京都第一

[Special Interview] よいものはつなぐ、あかんもんはリニューアル
弁護士から京都市長をめざす 福山 和人さん(ふくやま かずひと)

京都市政に挑戦予定の福山和人弁護士(京都法律事務所)にお話しを伺いました。福山さんは弁護士として、「社会がまともなら、この人がこんなに追い詰められることはなかったのに」と思うことが何度もあり挑戦を決意。市長になったら「まず市役所の玄関口に市長室を移し、開かれた市政を実現する!」と意気込んでいます。

子どもたちと子育て世代が暮らしやすい京都のために

藤井 豊 京都市の民間保育園への補助金が13億円削減されました。

福山 2人の子どもを育ててきて、保育士さんには本当に感謝しています。補助金削減で保育士の賞与カット、昇給も11年目でストップするなど、子育ての専門家の労働を軽んじていると憤りを感じます。市長になればカットされた補助金は直ぐに元に戻します。

藤井 小中学校の抱える課題については?

福山 不登校が過去最高との報道がありました。先生方の働きすぎも問題です。
 教員の世界では、給特法という法律によって、一律4%の調整手当と引き替えに残業代はゼロというのが、50年間まかり通っています。全国一斉学力テストによる「学力競争」で子どもも追い込まれています。
 給特法と学力テストが二大元凶なので、これらをなくしたいです。学校に行きづらい子どもたちを各校で受け入れる環境整備に政治の責任でチャレンジしたいです。

藤井 少子化で子どもが減ってきて、学校の統廃合が進んでいます。

福山 京都市の小学校は、町内のいろんな団体が使うし、避難所にもなっていて、地域のハブの役割をしています。統廃合は賢明ではありません。

藤井 中学校給食や給食費の無償化は?

福山 中学校給食約2万6千食をセンターで作って、2時間以内に各校に配送するというセンター方式の案が出ていますが、物理的に可能なのか、アレルギー対応など安全面でも問題があります。食材を地元の商店から仕入れて、経済を回していくという意味でも、自校方式は優れています。コストは単年度で比べるとそんなに違いません。
 全国的な流れでもある給食費の無償化は、政策に掲げる予定です。

藤井 子育て世代からは市内の住宅を買えないという声を聞きます。

福山 京都市は建物の高さ規制を緩和しましたが、規制緩和したニューヨークでは、逆に地価が上がっています。このやり方は的外れです。市営住宅の空き家を改修し、若い人の住宅ニーズにも応えたい。LRT(次世代型路面電車)やコミュニティバスなど交通網も整備したいです。

原発のリスクを見極めて自分らしく暮らせる街を実現

高木 野衣 福島原発事故の避難者が国と東電に賠償を求める訴訟に取り組んでいます。原発事故は、故郷、財産、人間関係、なりわいを奪いました。京都市民を守るため、市長が出来ることは何でしょうか。

福山 私は大飯原発差止訴訟に取り組んでいます。全村避難を強いられた福島県飯舘村は原発から40キロで、左京区の花背小中学校は大飯原発から38キロの距離。もし深刻事故が起これば地域が崩壊します。
 京都市は関電の大株主です。国が60年超の老朽原発を運用する方向の中、大飯原発の再稼働について同意権を京都市に付与するよう協定締結を求めます。市民へはヨウ素剤配布や実効的な避難対策を示したい。
 再生エネルギーの推進も大切。学校や市役所、市関連施設で屋上にソーラーパネルを設置するなど、関電の電力は買わず、自分たちで電力を作って地域で回せば、地域経済の活性化にもつながる。脱原発の旗を京都市長として世界に発信したいですね。

高木 全ての市民が自分らしく暮らせる京都市となって欲しいと考えています。京都市はパートナーシップ宣誓制度を開始し、同性カップルで市営住宅の入居が出来る等、前進面もありますが、更にどんな取り組みを考えていますか。

福山 京都市は多様な人々が集まるダイバーシティの町です。国籍も個性も色々です。それを受け入れてきた町だから、昔から京都は文化や芸術も盛んで、その気風が「京都らしさ」にもつながっています。京都市は多様性を大切にする町だともっと発信し、民間企業にも認証制度等を尊重した企業運営をしませんかと呼びかけたいですね。

高木 「レインボー風呂ジェクト」で話題になった別府市では、職員研修をして、窓口に小さなレインボーフラッグを立てています。安心して相談できる窓口だという目印になって良いなと思います。

福山 それはいいですね。ぜひ京都市でも参考にしたいです。

真の京都の発展につながる規制のありようを模索する

森田 浩輔 京都市は2023年4月、人口減と財政難への対応策で、JR京都駅南側など市内5地域の建物の高さや容積率を大幅に緩和する「新景観政策」を見直しました。

福山 2007年にできた新景観政策は、「百年の大計」と言われたのに、僅か15年で骨抜きにするのかと驚いています。規制緩和が進んで、市内に高層ビルがはびこることになれば、どこにでもあるようなありふれた町になりかねません。
 厳しい高さ規制のある中京、下京はむしろ人口増加傾向にあり、高さ規制があるから人口流出ということはありません。

森田 京都市はこの数年間、「観光」を重視し、とくに富裕層向けホテルを積極的に誘致してきました。

福山 そろそろ舵を切り替えるときです。世界から京都に来てくれるのはうれしいことですが、市税収入に占める観光関連業の割合は1~3%程度。外国の人は、その国の旅行社で決済し、系列のホテルやレストランを利用します。観光公害が押しつけられる一方、京都の経済は潤いません。バルセロナなど世界中で同じ現象が起きています。観光客に応分の負担を求める、ホテル総量規制、バス路線分離等の対策が必要です。

森田 北陸新幹線を敦賀から新大阪まで延ばす計画は、京都市内の地下も通る前例のない大規模地下工事となり、市の財政負担も多額になることが予想されます。

福山 小浜ルートは撤回すべきです。京都新聞社のアンケートでは6割以上が反対、積極派は3割程度。京都市民、府民の世論は決着済みです。
 地下水への影響や膨大な残土処理はどうするのかという問題もあります。資材の値上げで2兆円といわれる総工費も跳ね上がり、1000億円超と言われる負担を財政難にある京都市が引き受けることはできません。まちは、ハコモノ中心の開発ではなく、市民のくらしとなりわいを底上げすることでこそ発展するものだと考えています。そういう視点を大切に市政に取り組みたいと思います。

Profile
1961年3月5日、京都市伏見区生まれ。宇治市で育ち、府立城南高校では野球部で活躍。立命館大学法学部卒業。2001年に弁護士登録。2015年度に京都弁護士会副会長。2018年京都府知事選・2020 年京都市長選に出馬。現在、自由法曹団京都支部幹事長。

「ダイイチ」2024年新春号