京都第一

労働事件 特集7:洋菓子店マールブランシュと和解で勝利的解決 ~障害者に対する不当雇止め事件~

労働事件 特集7:洋菓子店マールブランシュと和解で勝利的解決 ~障害者に対する不当雇止め事件~

障害者雇用枠での採用

京都の人気洋菓子店マールブランシュを経営する会社は、障害者雇用に取り組む企業として、行政のセミナーの講師を担当したり、表彰を受けたりしていました。その一方で、軽度の知的障害がある原告に対し、不当な雇止めを強行したのです。

原告は、高等養護学校在学中から会社の製造工場で就労体験を重ね、卒業と同時に採用されました。雇用継続を前提とした障害者雇用枠でしたが、身分はパート、当初の契約期間は4カ月、時給は学生アルバイトよりも低い条件でした。それでも、原告は一般の労働者と同じ製造業務に従事し、まじめに働いていました。

不当雇止めの通告と配置転換

入社して約2カ月後、アルバイトが更衣室に放置したスマホから、何者かがいたずらメッセージを送るという事件が発生します。同時刻直前の防犯ビデオには、たまたま休憩時間中であった原告が更衣室に入室する姿が映っていました。それだけで会社は直ちに原告を犯人と断定し、弁解の機会も与えずに更新拒絶と清掃業務への配置転換を決定したのです。

この事件は不可解な点が多く、唯一の証拠のはずの防犯ビデオの時刻の正確性すら確認されていませんでした。労働局の介入で、会社はいったん雇い止めを撤回したものの、原告の保護者が謝罪と事実経緯の説明を求めたところ、これを拒否して雇止めを強行しました。

和解で解決

なぜ、障害者雇用で表彰される企業が、まじめな仕事ぶりを評価していたはずの原告を疑ったのか。証人尋問で、会社の担当者は、「突発的に原告に何かが起こった」「特に様子がおかしくなかったので、余計怖いなと」思ったなどと、平然と障害者への偏見むき出しの証言を行い、傍聴席を唖然とさせました。

しかしながら、地裁判決は契約更新の期待権を認めながら、原告の請求は棄却しました。障害者差別の点にも、原告のまじめな勤務態度にも一切言及せず、「障害者は文句を言わず働け」と言わんばかりの内容でした。控訴した大阪高裁では、会社の「遺憾」の意の表明と、給与1年数カ月分に相当する解決金を内容とする勝利的和解で解決することができました。

弁護士 大島 麻子

「京都第一」2017年夏号