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事件報告:14級の認定が異議申立で8級に繰り上がり! 重大交通事故による後遺障害

事件報告:14級の認定が異議申立で8級に繰り上がり! 重大交通事故による後遺障害

弁護士 荒川 英幸

Aさんは、重大交通事故で脳挫傷、外傷性くも膜下出血、多発骨折などの重傷を負い、意識障害が約40日も続きました。家族が連日ベッドの横で声をかけ続ける状態でした。また、血管損傷や内出血による組織壊死の危険があったことから緊急手術が行われ、気管切開や人工透析も行われました。更に、5本もの歯が失われたことから、後日、インプラント手術も必要となりました。

Aさんの必死の闘病と家族の献身的な支えによって、Aさんは相当の回復をしましたが、体の各所の痛み、脱力、不安定感などに加えて、物事をすぐに忘れたり、伝えたいことを上手く伝えられなくなり、足の神経障害のために片方の足先が下がったままになりました。このため、元の職場に復帰することもできなくなりました。

加害者の任意保険の弁護士から、後遺障害診断書を送るように指示されたAさんは、主治医と歯科医に作成してもらいました。しばらくして、自賠責の保険会社から連絡がありましたが、そこでは後遺障害の等級が14級とされていました。自賠責保険の後遺障害等級は最高の1級から最低の14級までありますが、14級は、客観的証拠はないが局部の神経症状(痛み、しびれなど)が将来においても回復が困難と認められるというもので、追突事故などの「むち打ち」によって相当期間通院した被害者が典型です。前述のとおりの重傷であったにもかかわらず、「むち打ち」と変わらないという訳です。更に、5本の歯がなくなったことについても、事故から約2か月も後に、残った歯について研修医が書いた1行のコメントを根拠に事故と無関係とされました。これでは、高額なインプラント費用も全て自己負担となります。

Aさんから依頼を受けた私は、まず被害者請求を行って14級の保険金を受け取ってから、異議申立ての準備を始めました。大量のカルテを分析して、どの時点でどのような所見が認められ、医師がどのような判断をしたのかを整理した上で、主治医と歯科医との面談を重ねました。新たな後遺障害診断書を作成してもらっただけでなく、説明を受けた内容を整理して書面化し、その内容に不適切な点はないという回答書を得ました。それに加えて、カルテや文献なども資料として自賠責保険に異議申立を行った結果、8級に該当するという認定を得ることができました。高次脳機能障害と足関節の機能障害だけでなく、4本の歯の喪失と事故との因果関係も認められたのです。

これまで14級を9級にした経験はありますが、6級の繰り上がりは私にとっても初めてのことです。自賠責保険金額は14級が75万円、8級が819万円ですが、これにとどまるものではなく、裁判所基準による損害額の計算上の差は14.6倍にもなります。

任意保険は、自賠責保険の上乗せ保険ですので、本来は、被害者がそれぞれに請求することになります。ところが、実際には、任意保険が自賠責分もまとめて取扱う一括請求(一括払い)手続が当然のように行われています。被害者にとっては便利なようですが、実際にはAさんのようなとんでもない結果が生じています。また、後遺障害が事前認定されても、示談が成立しない限り1円も支払われませんので、兵糧攻めになります。交通事故に精通した弁護士に依頼し、必要な資料を集めた上で、被害者請求を行うことが何より大切です。

「京都第一」2019年夏号