弁護士コラム

改正貸金業法「総量規制」とクレジットカード「現金化」問題

改正貸金業法「総量規制」とクレジットカード「現金化」問題

貸金業法が改正されました

2006(平成18)年1月13日の最高裁判決により、サラ金や商工ローンなどが利息制限法で定められた以上の高金利を取ってきたことが事実上否定されることになり、いわゆる「グレーゾーン金利」の温床となっていた貸金業規制法についても、同年秋の臨時国会において全面改正されました。改正により、法律の名前も貸金業規制法から「貸金業法」と改められることになりました。改正貸金業法は、昨年(2010年)6月に完全施行されています。

改正貸金業法では、利息制限法で定められた金利(15%~20%)以上の高金利は認められなくなりました。また、高金利と同様に社会的に問題となっていた、貸し付けの際の審査が形骸化し、実質的に無審査の状態となっていたことや、借り主の返済能力を大きく超えた過剰な貸し付けが行われていたことについても、規制がかけられることになりました。

改正貸金業法による「総量規制」

改正貸金業法では、貸し付けの総量規制が行われることになりました。これは、借り主の返済能力を大きく超えた過剰貸付を防止するためのものです。これにより、原則として年収の3分の1を超える金額の貸し付けはできなくなりました。

ただし、いくつかの類型の貸し付けはこの規制から除外されています。例えば、不動産購入や不動産の改良(リフォーム)を目的とする貸し付け、不動産担保貸し付け、自動車購入時の自動車担保貸し付け、高額医療費の貸し付けなどです。これらの「除外」された貸し付けについては、総量規制の対象とはならず、総量規制の判断をする際の貸付残高には算入されないことになります。

また、それ以外にも、配偶者と合わせた年収の3分の1の範囲での貸し付けや、緊急的な医療費の貸し付け、個人事業者への貸し付けなどの場合も、例外的に貸し付けが認められることになります。ただし、これら「例外」として認められる貸し付けは、貸し付け自体は禁止されませんが、総量規制の判断をする際の貸付残高としては算入されることになります。

総量規制に伴って、貸金業者には返済能力調査義務が課せられ、1社での貸し付けが50万円を超える場合、または、他社からの借り入れを合わせて100万円を超える貸し付けを行う場合には、源泉徴収票や納税証明書などの収入を証明する書面の提出が求められます。また、専業主婦など、配偶者と合わせた年収の3分の1の範囲での貸し付けに該当する場合には、配偶者の同意書や住民票など夫婦関係を証明する書面の提出が求められることになります。

新たな問題「クレジットカードショッピング枠『現金化』」

これらの規制により、借入総額が年収の3分の1をすでに上回っている場合や、専業主婦が夫に内緒で借り入れを行っていた場合など、サラ金での新規借入や借入額の増額ができなくなるケースが出てきています。

そもそも、そういった方々は、本来の返済能力を超えた過剰な貸し付けを受けており、多重債務者に該当する人も少なくありません。ですから、根本的には債務整理などの法的な解決が求められています。しかしながら、そこに目を付けた悪質な業者が出てきました。それがクレジットカードのショッピング枠「現金化」です。

多重債務者の多くは、クレジットカードのキャッシング枠については、すでにいっぱいになるまで使ってしまっていますが、ショッピング枠についてはまだ余裕を残しています。そのショッピング枠を「現金化」「買い取り」するという宣伝広告が、インターネット上を中心に数多くなされています。しかし、ショッピング枠の「現金化」には非常に大きな問題があります。

ショッピング枠を「現金化」する業者のほとんどは、クレジットカードのショッピング枠で買い物をさせ、それを換金する形をとっています。換金の際には、手数料などの名目で数%~数十%を差し引かれますが、これを年利に直して計算すると、ヤミ金なみの超高金利になることも少なくありません。また、インターネットを通じた「現金化」の場合、キャッシュバックのお金が送金されないなどといったトラブルも見られます。そして何より、換金目的でのクレジットカードの使用はクレジットカードの規約違反であり、販売店やカード会社などとの関係では詐欺にあたる行為になりますので、トラブルになっても解決がとても難しくなってしまっています。

借金問題の根本的解決のためには法律相談

上でも述べたとおり、年収の3分の1を超える借り入れを行っていたり、クレジットカードのキャッシング枠がいっぱいになるまで借り入れをしてしまうような状況の場合、債務整理や個人再生などといった法的な解決が求められています。その場しのぎでショッピング枠を「現金化」しても、問題を先送りするだけではなく、問題をさらに悪化させ、解決を困難にしてしまいます。借金問題を根本的に解決するためにも、法律相談をご利用ください。

2011年4月