京都第一

無痛分娩で事故をなくすために

無痛分娩で母子ともに重い後遺症を負った事件を担当しました。医師が麻酔剤を誤って「くも膜下(脊髄腔)」に注入してしまい、母親の血管が拡張して血流が途絶え酸欠となり、母子ともに重い脳障害の後遺症を残してしまった事案です。2015年に提訴して6年間裁判を継続し、判決を得ました。医院側は当初は全面的に過失を争い、適切な処置をした、カテーテルのテストも行った、客体急変後も最善を尽くしたなどと主張していましたが、原告らの反論にすべて崩壊しました。

無痛分娩というのは麻酔を使用して、痛みを感じさせず分娩を行うものです。それ自体は理想的なものですが、麻酔剤を使う以上相当の慎重さが求められます。麻酔は背中側から投与するのですが、脊髄の手前の「硬膜外腔」という脂肪などの組織が詰まっている部分にカテーテルを入れ、徐々に麻酔剤を注入するやりかたです。大事なのは、カテーテルの先端が硬膜外腔に止まっていることを絶対確認することです。また、その確認ができたとしても、あとで妊婦の体がすれば十分回復します。丁寧に行うことと処置に必要な昇圧剤や呼吸バッグの準備があれば大丈夫です。

要するに、あらゆる準備を怠らず、初めから終わりまで、丁寧に麻酔を投与し、患者の様子を観察することに尽きます。医療でミスがあると後遺症も大きくなりがちです。このような事故がおきないように願うとともに患者さんの救済に努めたいと思います。

「京都第一」2021年夏号