弁護士コラム

嘱託職員だって働き続ける権利が~京都府医師会に仮処分申立

嘱託職員だって働き続ける権利がある! ~京都府医師会を相手に仮処分申立~

本日、京都府医師会(以下「医師会」といいます)で働く嘱託職員2名が雇用の継続と賃金の支払を求めて京都地方裁判所に労働審判の申立を行いました。これと併せて、仮処分の申立もすでに2月26日に行いました。

事件の概要

事の発端は、2009年2月、医師会の嘱託職員として働いていた50代のAさんと30代のBさんに対し、医師会が2010年3月いっぱいで雇用契約を打ち切ると突然通告してきたことです。しかも、その理由は「60歳未満の嘱託職員を採用したことは間違いだった」という信じられないものでした。使用者自らの間違いを是正し、正職員として処遇するというのでなく、反対に首を切るというのですから、これでは使用者の落ち度を労働者に転嫁しようとするものであり、当然許されるはずがありません。AさんとBさん、そして京都府医師会労働組合は、雇用の継続を求めて一丸となって交渉を行ってきましたが、医師会の契約打ち切りの方針は変わらず、逆に「僕がよかれと思いあんたたちを嘱託にしてやったんだから。僕の思いを汲んでよ。」などと言う始末でした。

合理性を欠いた医師会の主張

今回の交渉の中で明らかになった医師会の主張は、「AさんとBさんの契約には期間の定め(1年)があるから、期間満了時に契約を打ち切っても何の問題もない。」というものです。しかし、AさんとBさんは、嘱託職員としての採用時に契約期間は1年という説明は全くなく、当然定年まで働けるものと思っていましたし、採用時の医師会の理事会の議事録にも期間の定めは記載されていません。従って、契約期間が1年という前提が間違っています。

仮に、百歩譲って、期間の定めがあるとしても、Aさんの場合は8年半、Bさんの場合は6年も継続して勤務してきており、その担当する業務の量、内容、勤務時間等は本来正職員が担当すべきものでした。また、その勤務ぶりも医師会も認めるほど良好なものでした。だからこそ、AさんもBさんも継続して雇用されることを期待していました。このような場合には期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態にあることから、単に契約期間が満了したことをだけで契約の終了にはならず、契約を打ち切ることにつき客観的に合理的な理由があり、社会通念上も相当と認められる場合でなければ、契約の更新を拒否することができないことは最高裁の判例からしても明らかです。医師会の契約打ち切りの理由は、「60歳未満の嘱託職員を採用したことは誤りだった」というのですから、合理的な理由があるとは到底言えず、このような不当な理由で嘱託雇用契約を打ち切る(雇止め)ことが許されるはずがありません。

雇用継続を求めて

定年まで働けるものと信じて、長年真面目に働いてきたAさんとBさんは、医師会から契約打ち切りの通告を受けて大きなショックを受けています。医師会は「異議があるなら外部の機関でもどこでも訴えたらよい。」などと開き直り、およそ誠実な応対をしようとしません。使用者側の落ち度を真面目に働き続けてきた労働者に転嫁することが許されていいはずがありません。AさんとBさんの雇用の継続を確保すべく、当事務所は弁護団を先頭に全力を尽くす決意ですので、どうかご支援下さるようお願いします。

(弁護団) 弁護士 浅野 則明
弁護士 谷  文彰
記者会見

弁護団・京都府医師会労働組合による記者会見

2010年3月