舟岡山損害賠償請求事件で環境問題を問う
2004年秋、京都市北区紫野にある舟岡山の南側斜面地に、ユニホーなる業者が施主となってマンション建設を行うことを発表しました。
舟岡山は国史跡、史跡、名勝、天然記念物指定地、文化財環境保全区であり、このマンションの建築はその環境を根底から破壊するものというべきものでした。また同時に、傾斜地における開発を伴う建築であるにも拘わらず、開発許可不要とされたまま工事が行われるという安全に関わる大きな問題もあったのです。
そこで、マンション建設に先立って行われた開発非該当確認処分、それを前提とする建築確認処分の取消を求める行政不服審査請求や、京都市を被告とする建築確認処分の取消等を求める行政事件訴訟を提起して奮闘中です。
これらの従来の訴訟活動の意義について近隣住民の方にご理解を深めて頂く過程を経て、今般、この事件の根本問題である(1)景観権侵害、(2)近隣住民の生命、身体、財産に対する重大な損害ないし危険を発生させた施主の業者、建築業者、完成マンションの購入業者に対して損害賠償請求などを求める訴えを提起しました。マンションの建築開始から完成を経て今日に至るまでの間、近隣住民は景観、安全、財産等に関する様々な損害を被り、かつ現に被っているのです。それらの損害の全ての回復を業者達に求める裁判です。
この新しい裁判においては、(1)景観権侵害に対する妨害排除請求権に基づくマンションの一部除却請求、(2)マンション建築の際の騒音、震動被害を理由とする損害賠償請求、(3)大型マンションによる圧迫感・日照権侵害、高層階入居スペースからのプライバシー侵害を理由とする損害賠償請求、(4)マンション建築により生じた近隣土地家屋被害についての損害賠償請求、(5)近隣土地家屋及びそこに居住する者に対する危険を除去するために必要なマンション敷地内における地盤強化工事、排水施設設置工事、独立擁壁設置工事の請求、を行っています。
近年、景観権を正面から主張した裁判が登場する中で、本件においても景観権を正面から主張し、1200年の歴史に裏付けられた京都の景観の重要な起点をなす舟岡山の景観を守る闘いに発展していっています。
今後は、近隣住民の方々の損害・不安の回復を1日も早く実現すると同時に、マンション建設地である舟岡山南端部が平安京の風水思想の基点となる場所であり、緑豊かで行政(京都市)も新景観条例においてその眺望景観を重視するとしていることを明らかにして、ここには法的保護に十分に値する景観権がれっきとして存在していること、その景観が、開発規制ルールを脱法し、永年に亘って形成されたこの地域の建築秩序を破壊し、風致地区条例にも違反する建築行為によって侵害されていることを明らかにしていく予定です。特に、マンションの一部が除却されることにより、景観権侵害の状態が現実に回復されるかが大きなポイントとなります。風致地区条例で定められている40%という建ぺい率に適合しない部分、風致地区条例が定めた※平均地盤数に違反する部分、マンション建設地に確立されているといえる建築秩序に基づく高さ制限(10メートル)に違反する部分の除却が実現すれば、舟岡山の景観は大きく回復されるはずです。
この闘いを通じて日本が世界に誇る京都の歴史的自然的景観を守っていきたいと考えています。
※平均地盤、平均地盤数 | 風致地区条例の高さ規制を実施するにあたり、高さを測定する起点となる地盤を平均地盤といい、建築物が斜面地に建つ場合にはその平均地盤が複数設けられることになっています。ちなみに本件では、ルールは3となっているところ、4を前提として建築されています。そのため風致地区条例が許容する高さを超えている部分が出現しています。 |