1 提訴
2024年5月28日、京都市長が2023年11月30日付で行った南区の東吉祥院公園(以下、「本件公園」)の廃止処分を取り消すことを求めて、同公園の近隣住民31名が京都地裁に提訴しました。
2 問題の背景
京都市は本件公園(面積約1万㎡)を含む塔南高校第1グラウンド跡地に巨大給食工場の建設を計画しています。これは中学校給食をセンター調理方式で実施するためです。
これに対して、生徒の食育環境を充実させるため、自校調理方式にするよう求める市民運動が展開されてきました。現在、見直しを求めた10万人署名が取り組まれており、市議会与党議員からも見直しを求める動きが出始めています。
3 都市公園廃止の経過
本件公園は、近隣の住民の利用に供する公園(近隣公園)ですが、長年、塔南高校のグラウンドとして使用されてきました。また災害時の広域避難場所にもなっています。
本件公園は、塔南高校の移転に伴い、近隣公園としての本来の役割を果たすことが求められています。京都市は他都市と比較して公園が少なく、1人当たりの都市公園面積は施行令の定める基準10㎡、政令市全体平均6.9㎡と比べ、4.7㎡と極端に少ないのです。
ところが、京都市は住民・市民への説明もほとんどないまま、都市公園の廃止処分をしました。このことは2024年1月末に本件公園の都市計画変更の公表で、初めて市民の知るところとなりました。
4 取り消しを求めて提訴へ
そこで、災害時に本件公園を避難場所として利用する周辺住民、本件公園を子どもの遊び場・スポーツ活動の場としての利用を求める住民・市民、さらに生徒の食育環境の充実を求める市民の代表が原告となって、京都地裁に都市公園廃止処分の取り消しを求めて提訴しました。
5 中心争点~都市公園法16条2号違反
都市公園法では、公園廃止の要件として「廃止される都市公園に代わるべき都市公園」(代替公園)が設置される必要があります(都市公園法16条2号)。本件公園の代替公園は同程度の面積(約1万㎡)が必要です。また、近隣公園の配置距離の標準は500mとされています。
ところが、京都市の示した代替公園の資料【下図】によると、近隣の代替公園として設置されるのは、塔南高校跡地内の2159㎡の公園だけであり、必要な面積を到底満たしていません。
京都市は、南岩本公園(3008㎡)、伏見西部第四地区8号公園(4449㎡)、桃山東第二地区4号公園(509㎡)を代替公園とし、これらの4公園を合計して必要な面積を満たすと主張しているのです。
しかし、これらの公園は本件公園からそれぞれ約3㎞、約5㎞、約6㎞も離れており、配置距離を到底満たしていなせん。
よって、代替公園の設置はなされておらず、都市公園法16条2号に違反していることは明らかです。
6 展望
本件公園の廃止処分が取り消されれば、1万㎡の市民のための都市公園を取り戻し、あわせて巨大給食センター計画をストップさせることができます。
1箇所に巨大給食工場を建設して、各校に給食を配送するセンター調理方式は子どもの食育教育や、アレルギーなどのきめ細かな配慮、地産地消にそぐわないものです。また、全員制中学校給食の早期実現のためには、巨大工場を長期間かけて建設するよりも、自校調理方式や親子方式(近くの学校からの配送)を基本にして行うことが、はるかに早期実現に資するのです。
(弁護団に当事務所からは飯田昭、藤井豊、尾﨑文紀)