まきえや

始まりました!「裁判員制度」

裁判員制度スタート

2009年5月21日、裁判員制度が施行され、8月から実際に裁判員裁判が実施され、マスコミでも大きく報道されています。裁判所には多数の傍聴希望者が集まり、市民の皆さんのこの制度への関心が非常に高いことがわかります。この記事を読んで下さっている皆さんの所にも、ある日裁判員候補者に選ばれたとして裁判所から通知が届くかもしれません。

裁判員制度とは?

裁判員制度とは、一般市民の皆さんが、裁判官と一緒に刑事裁判の審理に参加して、検察官が主張する犯罪事実が立証されているのか、立証されたと認められる場合に法律が定めている範囲内でどのような刑を宣告するのか(量刑)を評議し、決定するという手続です。現時点において実施された裁判員裁判では量刑が争点となる事件が中心のようですが、今後は被告人が犯人であることを否認している事件も裁判員裁判対象事件として審理されることになると思われます。

裁判員制度によって何が変わるか?

従来の刑事裁判においては、起訴されれば99.9%有罪という実態がありました。中にはえん罪を争う事件もあったのですが、裁判官による十分な審理がなされたとは思えない審理過程の中で有罪と判断され、刑務所に収監された人も少なくなくありません。最近大変話題になった足利事件の被告人の菅家さんもそのうちのお一人でした。このような現象の背景には、裁判官の「有罪慣れ」があるという指摘があります。来る日も来る日も有罪判決の宣告をしている内に、「疑わしきは被告人の利益に」の原則が頭の中で入れ替わり、「疑わしきは罰する」という感覚になってしまっている裁判官が多いということです。しかし、犯してもいない罪のために罰せられてはたまりません。その人の社会的立場は即座に失われ、社会的に抹殺されてしまうかもしれないのです。裁判員制度は、市民の皆さんが裁判を見て聞いて裁判官と一緒に考えて結論を出す制度です。この制度が有効に機能すれば、えん罪防止の可能性を高め、市民の人身の自由を守ることが可能だと思います。

裁判員制度の問題点

しかし、現行の裁判員制度には、えん罪の防止という観点からは不十分な点があります。たとえば、起訴前の捜査段階において、密室で行われる取調べの様子を全面的に記録するという取調べの可視化制度がなく、捜査官の強引な取調べで菅家さんのように虚偽の自白をしてその自白調書が裁判に証拠として提出されているような事件においては、裁判の場で真実を明らかにすることは困難です。また、被告人に有利な証拠のうち予め検察官に開示してしまうと、その後の弁護に支障をきたすような場合、いざ裁判が始まった後に提出しようとしても制限をうけるような仕組みがあるのです。これらの仕組みを変えていかないと、かえってえん罪を生み出してしまう危険性もあるのです。

変えていく、市民とともに、裁判を

そこで、裁判員制度の良い面を維持しつつ、弊害を生み出す点を市民の皆さんと一緒に変革していく必要があると考えています。今、京都では、「裁判員制度懇談会」という会が発足し、自由法曹団京都支部、国民救援会京都府本部、京都MIC等の団体が中心となって、裁判員制度を学習し、より良い制度に変えていくための議論をする場を設けています。11月28日には、こども未来館(京都市中京区間之町竹屋町)にて、安原浩元裁判官をお招きして裁判官の目から見た裁判員制度についての講演を頂く集会を行います。裁判員制度に関心のある皆さんに、一人でも多くご参加頂き、ご質問もして頂き、裁判員制度をよい制度にしていくための運動をご一緒に進めていきたいと考えています。

2009年7月日本母親大会で行われた模擬裁判

「まきえや」2009年秋号