偽装請負の実態
本件は、大津市で起きた偽装請負問題を告発した同市の職員Aさんが、直属の上司から違法な偽装請負を実行するよう強要される等したことについて、パワーハラスメントとして慰謝料請求した事件です。
Aさんは、平成30年4月に大津市教育委員会生涯学習課に配属されました。同課は「人権・生涯学習推進事業」(「推進事業」)を所管していますが、大津市の行政改革の一環で推進事業を、同市が主導して運営してきた市民団体である大津市「人権・生涯」学習推進協議会連合会(「連合会」)に委託する方針が立てられ、平成29年度はまず補助金事業として人件費相当額を補助し、平成30年度に業務委託化して人件費相当額を委託金として支払うことにしました。そして平成30年度のために新たに半年単位で雇用する非正規職員(「本件事務局職員」)を雇用しました。
しかし、実際には、連合会が自ら行うべき本件事務局職員の雇用について、職業安定所への求人の掲出、試験、選考、採用の各過程を、事務局次長を名乗っていた生涯学習課のB課長が部下に指示をして主導して行い、全ての過程を大津市生涯学習課の職員が行っていました。
本件事務局職員への業務指示は雇用主である連合会が行なわなければなりませんが、Aさんは赴任直後から本件事務局職員の事実上の上司として、雇い入れにかかる手続や月々の給与計算を行い、本件事務局職員に一から推進事業の業務を教え、実施させました。AさんはB課長に、この状況が違法な偽装請負に当たる旨を最初から指摘していましたが、B課長はAさんに対して本件事務局職員への教育、業務指示や、本件事務局職員が出来ない場合はAさん自身が行うように指示し続けました。
判決でパワハラ認定
判決は、Aさんが本件事務局員に業務指示を行っていた平成30年4月から9月までについては偽装請負の状態にあったと認定し、B課長の職務命令自体が地方公務員法32条に違反する明白な違法行為と認定しました。また、B課長の職務命令等がハラスメントに該当して国賠法上の違法にもなるとして、20万円の慰謝料と2万円の弁護士費用の支払いを命じました。
本件については、双方が控訴しました。より良い結果になるように頑張ります。