地域の状況と問題の背景
計画地は、京都市中京区の壬生地域。隣接する旧前川邸(写真)等、新選組関連の史跡が集積しています。道路は各所で幅員4mを切る細街路で、建物はほとんどが2階建てで、15mを超えるマンションはありません。
京都市では新景観政策(2007年)により、歴史的中心市街地の高さ規制は31mから15mになり、景観規制も強化されました。しかしながら、壬生地域は、景観地区に位置づけられ、景観計画も策定されたにもかかわらず、20m規制のままであったため、7階建て、108戸のワンルームマンションが計画されたのです。
開発許可の経緯
2019年12月、前面道路が4mを切るH宅は、事業者(大阪市)から、マンション計画を秘したまま「南側に隣接する駐車場を取得したので道路を4mに拡幅したい」と同意を求められ、同意してしまいました。
審査請求の取り組みと成果
これに対し、H宅の同意は【詐欺・錯誤】であるとして、【無効・取消】通知を送ったうえで、開発許可の取消を求めて、上記史跡を含む周辺住民509名(弁護団6名)が、京都市開発審査会に開発許可取消を求め、併せて執行停止を求めました(8月7日)。
11月24日付の裁決は、計画地に隣接していないH宅の請求人適格は認めず、旧前川邸ら隣接住民にのみ適格を認め、【棄却・却下】しました。
他方、【付言】で、「開発許可の前提である道路拡幅の同意が得られていない状態で、工事の着手は許されない。」と宣言し、結果的には、工事差止めと現計画を撤回させる成果を得ることができました。
裁決本文の内容については不十分な点が多々ありますが、地域ぐるみで審査請求をおこない、マスコミも大きく取り上げたことが、短期間での成果に結びつきました。
「京都第一」2021年夏号