まきえや

あるべき社会を考えながら ~新人弁護士の自己紹介~

あるべき社会を考えながら ~新人弁護士の自己紹介~

自己紹介

2006年に旧司法試験に合格し、昨年4月から1年4ヵ月の研修を終え、この9月から当事務所で働いております、藤井豊と申します。

石川県金沢市に生まれ、大阪府南部・泉州の地にある岸和田に育ちました。勇壮なだんじり祭で有名ですが、本当に小さい頃からだんじりの真似事をして遊び、大人になっても例え会社をクビになろうが祭を選ぶといわれるような、祭中心の町でした。そういう経済優先ではない独自の価値基準の町だったからかはわかりませんが、さしたる競争もなく、のんびりと高校まで過ごしました。

京都との縁は、大学時代に下宿したことに始まります。現在は、良き伴侶とともに、そのまま住み着いています。歴史都市でありながら、都会的な雰囲気も兼ね備えており、これが私にとって、日々心地よい刺激となっています。

趣味は、これといったものがないのですが、大学時代に映画研究部に入っており、映画鑑賞はコンスタントに続けていこうと思っています。また、読書も好きです。小説は得意ではありませんが、社会や人についての認識が深まるような本、なかなか気がつかなかった視点を提供してくれる本との出会いを楽しみにしています。

弁護士を目指すに至った理由

政治や社会問題に幼いころから関心がありました。議論の中でより良いものを作り出していけるはずの民主主義社会なのに、なぜこうも不合理や理不尽がまかり通るのか、不思議でもありました。この素朴な疑問は、より複雑に形を変えてはいるものの、現在も持ち続けています。

私の父は、中小企業融資に関わる仕事をし、組合活動も真面目に行い、母は母親運動や消費者運動に関わっていました。運動を続けるたいへんさと、それを支える信念を間近で見ながら、批判的な視点を持ちつつ、同時に敬意も抱いています。仕事に対する情熱や能力があっても、組合活動を理由として差別的取扱いがなされることについて感じた理不尽というのは、どこか自分の原点にあるように感じています。

大学時代には、法学部の学生として、吉野川第十堰や深草の産廃などの環境問題、住友電工女性差別裁判などの労働事件、ハンセン病国賠訴訟、薬物依存と回復、死刑制度や修復的司法(単に加害者を処罰し社会から排除するのではなく、被害者や社会との関係を修復する刑事事件の解決方法)などの刑事政策、非行少年と犯罪被害者の抱える問題など、多くの社会的問題や取り組みに触れ、考えました。そこには、より良い社会を作ろうとするチャレンジがありました。

私も、自分の力は小さいけれど、世の中の仕組みを少しでも良くできるような仕事に就きたいと考えるようになりました。また、大阪の法律事務所で一ヶ月エクスターンを経験し、日常の弁護士業務の一端を知りました。

弁護士が、依頼者のことを親身に考えながら生活上・営業上の問題を解決し、同時に自分の信念に基づいて仕事をしている姿に触れ、この仕事を目指すことを決めました。

今後の抱負

新自由主義政策の下で拡大した格差と貧困の問題に対して、様々な形で反撃の取り組みが始まっていますが、こうした運動に参加したいと思います。

真面目に働く人がきちんと報われる社会、育児などの家庭生活が心配なく送れる社会、自由闊達に議論し、より良いシステムやルールが作れる社会の実現のために、弁護士としてできることについて考え、行動していきたいと思っています。

ともあれ、スタート地点に立ったばかりで、日々勉強することばかりです。まずは、一つ一つの相談、事件に精一杯取り組んでいきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

「まきえや」2008年秋号