京都第一

事件報告:下鴨神社の大型倉庫建設計画撤回

事件報告:下鴨神社の大型倉庫建設計画撤回

2015年3月、下鴨神社(賀茂御祖神社)の境内南端、世界遺産保全のために設けられたバッファゾーン内に定期借地権を設定し、8棟からなる低層高級分譲マンションを建設する計画が明らかになりました。下鴨神社は、 年間8000万円の地代により「式年遷宮」の費用を賄うためと説明していますが、下鴨神社の財政状況は明らかではありません。

また、マンション建設に伴って祭具の移転先が必要になるため、下鴨神社北東の一角に大型倉庫を新築することを計画しました。しかし、ここは世界遺産のコアゾーン( 世界遺産の核心となる地域)であり、市街化調整区域として厳しく開発が規制されており、例外的に建築をするためには、都市計画法上の建築許可を得る必要があります。ところが、例外の例外となる規定を濫用し、京都市は建築許可を不要とする違法・不当な判断をしたのです。

そこで、この間、計画に反対する地元住民は、マンション建築計画に関しては風致許可取消訴訟(係争中)、建築確認の取消しを求める建築審査請求(棄却裁決のため取消訴訟を予定)、大型倉庫に関しては建築審査請求(棄却裁決)、建築確認取消訴訟(係争中)を提起して計画を争ってきました。

こうした中、今般、大型倉庫の建築計画が撤回されることになりました。上記建築審査請求での審査会の裁決書は、結論としては棄却とする一方で、裁決理由の「矛盾」を自ら認めるような異例の付言がなされ、法令に基づかない行政運用がなされていること、また行政運用の恣意性を事実上指摘するものでした。今回の計画撤回は、このような裁決書を踏まえ、京都市側において「裁判では敗訴する」という判断を行ったためと思われます。

この間、京都市は特定の寺社や企業のための行政を進めています。このような態度を改めさせ、マンション建築計画を阻止するために、弁護団は引き続き頑張ります。

当事務所からは、飯田、藤井、寺本、高木が弁護団に加わっています。

弁護士 藤井 豊

「京都第一」2016年夏号