。

ただ、住民の請求は地方自治法242条の2第1項1号に基づくものであったことから、違法性についてはニホンザルの譲渡が札幌市に財産上の損害を与えるか否かが判断の対象となり、展示動物基準に違反するかどうかについては判断されませんでした。