まきえや

与党・国民投票法案に反対します

与党・国民投票法案に反対します

今、国民投票法を制定することに反対します

国民投票法はその中身がどうあれ、今、この法律を制定することには反対です。

確かに、日本国憲法96条は、国会が発議した改正案を「国民に提案してその承認を経なければならない」として、憲法改正には国民投票が必要であると規定しています。しかし、改める必要がない場合、改める内容が改悪になる場合には国民投票法そのものに反対せざるをえません。

ところで、憲法を改めようという勢力が国民投票法は必要であると主張している根拠は、憲法に国民投票が書かれているのだからその法律が無いこと自体が問題だというものです。立法不作為違憲論などと呼ばれています。

しかし、その真意は、立法の不作為状態をなくすといいながら、その実、本体である憲法改悪を押し進めるため、その第一歩として制定しようとしているのです。

国民投票法の制定を急ぐ勢力は皆、憲法9条を改悪し、戦争する国づくりを目指しているのですから、狙いは明らかです。従って、憲法改悪9条改悪に反対の立場からは手続法の制定そのものに反対します。まして、世論調査では、国民投票法については、62%の割合で知らない・よく知らないという結果(2005年 10月5日「毎日新聞」)ですから、国民の要求にもなっていません。

与党の国民投票法案は重大な欠陥法案です

与党の同法案の中身は、国民の関与をできうる限り排除しようとしていると言っても過言ではありません。国民の実質的な関与なしに作られた憲法が、たとえその内容がよくとも、果たして国民に尊敬され根付くものとなるかは大いに疑問と言うべきです。憲法の条項が遵守され発展させられるためには権力者に「与えられた」ものではなく皆で選択した過程、すなわち民主主義の過程が重要です。その観点からも与党の法案には強く反対します。

(1) 与党である自民党と公明党の作成した「日本国憲法改正国民投票法案骨子(案)」(以下「骨子」といいます)では、改正案の一括投票を定めています。すなわち全体が賛成か反対かを問うのです。

しかし、自民党の新憲法改正草案では、改憲の論点は多岐にわたっています。例えば、9条は2項を削除して新たに軍隊を創設することを規定し、別の箇所では環境権などの新しい権利を盛り込んでいます。この一部については賛成で、一部は反対という意見が全く反映されません。これでは国民の意思は大きくゆがめられてしまいます。いいところがひとつでもあれば賛成することになりかねず、絡め取りの手法です。

(2) 国民の考慮期間が30日という超短期です。

わが国ではこれまで憲法改正国民投票を一度も行ったことはありません。にもかかわらず、どのように国民に徹底的に周知するかなど調査研究もせず、国会で発議してからわずか30日で投票を行うというのは、国のありかたを決定する憲法制定権力の発動という重要性をまったく考慮していません。しかも以下に述べるように、広範に国民投票運動を制限する下では改正内容すら十分周知されないまま投票が行われる危険性があります。従って、はじめから国民に十分な議論をさせる配慮はないと言わざるをえません。

(3) 国民の投票にかかわる活動を広範に禁止しています

公務員・教育者の地位利用による運動の禁止、特定公務員(裁判官、警察官、税務署所員)の運動の禁止、予想投票の禁止、マスコミの虚偽報道禁止など、何故にこのような広範な禁止が必要なのか理解できない禁止規定をおいています。

むしろ公務員も含め、国民全体が自由に議論できなければ憲法改正など意味がないし、情報を提供するマスコミの活動は原則自由にしなければ自由な議論ができません。

(4) 承認基準が低く承認の正統性が疑われる場合がでてきます

国民投票の結果、過半数の賛成が必要となっていますが、この過半数のハードルを実質的に低くするため有効投票の過半数としようとしています。しかし、憲法改正という重要な決定行為を有権者の2、3割の賛成で可能とするなら、憲法の正統性そのものが将来にわたり疑われます。

国民投票法案が国会に上程されたら反対しましょう

与党及び民主党は、国民投票法案の国会提出自体は合意しています。3党での協議により法案が作成され、提出されると、現状の力関係では法律として可決される可能性が高いと言わざるをえません。しかし、自民党や民主党の憲法改定の中身が憲法の原則である平和主義・軍備放棄、基本的人権の尊重、国民主権を踏みにじる内容をもつものである以上、手続法案の段階で反対することが必要です。ましてや与党の国民投票法案は真に国民の意思を問う制度となっているとは到底いえません。

国民投票法案が上程されたら、廃案にするよう運動しましょう。

「まきえや」2006年春号